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おっさん(満二歳)は街道を行く 2

 アルフを助けた青年は“レクタ”と名乗った。

 レクタはすっかりアルフの事を無謀な農夫と思い込んでいた。


「おっさんえーと名前は?」

「アルフだよ、レクタくん」

「“くん”はよせよ、ガキじゃねぇし呼び捨てでいいぜ。でアルフさんはよぉ、何が目的で一人でうろついてたんだ?」


 街道を歩きながらアルフはレクタに自分の旅の目的を簡単に説明した。


「はぁ~ん?記憶喪失だから思い出作りねぇ……あんたのんきだなぁこのご時世に」


 魔法で作り出された人間であるなどという荒唐無稽な事を信じる人間はいないから黙っておいた方がいいでしょう、それがたとえ真実でもね。とは始まりの街(インセペット)のギルドで受付嬢をしているルーメンのお言葉だ。

 アルフはそのことを守り、一番親しいミーミルにも話していない。故に現在その事実を知っているのは生みの親であるエルとその執事、そしてギルドのまとめ役とルーメンだけだ。

 だから、アルフは最初思い込んでいた記憶喪失であるという設定にした。


「このご時世ってなにか事件でも起こっているのか?」


 レクタの言葉に少し怖気づいたアルフが聞くと、本当に何も知らねぇんだなぁおっさん。とため息をつきつつも、己の言葉の意味を説明してくれた。

 曰く、最近この世界では突然変異を起こす魔物が増えていて、今までと同じ戦い方では今まで剣の一振りで勝てた魔物に命を奪われる可能性があるというのだ。


「で、でもギルドでそんな話聞いてないぞ」


 アルフは恐怖で声を震わせてレクタの言葉に食いついた。猫のあまがみレベルの弱さだったが。


「あーインセペットのギルドか……国の端っこだし、突然変異が報告されているのは王城がある中央都市近辺の森や洞窟だからってのもあってまだ伝令が行ってねぇのかも。俺が新人の時もそういう事あったし運が悪かったな……ってギルドに行ったんならなんで護衛を雇わねぇんだよあんた!」

「いや、だから俺は新人冒険者なんだってば」

「百歩譲ってそうだったとしても剣も持たずにどうするつもりだったんだ」

「剣は苦手で」

「はぁ?じゃあ魔法が得意なのか?」

「普通、だと思う」

「はあああ?ったくおっさん見栄はりてぇ気持ちはわかるがそれならそれでもうちっと設定考えとけよ……」

「設定って……」

「もーいいよ、()()()()()のアルフさん、とにかく街までは送ってやるからちゃんとよく考えろよ、畑仕事に戻るなら早くしねぇと作付け期に遅れるぜ?」


街までの道中何とか誤解を解こうとしたアルフだったが、結局レクタはアルフを農夫だと信じて疑わなかったのだった。

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