diary「MAD/coffee→Party?」
全員が濃いコーヒーを好むとはなんたることだ。なんたることだ。ああそうか、これは全て私だからか。
私の研究は第一段階に入ったところだと、ラヴクラインが報告します。向かい側に座っていたラヴクラインはそれを聞いて驚き、目をまんまる丸くしてしまいました。
「私は随分と前に世界が混乱するぎりぎりまで男女の出生比率を調整したが、それは第一段階ではないのかね?」
ラヴクラインたちは口々に言います。それは第一段階ですらない。それは第一段階ですらない。それは第一段階ですらない。
「では水素原子を一つだけ大きくして、世界のバランスを崩してみてはどうか?」
「そんなものはもう用意している、おまえは本当にラヴクラインなのか?」
ラヴクラインたちの意見の食い違いが増えました。みんなバラバラのことを言い出し、そしてたまに同じようなことを言い出すので、もう大騒ぎ!
「出生比率を変更したことは結果称賛されたではないか。それは功績ではないのかね?」
「そもそもあれは私の功績だ。誰も仮想現実から仮想を間引くことを考えなかっただろう? 全く自分と自分に限りなく類似する存在を混同しないでくれたまえ。そんなことをしていては余計に類似してしまう」
話が途切れたところで、いいやそれは私だと、別のラヴクラインがそのラヴクラインにきつく言いました。その後、同じ行動をしたラヴクラインが六人、そしてそのうち二人がずれたタイミングであったので、不協和音が生まれ論争はさらに大きくなってしまったのですが……。(逆説を唱えるのであれば、ずれていたのは四人でしょうか? 果たしてそれは逆説足り得るのでしょうか?)
「今夜は何を食べますか?」
そんな中割って入ったのは、水色のエプロンドレスと水色のリボンをした金髪で青い瞳の少女でした。正確にはエプロンと靴下は白ですが、そうしたところは省いても伝わるでしょうと一人のラヴクラインは言います。(その発言は無意味であり、夕飯のメニューを決める議論にすぐかき消されてしまいましたが。)
「実験的にあの金属を食べてみよう」
「いいや、実験的であることに意味などないと今朝も言っただろう。なんのためにその実験をするかが重要だと。そもそもおまえは夕飯を実験に使うつもり――――」
「結果が期待できる実験しかしないつもりかね? それでよく科学者が気どれたものだ」
なかなか決まらない夕飯のメニューに一人のラヴクラインが席を立ち、少女の耳元に口を近づけます。(耳打ちというやつですね。)
「夕飯は濃い目の珈琲だ。それで構わないかね、☓☓☓」
「はい、承知しました」
少女が部屋の扉を開けると、ふわりと硫黄の匂いがします。それはきっと、珈琲に決定されたせいで食べられることがなくなった夕飯の匂いでしょう。
さて問題です。この部屋にいたラヴクラインは何人でしょうか?




