エル
アルフを作った若者エルの話です。
フヴェルゲルミル・デキムム・フォン・ジーニャス
それがアルフを生み出した鬼才の魔法師と言われる貴族、エルの本名だ。
とても変わり者で、もともとは王都に住んでいたのだが、何が気に入ったのか若くして家督を継ぐと国の端っこにある始まりの街インセペットに住処を移してきた。
それがアルフを作るほんの少し前の話だ。
思い立ったらすぐに行動してしまうその性格に、先代からジーニャス家に付き従っている執事は毎日怒ったり叫んだり泣いたり大忙しである。
「旦那様、本当にあれを旅立たせるのでざいますか?あれは旦那様の顔をしているのですよ絶対面倒ごとになります。なんですか今回に限って珍しく責任でも感じておられるんですか」
「じいやは手厳しいなぁ……まぁそれなりに責任を感じているのはいるんだけど、まさか失敗作が成功してるとは思わなかったからさぁ興味わいちゃって。もし問題があってもほら、年齢設定がおっさんだから適当に遠い親戚とでも言っとけば大丈夫大丈夫」
エルは実に愉快犯の気質があった。
皆が慌てていたり悲しんでいてもそれを楽しめる変人なのである。自分の愉悦の向こうに他人の不幸があってもむしろそれを楽しめる人間だ。
「あ、そういえばあの魔法で彼ができたってことはその後の実験体も成功してたのかもしれないねぇじいや」
「は?」
「ほら、あのじいやが捨ててきなさいっていった魔物の死体みたいな奴」
「あ、あれは森で捕まえてきたのでは……」
「違うよぉ言わなかったっけ?あれもアルファと同じで僕が作ったものだよ~」
「な、な、なんですとおおおおおおおおおおおおお?!」
「いやあどれもこれも生体反応なかったし魔法で適当にぽーいってしてきたんだけど、どこかでアルファみたいに生きてるのかなぁ?」
「こ、このっぼけっちゃまがあああああああああああああああああ!」