1話 取りこぼし
ーー「この子が夏帆の護衛ですか?」
風が強く吹く中、大人たちは仕事の会話している。
この場には、大人二人と中学生の男女がいて、男子中学生は会話を全く聞いていない。
「あぁ、そうだ。うちの会社で結構強い新入りさんでな。同い年だし、仲良くできるだろ?ほら挨拶をしなさい。」
「…」
「こら。失礼だぞ」
「か、可愛い」
「へ?なんて?とにかく挨拶をしろ!」
「あっ、あぁよろしく」
「うん、よろしく。あなたのお名前は?」
長い髪を靡かせる少女の声はなんで美しいのだろう。
「かずまだ。そう呼んでくれたらいい」
「かずま君なんかで夏帆を守り切れるのです?」
夏帆の隣に立つ男は、まだ、かずまの力を疑っている。
「そこは任せてもらって構いませんよ。彼は〈風〉の能力を扱うものですから。夏帆さんは気の毒ですよね、彼女の持つ〈夜〉の能力が訳もわからない〈w〉というやつに狙われてしまうのですから」
俺は今日からこんな可愛い子の護衛をできるなんて…
「もう大丈夫だ。俺が彼女を、いや、夏帆を守り、幸せにする!」ーー
「ふふ、懐かしい記憶だ。だか、今はそんなことを考えている暇はない。行かなきゃ」
横にいる小柄で、長髪の彼女に微笑みかけ、走り出す。
その顔は吹っ切れたような清々しい顔だった。
ただ、置いて行かれたことに困惑して、呆然と立ち尽くす彼女は
「かずま?」
と首を傾げている。
「チッ、こんな所に居やがったのか」
呆れたように目的の存在を、いつも通る通学路で発見する。
その存在は、タバコをポイ捨てした40代ぐらいの男性に激昂している。
一見するとただのおっさんとおっさんの喧嘩と変わらない。だが、背をこちらに向けていて顔は見えない。
「オイッ、街が汚れんだろッ」
「あぁ、すみません」
その存在は男性にいちゃもんをつけ、詰め寄っている。
そんな喧嘩を見ていると、突然男性は恐ろしいものでも見たような顔に変わり、後退りしてしまう。
「や、やめてください。もうしませ…」
消えた。謝罪を言い終えずに体が崩れて消えた。
「謝るくらいならやるなよ」
そう吐き捨てる。けれど、俺は恐れない。ため息を吐きながら近づいていく。
「はぁ、何やってんだ」
少し驚いたように反応し、こちらを振り返る。ようやく見えたその顔はしわの多い老けた中年男性だ。頭には白髪混じりで、よっぽどストレスを抱えているらしい。
「見ていたのか、黙っていれば逃してやるよ。私は正義の行いをしたまでだ!」
そう誇らしげに語る。まるで、今までもこの考えを貫いてきたかの様に…
「なら、消えても仕方ない存在だな。だが、元々こうするために俺は来んだ」
途端、さっきまで勝ち誇っていた表情が顔を歪めて苦しみ出す。
「何だぁ、ぉお前能力使えるのかぁ、たぁすぅ、てぇ」
胸を押さえて命乞いをしようとするも言葉が続かない。
「さぁぃごに、、、能、力をおしぃえて、くれぇぇ」
「…」
「くぅぅそぉぉ」
その存在は手にハサミを無から生み出し、殺しにかかってくる。
だが、それを表情ひとつ変えず吹き飛ばす。
「終わりだ」
壁に打ち付けられ、白目を剥いて倒れ込む。何とも呆気ない決着だ。こんな事で…
「…うっ、もうきたか、、これで、、」
そこでかずまの意識が途切れる、がかずまは笑っていた。
「―ずま!かずま!」
「んぁ、あぁ寝てたみたいだ」
「もう、心配したんだから」
月光のような長い髪を垂らしながら、かずまに手を差し伸べる人物は俺の彼女だ。
太陽とは正反対の見た目である。
「ごめん、ありがとう」
「で、さっき走って何してたの?」
「ん?」
何をしていたのだろうか、かずまに心当たりはない。
周りを見渡してもいつもの風景。
ただ、気になるものがある。
それは、壁際に盛り上げられた砂の山二つ、壊れた壁だ。
「また、私に内緒でコソコソやってるんでしょ?でも、まぁいいや。ほら、学校いこ?始業式始まっちゃうよ」
「あぁ、行くか」
前を歩く彼女、いや、夏帆を眺めながら
「やっぱ俺の彼女、世界で一番可愛いな」
そんなことを呟く。そして、夏帆の幸せは俺が守ってやる。と、再度心の中で誓った。
人物紹介
・かずま
能力を狙われた夏帆を護衛することとなる。夏帆はのちの彼女。緑髪の高校2年生。能力〈風〉
・夏帆
〈w〉に能力を狙われ、かずまに守ってもらう護衛対象。かずまはのちの彼氏。月光色で長髪の高校2年。能力〈夜〉
・老け顔の中年男性
ポイ捨て野郎を成敗したのち、かずま?に粛清される。
能力〈×〉




