51:HARDCOREBabel
初めて乗った航空機は、思っていたよりかは乗り心地の悪いものではなかった。(つまり良いというわけではない。)
「あなたのラヴクラインはなかなか天才ですねぇ、ソド……じゃなく黒き狂気兇器強姫が負けるのを予測して、培養した自分の脳組織を搭載したコンピュ-タを飲ませコード404を解析、自分の血液に情報を打ち込んで飲ませる。そしてそれだけ無茶なことやってるくせに人間判定をクリアしたままなんて、なかなか優秀だと思いますぅ。天才的な飲ませやさんですねぇ」
「顔、近づけないでください」
近い。息がかかる。酸っぱい匂いがして本当に嫌。あと聞いてもない話を長々としないでほしい。
「いやいや、もしかしたらそのせいでゾンビ化したのかもですねぇ! 人間じゃ無理ですよねぇそんなこと! ねぇどう思いますソドム-Y? コード404は本当に人間の証なのでしょうかぁ?」
「近づけないでって言ってるでしょ!」
「おい、ソドム!」
メメメスは私が動く前に止めた。大丈夫だよメメメス、どうせコード404が出て殺せない相手なんだから最初から何もしないよ。
「顔が怖いですねぇ、ソドム-Y。そんなに怒らないでほしいですぅ」
「そういえば、Yってなんだよ。勝手につけたんだから意味くらい説明するのが礼儀だぜ」
確かに、なんなんだろ?
「え? アルファベットですよぉ。A~B~C~D~E~F~G~ですぅ。私、ソドムを多数所有するっていう頭脳実験をしているんですねぇ。猫のソドムに金魚のソドム、ああ、観葉植物にソドムって名前をつけたこともありましたぁ」
「なんだそれ、意味わかんねぇぜ。次はZにでもするつもりかよ」
「あはは、メメメスは馬鹿ですねぇ。Zにしたら終わりになっちゃうじゃないですか。次はまたAからですよ? ああ、1とかもいいですね。ソドム-1、ソドム-2いやいや、これだと区切りがわかりにくいですねぇ。やっぱりYの次はAですねぇ」
話の通じない相手。博士と同じ顔なのに、なんでこんなに違うんだろ。(おかげで私はこの人を見て、博士を連想しなくてすむのだけど。)
「ところで二人とも、目的はSリーグ昇格でいいんですよねぇ?」
「うん、そうだよ。私は博士を助けるためだけにここに来ているから――――」
「はいはい、Sリーグ選手はこの世界最高の叡智により願いを叶えてもらえるらしいのでぇ……ってこの話は二度目ですねぇ! まるでセカンドインパクト! ふふふ、サードで人類が滅ぶって言われてたなんて、おっもしろいですぅ!」
この人のことは信用できない。あと、話を聞く気にもならない。よくわからない脱線をするし。でも――――――このSリーグに関する話は狂姫さんも否定しなかった。スカーレットはSリーグ選手になってから、あの炎を手に入れたと。
「ああそうですそうですぅ、私があのラヴクラインと同じ名前なのはあなたたちからしたらいい気しないと思いますから、ラヴクラインじゃなくてラヴちゃんと呼んでくださいねぇ。呼び名ないと困りますからぁ」
この人はわざとこういう言い方(口調、内容、全て)をしてくるのだろうか、それともこれがこの人の普通なのだろうか。
「あれ、ビル山……」
「ビル山? ああ、七度目のバベルですねぇ。あそこにいるんですよぉ。私達ラヴクラインのオリジナルが。そうそう、この飛行機もオリジナルから私がSリーグ選手を三人も育てたご褒美でもらったんですぅ」
雲を突き抜けそびえ立つビル山、博士と家の屋根から何度も見た。これ、こんなに大きかったんだ……。(きっとあれに近づいたら、視界は全て支配される。)
「私のオリジナルはぁ、本物の天才ですよぉ。このくらいの水素原子、わかりますぅ? 原子をオレンジくらいに大きくしちゃったんですぅ。そしてそれを閉じ込める箱を同時に作成。そんなものが外に出ちゃったら世界の理は……嗚呼、どうなっちゃうんでしょう! でもね、これ本当なのかはよくわかんないんですぅ。だって私がぁ、必死に研究しても、そんなことできる可能性の欠片の欠片の欠片の欠片ですらぁ見つからないんですからぁ!」
よく喋る人だ。




