おっさん(満二歳)は街道を行く 1
第二話おっさんの初めての洞窟探検のあらすじ
世界見聞の旅に出たアルフは一人第二の街セクンドゥスに向かっていた。
王国「ミズガル」の騎士団が定期的に魔物を掃討している街道を歩く分には新人冒険者程度の力量があればせいぜい擦り傷程度ですむような魔物しか襲ってこないからだ。
しかしその道すがらアルフは不用意に花の魔物に近寄ってしまい、その魔物の危険性を知っていた青年冒険者レクタに叱られる羽目に。
その年齢と行動からレクタに農夫と思い込まれたアルフは護衛をしてやるというレクタとともにセクンドゥスのギルドまでやってきた。
そこでやっと記憶喪失(設定)の冒険者であることを証明できたアルフは、勘違いをしたお詫びに何かしたいというレクタに冒険者としてのクエストの経験をのぞんだ。
そうしてやってきたセクンドゥスにほど近い洞窟。アルフはそのなかでしりもちをついたり、魔物の罠にあわやダイブなどというどんくさい活躍をみせ、レクタの助力のおかげでやっとの事洞窟の最深部にやってきた。
そこは美しい水晶のドームだった。
「勘違いのおわびのおまけっちゃなんだけどさ、思い出にするならこういうのがねぇとな!」
にかっと笑ったレクタをよそに、アルフはしばしの間洞窟の美しい光景を眺めるのだった。
そんな魔法で作られたおっさんアルフ(満二歳)の初めての洞窟探検までの話。おっさん(幼児)の物語第二話です。
キャラクターを作ってしまったのでもう少しお付き合いしていただければ幸いです。
ブックマークしてくださった方本当にありがとうございます。短いし完結済みなのでブクマも評価もゼロだろうと思っていたのでとても興奮して思わずスクショとりました。
正直自分でも盛り上がりに欠けるとは思ったのですが、異世界のちょっと優しすぎる話を書きたくて書いてしまいました。
たった二年、されど二年。
おっさんとして生を受けたものの、名前とおっさんである自覚以外何もなかったアルフは二年間でこの世界に溶け込めるくらいの知識と、新人冒険者と言っていい力を身に着け生まれた街をでて旅に出た。
「今日はいい天気だな……あ、あれは何だろう」
アルフが生まれた街は王国の中でも小さい街にあたり、その周囲を森に囲まれていた。その森にはちょうどアルフのような新人が一人でもなんとか倒せる程度の魔物が多く住み着き、冒険者としての始まりの街として名を広めていた。
と言っても、どの土地でも街や街道に近い森には強い魔物は現れない。なぜなら王国騎士団が定期的に見回っているからだ。魔物とて学習する、むざむざ勝てるかどうかわからない勝負をして種を途絶えさせるような事はしなかった。一部を除いては。
「花……か?にしちゃなんかでかいような」
そして今、アルフはまさにその一部に触れようとしていた。
「危ない!」
ざしゅっ
「うわあああ!」
アルフの耳の横を風切る音が通り過ぎ、花に擬態した魔物をアルフの持っていた荷物袋ごと切り裂いた。
「その花の魔物の香りは幻覚を見せ森の奥の本体へ誘い込むんだぞ!そんなことも知らないのかおっさん!」
剣を振り魔物の体液を払いながら、気の強そうな顔をした青年がアルフに怒鳴りつけた。
「あ、そのすまない新人冒険者なもんで」
荷物袋の中身がぼろぼろと落ちる音の中で頬をかきながら気まずげに笑うアルフに、青年はさらに眉を吊り上げる。
「嘘をつけ!そんな年で新人なわけないだろうが、農夫ならおとなしく護衛を雇え!始まりの街ならまだしもここはもう第二の街セクンドゥスに入っているんだ!」
「あ、あのでも」
「言い訳はやめろみっともない!俺がセクンドゥスまで護衛についてやるからそこからはケチらないでちゃんとギルドを通して依頼しろよ!まったく……ほら、荷物袋貸してやるから早く詰めろ」
青年はそういうが、アルフの言葉は嘘ではない。魔法で作られたのは二年前つまりアルフは二歳であり、れっきとした新人冒険者だ。
見た目も自称もおっさんではあるし実際危険だったところを助けてくれたのだ、事情を知らない青年を誰も責められはしないだろうが。
「ごめんなさい、その、袋ありがとうございます」
確かに少し浮かれすぎていた、とアルフは素直に頭をたれた。自分より年かさのおっさんがそこまですんなりと自分の非を認め謝罪をしてくるとは思っていなかったのか、青年はどこか虚を突かれたように体をびくつかせた。
「いや、いいんだわかりゃ……早くしろよおっさん」
青年はふいっと顔をそむけると、周囲を見渡しながらアルフを待ってくれているようだった。
いい人に出会えたな、とアルフはこれこもまた旅の醍醐味と噛みしめて青年に寄こされた袋に荷物を詰め込んだ。