35:暗闇ナイフ
「あ……嘘っ」
刺された。連続して斬る動きからの、真っ直ぐな突き。そんな初歩的なフェイントに……。
「つぁああああっ!」
熱い。このナイフ、たち悪い。
「シュー、シュー」
「うう、こんなナイフで刺されたら私死んじゃうよぉ~いたいよぉ~」
「ゴボ!」
もうダメ顔からの、蹴り上げ! どうだ! フェイントのお返しだよ!
「シュ……シュ……」
「あれ?」
もう動かなくなった。うひひ、大したことないじゃん。(刺された傷が治る痛みは、大したことあるけど。)
「シュー、シュー! シュー!」
「へっ! えええええええ!」
なんで、なんで立てるの! 結構きつくやったよ? まさかこの人もナノマシンで治るタイプ?
「馬鹿野郎! 敵は一人じゃねぇよ!」
「えっ!」
メメメスなんでここに。ってほんとだ、一人じゃない! ガスマスクの人めっちゃいる!
「悪ぃなって思って追っかけたらトラブルに巻き込まれてるとか、疫病神かよ」
「えええ、あの、ありがとう。あとごめんなさい!」
「うわ、おまえマジでぶりっ子だな」
うう、言い返せない! 確かに今のタイミングでありがとうごめんなさいはぶりっ子感ある!
「チッ、ハンターか。コード404は出ねぇんだな?」
「うん、でも全員かはわかんないよ?」
もし攻撃して404が出たら、一瞬動きが止められる。
「そうだな。適当にぶっ殺して逃げるぜ」
「殺すの?」
「あったりめぇだろ! なんだ、殺すのが嫌なのかよ?」
「いや、殺していい相手かどうかわかんないじゃん」
もし、相手が強い人の身内だったら私達は大変なことになる……よね?
「ちっ、切り抜けるには殺るしかねぇぞ」
「うう、やっぱりそうなるよね――――博士!」
遠くから聞こえた銃声。倒れるハンター。
「博士だぁ? ラヴクラインさんは家だぜ?」
「博士狙撃すごくうまいんだよ! よしもうやっちゃおうメメメス!」
「ったく調子いいやつだぜ!」
博士が撃ったってことはきっとやっても大丈夫だってこと。だってそうでしょ? 博士はかしこいんだから。
「おいソドム! ナイフに気をつけろ!」
「うん、わかってる!」
はじめてメメメスと一緒に戦ったけど、なんだか相性は悪くないみたい。(敵としては最悪だったけど。)
「危ない! メメメス、銃だ! つぁああっ!」
なんか勢いで、メメメスの盾になってしまった。でも仕方ないよね、メメメスは治らないし。ああ、痛っ……痛いなぁ。拳銃もってるなんて反則だよ。
「お、おい大丈夫かよ!」
「うひひ、痛いけど平気平気」
「動くな! あとは私が殺る!」
メメメスは意外といいやつかもしれない。だって私が撃たれたのを見て、明らかに強くなったから。ハンターは全滅、私達の勝ち。
「おい! 傷見せてみろ!」
「い、いいってお腹だし! うわめくらないで!」
強引! ワンピースひっくり返すなんてデリカシーなさすぎだよメメメス!
「おまえ……これ……」
「うん、私そういうふうなの」
「だからあれだけ殴っても……まったく怖いやつだぜ」
ちょうど傷が完治しかけてるの見られちゃった……。あれ? そういえばナノマシンのこと言うなって、誰にも言われてない気がするな。




