僕の中学校生活がループし始めたけど気づいてないのでもう一年過ごしたいと思います。
2025/06/13改 女子生徒の方の描写も追加しました。2視点から物語進めるの楽しい。
2025/06/16改 学校舞台変更。やっぱりこっちの方が発展しているとこだし、話を進めやすい。
2025/06/19改 入学式の日付修正。
2025/07/14改 色々追加。
-前回のあらすじ-
修了式を終え、いつも通りだらしない生活をしていた柏北東中学校一年の和田陽介が、寝ていると、日付が変わる前、急に頭痛がしたと思ったら、一年前の入学式に戻ってしまった!?
一体どうなるのか?
「……あれ?確か、修了式だったような…」
目を覚ました瞬間、和田陽介は、胸の奥に奇妙なざらつきを感じた。
頭が少しだけ痛い。夢を見ていた気がする。だけど内容はまるで思い出せない。
思い出そうとすると頭が痛くなる。よし、考えるのをやめよう。
カーテンの隙間から差し込む春の光。
時計の針は午前6時45分を指していた。日付は2024年4月9日。
「ふわぁ〜、寝ぼけてるんかな?」
大きなあくびをしながらそう思いつつも、制服に袖を通し、タブレットPCをリュックに詰め込む。
食卓には母が作った卵焼きと味噌汁が並んでいた。いつもと変わらない朝。
それでも、なにかが引っかかっていた。
「いってらっしゃい。また後でね。」と見送られた玄関。
初めての自転車通学。
見慣れない校舎。
新しいクラス。
目に映るものすべてが“初めて”なのに、僕はどこかで、既視感を抱いていた。
「じゃ、今日から1年1組の担任を務めます、岩田です。よろしく」
新しい教室で、担任の先生がそう言ったとき、
僕の背筋に小さな寒気が走った。
(この人、どこかで見たような……いや、初めてだろうな。なんで見たことあるんだろ…?)
「自己紹介、出席番号が最後の、和田くんからいこうか」
名前を呼ばれて立ち上がる。
机の前、クラスメイトの視線を一身に浴びながら、陽介は喉を鳴らした。
「……和田陽介です。えっと、新利根小学校出身です。1年間よろしくお願いします」
拍手が起きる。
隣の席の男子、栗林が「よろしく」と声をかけてきた。こいつも見たことあるような…?
そしてそのあと、配られた部活紹介のプリント。
その中のひとつにあまり目立たないが「吹奏楽部」の文字があった。
(……あれ、僕……これ、やった気がする……?)
違和感は、少しずつ確信に変わっていく。
僕の中に、記憶というには曖昧な、けれど感覚的な“覚え”が浮かび上がっていた。
たとえば、校舎の構造。
たとえば、担任の言う冗談のオチ。
たとえば、校長の話の長さ。
たとえば、今から会うはずの、まだ見ぬ先輩たちの顔——
僕はまだ、自分が「同じ一年」を繰り返していることに気づいていない。
けれど、その“違和感”は、確かに静かに、物語を動かし始めていた。
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よし、1回目ループだ!
和田くんちゃんとしてるかな?早く1年後にならないかな〜。
だけど…
「てかさ、私ループする必要あるのかな?」
そんな独り言を呟きながら、少女は制服の裾を整えて玄関を出る。
名前はまだ言えないが、新利根中学校の2年生。……いや、正確には“2回目の2年生”だった。
桜の花びらが舞う通学路。舗装の継ぎ目、コンビニの立て看板、すれ違う犬の散歩——
目に映るどれもが既視感だらけ。まるで昨日見たドラマの再放送みたいに、景色がすでに“知っている”ものだった。
「やっぱさ、繰り返すのはあの子だけでよかったんじゃないかな……」
そう思いながら、歩きながらノートを開く。
《2024年ループ:第1周目》のと言うメモが並んでいた。
あらかじめ書いておいた注意点、人物相関、1学期のイベント予想——。
すべて、自分が“繰り返す”前提で準備したものだ。
まあ、女神様がいなかったらこの“準備”もできなかったんだけどね〜。
「もう和田くんが気づくの、どのくらいかかるんだろう……それまで何すればいいんだろう、私。」
彼女がループしている理由、彼女の中では明確すぎる話だ。
全てはあの事故から始まったのだ。
「そもそもあれの前にループしちゃってるからあれが起こるかもわからないんだよな〜。」
友達との他愛ない会話、授業中の寝落ち、購買の焼きそばパンの売り切れ。
全部、経験済みの出来事。
でも、「今回は違うかもしれない」と思うたび、ほんの少しだけ心が動く。
そして今日、新入生の教室には、あの和田くんがいる。
「ま、1回目の彼は素直でかわいいから見てて飽きないけど……それでもやっぱり、私ループする必要あったかなぁ?」
彼女の吐息は春の風に溶けていった。
教室の窓から見えるグラウンドでは、新入生たちがぞろぞろと移動を始めていた。
彼女はゆっくりと笑う。どこか遠くを見るような目で。
「……さあて、初めてのループはどうなるかな」
彼女はそうつぶやき、まるで観劇するような軽やかさで階段を上がっていった。部活をしに音楽室へと。
その胸の奥に、うっすらとした孤独と期待とを隠したまま——