26:ナチュラル
「メメメスちゃんで、マイラブリー夢かわいいアイスクリームでした! さぁ! 愛を込めて金を放り投げる一分間だ! 愛を込めて金を投げろ投げろ! 支払額は愛情の深さだぁ!」
お金で愛は買えないと思うんですけど……ってまぁ、実況につっこんでもしかたないか。
「さぁて歌にお返し、ソドムちゃんのマイクパフォーマンスタイムだっ! ソドムちゃん、メメメスちゃんに言いたいことはあるか!」
え? は? えっ、いきなりマイク渡されても!
「あっ、えっと、その」
メメメスにはどんどんお金が振り込まれていく。一方私は、ゼロ。誰一人、振り込んでくれません。え、本当に? 私のファンってもう一人もいないの?
「えっと……」
ああ、あと十五秒……ヤバイ! なんか気の利いたこと言わないと!
「め、メメメス! おまえの女子力下げてやるからな!」
「…………」
え、え、メメメス無反応? なんか言ってよ! っていうかこっち見て! え、あと五秒。
『黙れブス』¥10,000-
マイクパフォーマンスの結果、私は¥10,000-を手に入れた。わざわざ私に文句を言うために振り込まれた、悪意ある¥10,000-を。メメメスの稼ぎは……うわ、狂姫さんほどじゃないけどエグい……。
「さぁて次は殺害同意ボタンだ! 二人ともこの試合になにをかけるか決めてくれぇ!」
殺害同意ボタンは押さない。博士と約束したから。ああ、なんか前の試合のこと思い出してイライラしてきた。
「今日も押さないんですか?」
ボソリと呟く声、きっとこれはマイクに拾われてはいない。挑発、挑発、私への挑発だな! ふふふ、でもねメメメス、今日の私は冷静だからその手にはのらないよ!
「殺害同意はなし! いくぜみんな、レギュレーションタイムだっ!」
『ソドムは防御禁止、防御したら電流でよろしく』¥434,900-
『ソドムは目を開けてはいけない。ルール厳守できない場合は試合前に眼球摘出』¥226,000-
『負けたら両腕切断。適用はソドムのみ』¥57,200-
私に不利なルールが並ぶのは予測していたけど、実際見るとなかなか気分が悪い。よくこんなひどいこと言うためだけに、そんな大金払えるね……。(レギュレーションをお金欲しさで承諾させようとする人が多いって話、本当だね。)
「なかなか熱いレギュレーションタイムだ! さぁ! 選手たちよ、自らルールを選べっ! 君たちがルールを決めるんだっ!」
実況の人、頭おかしいのかな?
「さぁ! 答えろソドムちゃん! みんな君のためにルールを考えてくれたんだ! 最高の解答、待ってるぜぇ!」
はぁ、やっぱりレギュレーションを受けるか拒否するかを決めるのは私からか……。ことごとくメメメスに有利な展開……。
「えっと、両腕切断。これは絶対に嫌、大事なものだから」
あっっっっっっっっっっっっったりまえだ。博士のくれた腕をおまえたちに奪われるなんて、絶対に、絶対に嫌。
『腕しか価値の無いやつがなんか言ってて草』
『大事な物アピールウザ』
『だ ま れ ア リ ス モ ド キ』
モニターに並ぶ、私への罵詈雑言。ねぇ、罵詈雑言にしても罵詈雑言すぎない?
「目を開けてはいけない? このルールも嫌。私は勝ちに来てるの!」
はぁ、ムカつく。ムカつく、ムカつく。
『勝てる宣言キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』
『そもそもソドムがメメメスと戦うっておかしくない? いくら払ったの?』
『なぁみんな? ソドムビビって漏らしてね?』
『ほんとだクセェ! クセェ!』
『俺は前から思ってた。ソドムって、ナチュラル臭そう』
『ナチュラル臭そう』
『NATURALKUSASOU』
『ナチュラル臭そう、わかる』
『臭そう。ナチュラルに。つまりナチュラル臭そう』
『ナチュラルクサソドムwwwwwwwwww』
漏らしてないよ! 臭くないよ! なんでちょっとナチュラル臭そう流行ってるの! っていうかクサソドムってなに! ああああ! もう!
「最後の条件! これはいいよ! 防御なしでやってやる!」
流れるように出続けていたモニターのメッセージが、一瞬、止まる。よし! 今のはナイスマイクパフォーマンスだ!(勢いで言っちゃったってのは否めないけど。)
『マ? 自分が臭すぎて頭おかしくなった?』
『キレすぎwwwwナチュラル臭そうwwwwww』
ふふ、でもこれは我ながら良い判断、どうせメメメスは前の試合と同じくこのルールを拒否する! 格下の私がこんな条件を呑んでいるのを許しちゃったら、ファン減っちゃうでしょ? ほら、メメメス! マイクあげるから前みたいにかわい子ぶって私を気遣うふりして、自分のポイント稼ぎなよ! あの二割が手元に入るのかぁ、うひひ、博士にすごくいいカメラ買ってあげられ――――。
「じゃあその条件で行きましょう! せっかくプレゼントしてもらえた優しいルール……大切にしますね。だって私、今日勝ちに来てますから! あ、他のルールも拒否されちゃいましたけど、私、全部承認します!」
あ、あれ? え、ええ、え! まって! メイドさんその電気首輪まった! まった! まぁ、でも両腕切断と眼球摘出は採用されてないわけだしいっか……って全然良くなぁあああああああ――――次回! 私の運命やいかに! いや、いかにじゃないよ!
「あ、あとソドムさん……こんな事言うのなんですけどお風呂入ったほうがいいですよ?」
「入ってるよ!」
「えっ、じゃあナチュ……」
だあああああああ! メメメス! ぶっ倒す!




