おっさん(満二歳)の初めての洞窟探検 2
「うっし、これに決めた!新人パーティー応援クエスト!」
「ええ?!パーティクエストって数人いないと難しいんじゃないのか?」
「大丈夫だって、これはあくまで新人ならパーティーじゃないとって話だから。このクエストに指定された洞窟なら俺一人で行って帰ってこれるんだ、責任もってサポートしてやるしルートも確立されてるから心配ねぇって。この街で生まれ育った俺を信じろよ」
自信ありげに胸を張って笑うレクタに押されて、アルフはパーティクエストをこなすべく洞窟へとやってきた。
木漏れ日の落ちる穏やかな森の中に、その洞窟はあった。小高い丘になっているセクンドゥスにほど近いその森は新人冒険者から一人前の冒険者になる登竜門とも呼ばれる水晶の森だ。魔物を倒すと低確率で魔物の腑から水晶が出てくることで知られている。
そしてその丘の麓に入り口のある洞窟には色のついた水晶をその腑に入れている魔物がいるのだが、レクタが選んだ新人パーティー応援クエストの内容はその色つきの水晶を集めることだった。
「うわ……結構深そうな洞窟だな」
洞窟の入り口は縦横どちらも三メートルほどで、数多くの冒険者や魔物の出入りがあるのか、踏みならされた緩やかな下り坂が奥まで続いていた。
レクタが言うにはこの洞窟は壁に住む苔の一種が淡い光を放っており、ランタンがいらないとの事。手がふさがることがない洞窟だからこそ、新人パーティーの洞窟探検中の魔物との戦闘の仕方を学ぶにふさわしいと件のクエストが用意されているらしい。
もちろん、採取する水晶には装飾やその色によって薬の材料になったりと需要が多いのでギルドとしても損はない仕様なのだ。とそうクエスト受注の手続きをしてくれたアーントが笑って言っていた。
「アルフさんが前な。後ろから進む方向を支持するから俺を信じて進んでくれ」
「う、うんわかった」
「大丈夫、前からくる敵にだけ注意しとけばいいからさ。後ろからくる魔物の対応で焦って自滅するってやつがたまにいるから新人パーティー応援って銘打ってるんだ。一匹一匹は街道の魔物と大差ねぇ強さだからギルドからちゃんと冒険者として認められた奴なら問題なく倒せるはずだぜ」
洞窟を進みながらそこに住む魔物の特性や、苔で出口を知る方法などをレクタに教授されるアルフ。
インセペットで習ったこともあったが、実地でしか得られない実感を感じ目を輝かせるアルフにレクタはどこか気まずそうな顔をして謝ってきた。
「アルフさん、ごめん本当に記憶喪失だったんだな。なんか全然そんな感じしなくて俺信じてなかったわ、常識的に考えて俺やな奴すぎる……って当人に言っちゃうあたりも俺やな奴だよな」