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INNER NAUTS(インナーノーツ)第二部  作者: SunYoh
第一章 久遠なる記憶
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畏れ、そして愛 4

※セクション3をとばして、セクション4を投稿しておりました。修正済みです。

 <天仙娘娘>のブリッジは、ようやく静けさを取り戻していた。度重なる時空間転移は、<天仙娘娘>チームらの意識を乱し、皆気を失っている。

 

「いっつぅうう……」肩や背、脇腹あたりに走る痛みで、明明は目を覚ます。真っ先に、手にしていた筈のものが見当たらない事に気づく。持ち上げられたシート下を覗き込み、明明は愕然となった。

 

「あああ! 辣条がぁ!」

 

 彼女の大切な手作り携行食は、ブリッジ床に見事なまでにぶちまけられていた。船内の重力制御が、きちんと仕事している証である。

 

「なぁにって……うわ、くっさぁ〜〜。明明、後でちゃんと掃除してよね」変な臭いに目を覚ました副長、楊は鼻を摘んで顔を顰めた。

 

「へいへい」

 

 明明がブスッと口を尖らせ、押し黙るのと同時に、今度は泣きじゃくる声がブリッジに反響する。隊長、劉は、軽く目眩を感じていたが、その泣き声に応じて、目眩は次第に頭痛に変わり、頭を抱える。

 

「えぇええん、うぇえええん! 痛いよぉ〜〜もう、お終いよぉ〜! 静」智愛は、再び自席を静の席に寄せ、しがみつく。

 

「わかったから、泣くな! 寄るな!」静は、擦り寄る智愛を邪険に振り払うが、智愛はへこたれない。劉、楊、明明の三人の大きな溜め息が、見事に揃う。

 

「……ったく、遠慮なしに飛んでくれちゃって」気を取り直し、楊は時空間計測を開始、現時空間の特定を試みる。

 

「すぐに被害状況、確認なさい!」劉も、まだ静から離れようとしない緑髪の少女に命じた。

 

 智愛は、渋々、静から離れるとすぐに作業に移った。

 

「くすん……船体への被害は軽微。けど、さんざん時空間転移させられているからPSIバリアの損耗が著しいです……保ってあとニ時間ちょっと……」

 

 劉は、報告に柳眉を顰める。さっきまで描き出されていた数々のイメージは失われ、再び暗闇の中だ。あの龍のフォログラムも消えている。

 

「……時空間情報(こっち)もダメね。時間座標だけは四千から八千年前あたりを示しているけど……空間座標は皆目……」楊は、手を広げ大きく首を振る。

 

「『万事休す』ですね……」劉は、シート深くに身を落とし、考えを巡らせる。

 

「[コード999(トリプルナイン)](緊急脱出コード)使うにしても、こんな時間座標からでは、どこに出るかしれたもんじゃないし……」智愛は、残された唯一の手段も失敗の公算が高い事を告げ、釘を刺す。

 

 劉は、腕組みした片手を顎に当てたまま、目を閉じて沈黙を守る。他の四人も皆、静かに彼女を見守る。

 

 劉は、ハッとして目を開いた。

 

「……副長、そういえば、アレをまだ試してませんね」

 

「アレ……?」劉の言葉に、楊はきょとんとなるが、すぐに隊長の言わんとする事を悟った。

 

「『八卦羅針盤』!」楊は、笑顔で言った。

 

「えぇ! ダメですよぉ〜、あんないい加減なの! しっかり情報分析して、冷静にですねぇ〜」「いい加減って何よ! だいたい、あんたが一番取り乱してんじゃん!」智愛が得意げに言ってる間に、楊は反撃の口を開いた。

 

「いーえ、静と心中の相談をしていただけです」「してないし」静は、智愛に聞こえない声で吐き捨てる。

 

「で、その極めて冷静な分析結果は?」明明が、呆れたように問う。

 

「出口なし……何やっても無駄。です」

 

 緑頭は、ニタァとした薄気味悪い笑みを浮かべ、静を見遣る。静は薄ら寒い気配に、小さく身を震わせる。

 

「はぁ⁉︎ 話になんねぇ! 楊姐、いいからやっちまおうぜ!」苛立ち顕に明明は、言い放つ。

 

「言われなくても、そのつもりよ!」楊が、自席コンソールのロックを解除すると、コンソールが反転して、八卦盤状の盤面が現れる。八卦盤の表面のモニターが灯り、楊は八卦盤の両端に付属するPSI-Linkモジュールに手を添えた。探索モードが八卦モードに切り替わった事を示すインフォメーションメッセージが、モニターに大きく表示され、正面に羅針盤を模したフォログラムが浮き上がる。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと! 静、だめ、だめだよね、こんなの!」「とっととやろう、副長」

 

「えええ! 隊長〜〜!」

 

「八卦羅針盤に賭けます。総員、PSI-Link接続! 今は脱出にのみ集中!」

 

 劉、静、明明の三人は、躊躇いなくPSI-Linkモジュールへと手を添える。

 

「えっえっえっ?」緑のきのこ頭が、戸惑いに揺れていた。静は、小さく溜め息を漏らす。

 

「智愛……」静は、幾分優しい口調で呼びかけてみる。突然名を呼ばれた智愛は、飼い主に尻尾を振る子犬の目で、静を見据えた。

 

「仕事……お、終わったら……パフェでも食べに行こう」背を向けたまま口ごもる静の声に、智愛の瞳は、今日一番の輝きだ。

 

「静……う、うん!!」一瞬にして満面の笑みを取り戻した智愛の手がPSI-Linkモジュールに添えられると、楊の八卦盤のモニターの発光が、黄金に変わる。その中央の太極図が渦を巻き、八卦の図像が渦に引き込まれていき、これに連動してフォログラムの羅針が激しく旋回し始めた。

 

「八卦羅針盤、全周探索開始、時空間転移座標へ連動! ……当たるも八卦、当たらぬも八卦ってね! いくわよ!」

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