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八話 黒く染まれ、あれ?ギャラリーが多いぞ!

ばっちり、見られてしまったクレア君でした。

走りながら、サクラが崩れ落ちていくのが見えた。


その瞬間、俺の視界が黒く染まった。


「ウォオオオオオオーーーーー!!」


どこか、遠くに聞こえた気がする咆哮が自分の声だと気がついたのは、ユノスを五メートルほど殴り飛ばした後だった。


ギ、ガチっと、頭の中で歯車が軋みをあげて切り替わるのような感触。


俺は気がつかなかった。


驚いたような目を俺にむけるユノス、その目に移っている俺の髪が、両目が「黒い闇色」に染まっていることに。


「ウガァァァァァァア!!」


まだ、呆けているユノスに向かって殴りかかる。


ただ、怒りのままに、燃えるような感情のままに。


その俺を見て、目の前に少女が、薄く笑った。


今にも、殴りかからんとする俺の姿を凝視しながら。


呪文をつむぐ。


己を、すべてを、今出せる全力を解放する言葉を。


-『ユノス』


彼女の姿が薄く発光する。


-モード『殺戮者』


俺は、まだ知らない。


それが、それこそが、彼女に『ハーフエルフ』に与えられた意味。


その存在意義、戦うために作られた少女に彼女を形作った世界から与えられた『存在価値』、ただ殺すために、敵を滅ぼすために。



彼女は凄惨な笑みを浮かべた。



「ウォオオオオオオオーーーー!!!」


「ガァアアアアアアアーーーー!!!」


そして、彼らはぶつかり合う、魔王と勇者の混血種が、ハイエルフとフェンリルの混血種が、怒りで表情を染めた少年と、無邪気にしかし凄惨な笑みを浮かべた少女の。


殴り合いが始まった。






「ねえ、キャシーこの収拾はどうつけるの?」


オロオロと聞いてきたのは、困惑の表情を浮かべているアイウスだった。


そして、私もきっと彼女と同じ表情をしているのだろう。


まったく、あの双子は...。


私はユノスに、普通の子供とまともに遊べるほどの力加減を教えて欲しかったのに。


その点では、まあサクラは及第点だろう、まあ、あの射撃魔宝具も使って見せた闇属性の連続射撃も到底見過ごせるものじゃなったけど、ユノスの軽い一撃で意識をとばしてしまった所を見ると、身体能力的には普通の子供と同じであろう。


しかし、最初の奇襲が失敗した時点で気絶しているはずだった兄のクレアの方が異常だった。


まず、普通であれば、攻撃方法はともあれサクラのように気絶しているはずなのである。


だが、クレアは食らってなお普通に走り出した。


まあ、まだそこまでは良かった、男の子だな!位で済む話であるかもしれない。


でも、サクラが気絶したの見た瞬間から、彼の雰囲気がガラッと変わった。


怒りの声を上げながら、その髪が、その金髪が、唯一黒髪のメッシュの部分から侵食されるように色を変えた、そして青と金のオッドアイも髪と同じように両目とも黒に染まる。


闇に、塗りつぶされるように...


「貴方は、貴方達は一体何をもって生まれてきたのよ...」


思い出されるのは、彼らが四歳に成ったあの春の日、聞くことができなかった、彼らの秘密が私の頭の中をよぎったのだった。






感情が、本能が警鐘を鳴らす。


風が見えた気がした。


顔をそらすと同時に、今まであった空間に鋭い手刀が突きこまれる。


考もせず、感情のままに彼女の手を掴んで、その身体にむけて左足を蹴りこむ。


かわされた、信じれないことにつきの体勢のまま、そのまま飛び上がったらしい。


流石に、俺の手が持たず離してしまう。


だが、彼女はいまだに空中にいる、ダメージを与える方法はいくらでもあるはずだ、


後ろを振り向かずすばやく、「ファイアボール」を詠唱する、放出されたのは五個の火の玉。


まるで燃え上がる憎悪のように黒く染まった火の玉がユノスに向かって飛ぶ。


が、そのことごとくがかわされた、彼女の動く気配をたどれば容易に理解できた。


まあ、かわすことなど、わかりきっている。


だだ、彼女の移動を制限できれば十分だった。


そして、蹴りあげたままだった、左足をすばやく下ろすとそれを支点にして、彼女がいるだろう空間に向かって回し後ろ蹴りを放った。


足に、確かな感触。


ただ、当たった部分は狙った顔面ではなく彼女のお腹。


そして、突き出すように伸びた彼女の右拳が、俺のわき腹に突き刺さっていた。


目の前には、嬉しそうに笑うユノスの顔が。


その瞳に映っていたのは、いつもの自分の姿。


「ああ、負けちゃったか...」


崩れ落ちる俺を誰かが、抱き締めるような感触がした。


「...たのしかった」


嬉しそうな、笑っているような、そんな声を聞きながら、俺は意識を手放した。






結局、停めに入らなかった保護者達も。


彼らの姿を見て、思い思いの表情をしていた。


娘の成長に感慨深そうな顔をしている、父親。


どこか、複雑そうな困惑の表情を浮かべているエルフ。


似た表情だが、その瞳には確かな好奇心の色が浮かんでいる青髪の女性。


そして、


「あらあら、クレアったら、女の子に手をあげるとどうなるか、明日からみっちりと身体に教え込んであげないとねー」


と、楽しそうに微笑む母親。


あれ?理不尽じゃね?


と、思った周りの表情を無視して、彼女は楽しそうに、子供達の姿を眺めていた。





本人は気がついていませんが。


クレアの力の片鱗と、始めての敗北。そんな話です。


て、始めての敗北がヒロインってかなり悲しいですね。


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