予想外……!!?
宝月検事総長を筆頭に、4人の男が降りてくる。
「ハナ、コイツらで間違いないんだな?」
彼女が強く頷いたのを確認すると、男たちを険しい目付きで凝視する。
「……てめえらか?オレの大事な幼なじみに手ぇ出したのは。」
「…いい気味だ。きっと、奈斗も満足してるはずだ。」
「てめえっ!!」
オレは軽くその男の頬を殴った。
背後にあった木で倒れた拍子に頭を打ったようだ。
一呼吸置いて、残りの3人の顔をぐるりと見渡す。
ハナを悪く言うとこんな目に遭うということを、まざまざと見せつける。
一人の男は慌てて逃げようとするが、ムダだ。
ふくらはぎに足をかけ、動きを止めてから、相手の肩を軽く押す。
すると、相手の身体が回転した次の瞬間には地面に倒れていた。
小さい頃、兄さんに教わった護身術だ。
その要領で他の男も気絶させ、送検は兄さんたちに任せた。
しばらくして、ハナがオレらと仲直りするまでお世話になっていた学校に連れて行ってくれるらしく、ついていった。
まっすぐ、校長室に入る。
「篠崎先生、失礼します。蒲田華恵です。」
「入っていいよ。」
ミツも自己紹介をして、先生と向かい合う。
先生は、傍らにあった箱を私に手渡す。
中身は…腕輪。
私の祖母の形見。
…祖母は、先生の目の前で殺された。
だから、弁護士っていう夢を叶える前に亡くなったことも知った。
私の宿題。
祖母も見つけられなかった腕輪のチカラを、見つけること。
いろいろ祖母のことが知れてよかった。
さあ、帰ろ♪
外に出ると、ミツのお兄さんがいた。
巴さんも、こっちに来ているらしい。だから、待ってるんだって。
車内で何を話していたか聞くと、仕事の話って言った。
…あれ?
さっきもらった腕輪に、なんか違和感が…
ま、気のせいだよね。
二人でまた自転車で高原へ!!
と思ったら、いきなりの大雨。
私たちは、事故らない程度に自転車を走らせた。
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着いた先は、ミツの家。
不思議がる私に、
「風邪引くだろ?」
と優しい笑み。
タオルを持ってミツの部屋に入ると、同時に、Tシャツを脱ぎ捨てる彼の姿。
「きゃあっ!!目の前で脱がないでよっ!!」
「下は履いてるけどね?って、そぉいう問題じゃないか。
ってか、先お風呂入ってくれば?」
部屋のドアを閉めながら、彼に言う。
「ミツこそ風邪引いちゃうって!!
そんな格好で…」
「オレは大丈夫。あ、着替え適当に置いとくから。」
「うん。ありがとう。」
はあ。
シャワーを浴びながら、さっきの光景を思い出す。
男の人の裸って、未だに慣れない。
直視してられない。
あの日、ミツとT.A.B.O.Oを犯したときも、途中から記憶…ないんだよね。
こんなんで…いいのかなぁ。
まだ幼くて、色気は全然ないけど、なんか…見惚れてしまう。
相手がミツだからかもしれないけど。
シャワーを浴び終えて脱衣場に出ると、私の着替えの上に丁寧なメモ書き。
"ハナのお母さんに頼んで着替え持ってきてもらったから。"
ミツ、優しすぎだよ。
他の人にも、もうちょっと優しくしろよな。
タオルにくるまって微笑んでいると、ドアが開いた。
慌ててタオルを押さえる。
その主は、ミツのお兄さん。
「あ、ごめんね?いること知らなくて…」
お兄さんも、ミツと同じようにずぶ濡れだ。
"水も滴るイイ男"という言葉があるが、ホントにその通りで、カッコイイと胸を弾ませる。
ミツのお兄さんはシャワーを浴び終えると、飲み会だからと足早にまた出かけて行った。
「あのさ、オレはシャワー浴びてくるから、食事行く用意しときな?さっき兄さんに2000円もらったし。」
「いいよ。なんか作ろっか?」
「大丈夫。オレが奢りたいの。いつもお世話になってるし。」
ミツも用意を終え、二人でイタリアン料理のレストランへ。
食事を終えると、伊達さんと明日香さんに会った。
二人に車で送ってもらった。
明日香さんは諸事情により、伊達さんの家に泊まっているらしい。
家に帰ると、ミツのお兄さんはまだ帰っていなかった。
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しばらくして、ミツのお兄さん帰宅。
酔いつぶれた人たちを、巴さんと二人で家に送り届けて来たという。
布団を敷いてから、お兄さんは真剣な顔。
「優、ハナちゃん、気を付けておきなさい。今回の事件の黒幕は、帳奈斗だ。それと、霧生菜々美と昔絡んでいた奴らが不審な動きをしているらしい。」
「はあ…。でも、どぉして兄さんがそんなことを?」
「魔導学校の学級裁判に関わったものとして忠告しただけだ。」
「まさか…そんなこと、アコール先生は一言も…ハナのいじめのことと、ハナの祖母のことしか…」
言い終えたミツが、しまったとでも言わんばかりに口を押さえる。
「話すんだな、優。ハナちゃんにとっては酷だが…彼女にはオレの口からもっとショッキングな事実を話さなければならないから。」
そう言われ、ゆっくりと、言葉を選びながら話していく。
私のお祖母ちゃん。
蒲田 華美というらしい。
私が一人で公園にいたとき、話し相手になってくれたお祖母ちゃんが、私の祖母。
その人は、今もハッキリ覚えている。
ある有名な探偵さんの助手をしていたらしく、私が誘拐されたときに助けてくれた。
だけど、その後から公園にも現れなくなった。
誘拐犯に立ち向かって、殺されてしまったという。
