番外編 とある始まりのお話
おまけ話
むかしむかし、とおーいむかし。
さいしょに、いだいなるひとつがありました。
いだいなるひとつは、たいくつでした。
たいくつでしにそうだったので、じぶんのからだを、しろとくろ、はんぶんにわけました。
しろはじぶんのからだであわとまそをつくりました。それらはまりょくにへんかしてほのおやみずのさわれないものがうまれました。
でも、それだけではすぐにきえてしまいます。しろはこまってしまいました。
くろは。そしてじぶんのからだをあかいりゅう、きいろいりゅう、あおいりゅうとみっつのりゅうにわけました。
りゅうたちは、くろのいうことをきいて、さいしょのせかいというものをつくりました。
いだいなるひとつのたいくつはすこしまぎれました。
りゅうたちは、もっとすごいものをつくって、いだいなるひとつによろこんでもらおうと、ちからをもとめました。
りゅうどうしはくらいあい、なんと、ひとつになってしまいました。
するとどうでしょう、せっかくできたせかいはりゅうのなかへきえていったではありませんか。
くろはもういちど、もういちどと、ためしました。
しかし、なんかいやってもおなじ、きっかけはちがっても、さいごにはどうしてもひとつになってしまうのです。
くろはこまりました、せっかくおもしろいものができたのに、すぐにだめになってしまう。
しろにきょうりょくをもとめました。しろはじぶんひとりではなにもできなかったので、よろこんでてつだいました。
くろはじぶんのからだをもっとこまかくわけました。わかれたそのからだを、しろがつくったあわでそれぞれやさしくつつみこみ、まそでみたします。
かけらからうまれたりゅうは、そのなかでじぶんのせかいをつくりはじめます。
ひとつになろうとすると、しゃぼんだまがかべになってひっつくことができません。
ほのおやみずはものにあたってきえづらくなりました。
くろとしろのからだはばらばらになってしまいましたが、せかいはまわりはじめました。
せかいからは、どぅるーがが、もりが、うみが、せいれいが、どうぶつが、そしてさいごにえるながうまれました。
えるなたちは、どんどんふえていき、しろとくろをかみとあがめたり、なかまどうしでたたかったり、かわったたてものをつくったり、いつみてもなにかあたらしいことをしています。みていてあきません。
いだいなるひとつはたいくつではありませんでした。
******
「ねぇ、この石に書かれている事って、創世の神話の事?」
ブランと僕、二人が暮らしている迷いの森の奥に鎮座している石碑の文章が気になった僕は、周囲の掃除を終えて一息ついているブランに尋ねてみた。
「あら、いつの間に古代エルナ語が読めるようになったのかしら?その通りよ、偉いわね~。」
彼女はそう言って僕の頭を撫でてくる。
「む~!僕は大人なんです!いつまでも子ども扱いしないで下さい!」
古代エルナ文字が読めるようになれば、今度こそ一人前として扱ってくれると思って頑張って勉強したのに!
「はいはい。分かったから、怒らないの。」
絶対分かっていない!
僕は掃除を再開するブランの背を見ながら、いつか大人と認めてもらって、僕と結婚してもらうんだ!そう心に誓うのだった。