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ポラリス 2章  作者: susan
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絵美子の妊娠

「貴女に彼氏が居たとしても構わない。何も聞きません」

 大森は紅子を自分の方に向かせた。

「好きです」そう言って

 大森は紅子を強く抱き締めた。

 そして、無抵抗の紅子の唇を奪った。

 最初から激しい口づけ。

 抑えていた激情が止まらない。

 最初、クラブで会った時から、毎日紅子のことを考えている。


 「抱いていいですか」

 と彼は囁いた。

 紅子は少し考え、小さく頷いた。



 グレンは毎日紅子からの連絡を待ったが、紅子はメ―ルも送って来ない。

 自分から彼女に電話すると、

「忙しい」

 と言う。

 1ヶ月間のイタリア出張から今まで、40日以上紅子と離れたまま。このまま、終るのか。

 

 きっと終わりなのだろう、とグレンは気付いた。

 

 どうすれば、別離にならなかったんだ。

 何が原因なのか。

 判らない


 紅子と別れた淋しさを、絵美子と会う事で埋めていた。

 毎週のように絵美子はグレンのマンションに来て、料理や部屋の掃除をしてくれた。洗濯や、買い物を付き合ってくれて、グレンも大助かりだ。

 絵美子は、あの『紅子』が、グレンの部屋に来なくなった事を確信していた。

 グレンと紅子の写真が棚から消えたから。


 勝ったわ!


 絵美子は、自分が紅子に勝った‼と実感した。

 友人の百合にも勝った。

 最初、ポラリスビ―ルに勤める百合に誘われて蟹専門店へ行き、グレンと出会った。

 あのとき、百合もグレンを好きだった。


 でも、私の勝ちよ。

 私が一番魅力的だという事。


 絵美子はグレンのお嫁さんになる事だけが、目標になっている。 


「グレン、今夜、泊まってもいい?」


「いいよ」


 グレンは絵美子を抱いても、感情の入らないロボットのようなセックスをする。

 紅子とのセックスと全く異なる。

 愛のない行為。

 絵美子はそれに気付くことなく、

『肉体関係は愛されている証拠』だと、幸福感に満たされていた。



 紅子は 、大森とデ―トを楽しんでいた。

 じっくりと物事を考える大森は、紅子の気持ちをを尊重してくれる。

 今日は何をするか、食事はイタリアンか回転しない寿司か、今夜は泊まるのか帰るのか。全て紅子が決める。大森はそれに従うことで、安心を得ていた。

 

 ただ、紅子は大森とのベッドで気付いた事があった。

 

 大森さんは随分、女性と交際があったみたいね。

 判るのよ、彼はベッドで女馴れしてる。

 離婚原因も聞いてないけれど、もしかしたら、 大森さんの浮気? 彼は二枚目だし。

 あまりにも女馴れした夜の彼の顔に気付き、少し冷静を取り戻した紅子だった。


 

 それから、数ヵ月が過ぎた。

 グレンは、スペインや長期フランス出張などで、

多忙を極めていた。

 その合間に、サンフランシスコやロスアンゼルス出張が何度も有り、札幌にいる時間は月に数日。

 本社は紅子のタウン誌に毎月広告を出している。

 グレンは、取材で本社を訪れる紅子と会うこともなくなっていた。

 

 絵美子は、体の変化に気付いた。

「グレン、私、妊娠したみたい」

 


          続く

  

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