大体この世にはいないという予想はついていた。
いつもお祖母ちゃんのオーラを感じた公園からは、何も感じられなくなっていたのだから。
そう答えると、御剣検事さんは、
「さすが、ハナちゃんは強い。だがねハナちゃん、君は実は養子だ。
母親はどこかで生きている。
父親は…オレたちの父親と同じく、殺されたようだがな…」
「兄さん!!なんでそんなこと…今言うんだよっ!!」
「…優。ハナちゃんの強さはお前が一番よく知ってるはずだろう?いつかは言わなければならなかったことだ。」
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「ありがとうございます。話してくれて。…ところで御剣検事さん、好きなんですか?巴さんのこと。」
「好きだよ。
検察庁にねつ造された証拠を渡されて法廷に望んだ。その証拠で無実の人間を処刑した。
…真犯人は巴さんの上司で…しかも、警視庁のトップ。証拠をねつ造したのもその人だ。
さらに、自分の罪をたまたま現場に居合わせた巴さんの妹に着せようとした。」
「これでようやくわかったよ、兄さん。ありがとう。
ハナ、覚えてないか?小学校2年くらいのとき、レンが毎日のように言っていた言葉。」
「『巴姉さんが最近冷たい』でしょ?その局長さん、巴さんを脅迫してたんだねきっと。
そして茜さんに危害が及ぶのを恐れた彼女はそれに従うしかなかった。冷たい仮面を被ってね。」
「きっと何かあったのでしょう?同じ"裏切りの被害者"同士、惹かれる何かが。」
「オレは納得いかなくてな。巴さんは止めたんだが、オレは自分を見つめる旅に出たんだ。
優や母さんには迷惑をかけたよ。」
話し終えたところで、巴さんが心配だから様子を見てくると行って家を出た。
最近、検事が何者かに脅迫される事件が相次いでいるのだという。
御剣検事さんが出ていった後、ミツも外に出た。
お母さんから電話が来たらしい。
ヤバ…泣けてきた。
母親はどこかで生きているらしいが、どこにいるのか。
頭の中がとにかく混乱している。
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前方に、誰かの気配。ミツか。
「ごめんね。泣いたりして…」
そう言う私の身体を抱き寄せ、頭を撫でてくれる彼。
今は誰かに甘えたかった。
聞こえた誰かの声にゆっくりと目を開ける。
そばには御剣検事さん。
顔を上げると、ミツの顔。あのまま、ミツの膝枕で寝てしまったらしい。
巴さんが作ってくれた朝食の席で、御剣検事さんと巴さんが付き合っていることを聞く。
昨日の飲み会で巴さんの上司がみんなに言い触らしたため、職場のみんなは知っているらしい。
気づくと8時だ。
御剣検事さんが法廷に立つ裁判を傍聴に行くため、みんな揃って家を出る。
私は、そのことを母親に伝えるべく、ミツを連れて先に家を出て、リビングの灯りを確認してからドアノブに手をかけた。
ドサッ。
背後から、聞き慣れない音。
ミツがうずくまるようにして倒れていた。
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どうやら、熱があるらしい。
部屋のベッドに寝かせ、後を私に託し御剣検事さんと巴さんは裁判所へ向かった。
母親とリビングで二人きりだ。
意を決して、聞いてみた。
「お母さん…何で教えてくれなかったの?私が養子だってコト。御剣検事さんから全部聞いたよ。」
私はそうカミングアウトしたが、お母さんはさほど驚いてはいなかった。
「そう。…よく…耐えられたわね。あなたが…全てを受け入れられる年齢になったら…って思ったんだけど。」
「大丈夫。ミツが、『そぉいうことも全部オレが一緒に背負ってやる』って言ってくれたから。」
お母さんと私の実母は、幼なじみで昔から仲良しだったらしい。
その他にもいろんな話をした。
探偵の助手だけじゃやっていけないから、マジシャンの仕事をしていたことも今日初めて知った。
しばらく話した後、ミツの様子を見るべく、2階に上がった。
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私は、お粥と冷えピタを持ってミツがいる部屋に入った。
「ミツ?大丈夫?」
私のノックの音で起きたみたいだ。
「ハナか…大分ラクになったよ。」
気付けは、熱で倒れた当初と服が変わっている。
私の父親の服を借りて自分で着替えたという。
「もう…言ってくれれば着替えくらい持って来たのに…あ、ちょっと待ってて。何か飲み物持って来る。」
そう言ってベッドの側を離れようとしたとき、服の裾が何かに引っ張られた。
「行くな…」
ミツの指がそうしているみたいだ。
「なんで?大丈夫、すぐ戻ってくるよ。」
「それでも、頼むから…ここにいてくれよ…」
ミツがこんなに甘えてくるのは初めてだ。
ふと気付いた。
彼のお母さんは旅行好きで、1ヶ月くらい帰って来ないし、お兄さんは検事なので多忙。
実家となるこの家には書類などの用がない限り帰って来ない。
だから、たまにほぼ一人暮らしみたいな状態になる。
ミツも…寂しいんだ。
その気持ちはよく分かる。
側にいてあげたかった。
私には…これぐらいしかできないから。
「ん…」
いつの間にかベッドの隅で寝てしまっていたらしい。
御剣検事さんと巴さんが、心配そうに私に声をかけてきたことしか記憶にない。
裁判は無事勝訴したらしい。
翌日にはミツの風邪も治った。
そうしているうちに、新学期を迎えた。




