34:夜に走れ
帰れないのは、あんな大きな声を出して、玄関を派手に閉めて外に出てしまったから。きっとこれはごめんなさいじゃなくて、恥ずかしいって感情。
「家……」
止まることができなくてしかたなく走った。だから家がもう遠い。博士は心配してるだろうか、それともみんなと一緒に呆れているだろうか。
「星」
星を追いかけるカメラがあるって、博士が前に言ってた気がする。ああ、なんでみんなカメラが好きなんだろ。そのせいで私仲間はずれに……。
「違うよね」
そう、違う。メメメスがいなければ私はきっと全然わからないカメラの話でも、楽しそうな博士を見て嬉しい気持ちになれた……多分、狂姫さんに軽く嫉妬したくらいで。あれ? メメメスにも嫉妬……してたのかな? うん、してたよね…………。はぁ、私嫉妬心強すぎでしょ。
「走ろ」
馬鹿みたいだと思った、自分のことを。でも私は全力で走った、走りたかったから。走って走って、なんか気分をどうにかしたかったから私は走った。走ったって無意味かもしれないって気持ちを、置いてきぼりにして。
「はぁっ、はぁっ!」
走ればわかる、博士はメメメスの歌を褒めたかったんじゃなくて、お客さんであるメメメスの前で、私が微妙な空気を出していたのをフォローしてくれたんだって。
「はぁっ、はぁっ!」
狂姫さんが、私よりの意見を言ってくれるって思うのは、変な話だって。
「はぁっ、はぁっ!」
悔しかったのは、メメメスが私よりかっこいいこと言ったからだって。
「ああああああああああああああああああああああ!」
情けない自分が、嫌だったんだって。
「うるせぇぞ!」
「ご! ごめんなさい!」
しまった、もう夜遅いんだ……。静かに走ろう。
黙って走るのは気持ちがいい。さっきまでうるさかった心も静かになってきた。
「はぁ、帰って謝ろうかな……うん! そうだよね、ちゃんと謝ま――!」
見逃すところだった、誰かいたのを!
「だ、誰」
「シュー、シュー」
ガスマスクで顔が見えない。でもこの人、さっきナイフで私に斬りつけてきた……それに……。
「ゾンビ、殺してたの?」
周りに倒れてるのは、腐った死体。でもこれは、きっとさっきまで動いてた――ゾンビ。
「え、もしかしてあなたたち、ハンター……!」
まずい、もしこの人が私達も狙うタイプだったら……コード404でなにもできな……ってうわああ! 斬ってきた! 斬ってきた! 殺意満タン超狙うタイプだよこの人達。(ていうか最初から斬りつけてきてたね……ああ、今日の私、なんかぼけてるなぁ。)
「あれ」
「ゴボ……ゴボ」
あれ? な、殴れた? そっかこの人は人間判定通ってないんだ!
「ねぇ、もうそれ以上戦うのやめよ? 私強いから……ってうわあああ! だから! 危ないって!」
キーンって音はあのナイフ。細かく速い振動……斬られたら痛いやつだ……。
「もう、知らないよ! 今日の私は八つ当たり混ざるからね!」
そっちが先に攻撃してきたんだからね! ってあれ……避けられちゃった。もしかして意外と、強い方々?




