表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/30

おっさん(満二歳)は旅に出る(完結)

 実は魔法で作られた存在だと知って旅に出ると決めたその日から、アルフはまるでスポンジが水を吸うかの如く知識や技術を身に着けられるようになった。

 今まで自分がおっさんであるという認識から勝手に物覚えが悪いと思いこんでしまっていたのか、それとも自分が普通の生まれならば赤ん坊であるという真実を知ったことで、変な気負いがなくなったせいかはアルフにはわからなかったが、文字の読み書きもできるようになったし、使えなかった魔法も件の魔力暴走からすんなりと使えるようになった。

 ミーミルは後見人を得てまるで別人のように生き生きと過ごすアルフをほほえまし気に見て笑っていた。そうしてアルフがミーミルに助けてもらったあの日から丁度一年のその日、彼女と仲間たちは街を後にした。


「俺も旅に出るから、途中であったらよろしくな、ミーミルちゃん」

「はい!」


 後顧の憂いを無くしたミーミルは本来の闊達な性格を体現する明るい笑顔をしてアルフの差し出した手を握り返し、自身の冒険者としての旅を始めたのだった。


 そうして、さらに一年が経った。

 相変わらずアルフには剣の才能がなかったが、当初から褒められていたナイフの扱いをさらに学び、魔法も平均的なレベルまで使えるようになっていた。もう胸を張って冒険者といえるだろう。頭に新人、とついてしまうのは無理からぬことだが。


「んんん、僕と同じ存在でおっさんをと思って作ったのにこうも違う成長を見ると研究者魂に火が付いちゃうなぁ、やっぱり(うち)でずっと暮らそうよぉ」


 アルフを作った若者、エルは(本当はもっとながったるしい名前だが本人が面倒くさがったため愛称しかアルフは知らない)魔法が得意であるのに対してアルフはナイフに才能を見せていることに、興味をひかれたらしく、アルフの旅立ちを思いとどまらせようとこの一年さまざまな手で誘惑していたが、旅に出るというアルフの目標を覆せるようなものはなかった。


「エルはずれてるってことに気付いた方がいいと思うぞ」


 あきれ顔のアルフに執事も頷いていたが、エルの奇行は結局とどまることを知らなかった。

それはさておき、アルフはついに旅立ちの時を迎えていた。


「アルフさんもやっと役に立つ冒険者になったのに残念です。見習い登録を例外的に適用すればよかった……そうすれば義理人情で後一年か二年はうちのギルドに貢献してもらえたのに」

「ル、ルーメンさん」


どこまでが本気かわからないことを言うギルドの受付嬢ルーメンと、この一年で仲良くなった冒険者がアルフを見送りにきてくれていた。最後まで駄々をこねたエルとそれを羽交い絞めにしている執事も一応見送りなのだろう。


「旅は大変危険が伴います。どうか、気を付けて」

「ありがとう、それじゃ行ってくるよ」


そうして、アルフはあの日、ミーミルに手を引かれ入ってきた門を今度は一人でくぐった。


「いってらっしゃーい、お金はこの大陸ならどのギルドでも受け取れるように伝令出しておくから心配しないで~でもなるべく死ぬ前に戻ってきて研究させてね~」


なんてアルフを作って森に捨てた張本人の全く反省の見られない間延びした声を背に。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

おっさん(幼児)というネタで思いつくままにかいたものでしたが、少しでも楽しんで読んでいただけていましたらうれしいです。

無駄にキャラクターを出してしまった感がありありですが、久しぶりに素直に文章を作れて楽しかったです。

貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