#49 ソフィアの性格とラングの怒り
「何でもいい!何かおかしなところがあれば教えてくれ!」
ラングは叫ぶようにコボルド部隊に伝えた。
ラングも周辺を必死に探した。
「ラング、君は魔力の検知などは出来ないのかい?魔族特有の魔力があるだろう?」
風の精霊はラングに一つの方法を示した。
「…いや、何もわからないんだ。私の目は常に魔力検知も行っている。しかしソフィアさんが戦っていた場所はクロやキサの魔力しかわからない」
「…やはり何か特別なのか」
「ロキと言ったな?戦っていた相手の名は」
「ああ、そうだよ。…何か知っているのかい?」
「私の知識が正しければ…。ロキという名は古の存在で絶大な力を持っていたと聞く」
「…あぁ、僕たちも聞いたことはある。恐らくそのロキだろう。まだ魔界だけで争いをしていた頃にいたという」
「そうだ。しかし何故父上に従っているのか…」
「僕もそこがわからない、もしかしたら完全に復活は出来ていないのかもしれない…」
「そうなのか?」
「考えてもみてよ、いくら女神様が一時的に力を与えたといっても今のソフィアが対等以上に戦える?」
「確かにそうだ…。じゃあ力が戻るまでは大人しく従っているということか?」
「可能性としてはね」
「残念ながら間違いですよ」
突如ゲートが開きソフィア達が戦ったロキが無傷の状態で現れた。
「なっ!ソフィアさんが大ダメージを与えたと聞いたが…」
「こちらに来ているのは分身。力の大半は魔界に残しています」
「…お前がロキか」
「ええ、そうです。お初にお目にかかります、魔王ラング」
「それで今も分身だと」
「はい、そうです。前回はお会いできなかったので、ご挨拶をと思いましてね」
「そうか、これはご丁寧に」
「以後お見知りおきを」
「さて、ソフィアさんを起こしてもらおうか」
「それは出来ませんね、何故なら私がやっているわけではないですから」
「では誰が?」
「今、あなたのお仲間が戦っている者ですよ」
「今?……!バラガス!!」
ラングは周辺を探した。がバラガス達の姿が見えなかった。
「くそ!何故気付かなかった!今行く…ぞ」
ラングがロキに背を向け走り出そうとした時に今まで感じたことの無い殺気を感じた。
「…っ!!」
すぐに向き直し体勢を整えた。
「おや、さすがですね。すぐにでも殺そうとしたのに気付きましたか」
「そりゃ、あれだけ殺気を放っていればな」
「うーん、ダメですねぇ。あなたを殺そうとするのが楽しすぎてつい出てしまったのですね」
「…なるほど、こいつはまずいな。どうしたものか」
ソフィア 精神世界
魔族の数はどんどん増えていき、大群となって押し寄せていた。
『エクスプロージョン』
『風切り羽』
『ウィンドカッター』
ナイア、クロ、キサが魔法で蹴散らし、残った魔族をチマがソフィアを守るように倒していた。
「キリが無いですね」
「もー、倒しても倒してもどんどん来るよー」
「…でもなんか手応えが無いっすよ!?」
「一体何なんだい!これは」
「……なんで、なんで魔法がちゃんと使えないの。これじゃ私、勇者なんて…」
ソフィアは気が滅入っていた。
すると更に多くの魔族が現れた。
「…何だい、随分とわかりやすいじゃないかい。そうだったねぇ、ここはソフィアの心の中だ」
ナイアは今の様子から何かわかったようだった。
「ソフィア!気をしっかり持つんだ!!」
「…え?」
「ここはソフィアの心の中だ!あんたが強い気持ちを持てばこやつらは何かしら変化が起きるだろう!!」
「で、でも強い気持ちなんて」
ナイアはボソッと呟く
「…仕方のない子だよ」
ナイアは魔法を唱えようとするも魔族に攻撃され倒れた。
「ナイアさん!!」
クロが近付くとナイアはウィンクをして笑った。
「…なるほど、そういうことですか」
クロはキサにアイコンタクトを送り、キサも頷いた。
「新しい魔法を試してみましょう」
『風刃身駆』
クロの翼に風の刃が現れ、そのまま魔族の群れに突っ込んだ。
が、やはり未完成だったため敵の目前で刃が消滅し逆に攻撃され吹っ飛んでしまった。
「なるほど、やはり身体的なダメージはあまり感じられないですね」
しかしクロはそのまま倒れたままの状態でいた。
「クロ!!…よくもクロを、許さないんだから!」
キサはクロの前に立ち塞がるよう位置取りし
『ウィンドボール』
「これをギューって圧縮して…」
圧縮されたウィンドボールは敵を貫通していくはずだったが、キサはわざとそれに時間をかけた。
その間に攻撃されキサも倒れる。
「皆!!」
「ソフィアさん!このままじゃまずいっす!」
「…皆、私のせいで」
「自分のせいだと思ってるならナイアさんの言うとおり気持ちを強く持つっす!」
「…でも、戦えない私は」
「戦えなくても戦うんすよ!じゃないと皆が!何のために皆が…!」
チマは悲しい顔をした。
「……まだ試してない事があるの」
「なんすか!?」
「光魔法…ロキに最後に使ったのはどうやら初歩的な光魔法みたいで…」
「使えるかもしれないっすか?」
「…やってみる。どっちみち使えなかったらここで終わっちゃうもんね。試してみるよ」
『ライトブレード』
ソフィアの周りに三本の光の刃が現れた。
ロキに対して使った時とは随分と数が少ないが使えることは使えた。
「で、出来た…。行け!!」
それは魔族に飛んでいき貫いていった。
「やったじゃないっすか!!」
「…うん、うん!!」
「じゃあここから巻き返しましょう!!」
「…皆、ごめん!今助けるから!!」
ソフィアの言葉のあと、無数にいた魔族は消え去った。
「…え?」
「なんか拍子抜けっす…」
「こんなに早く復活するとはな」
黒い障気に包まれて人ならざるシルエットが現れる。
「…誰?」
「我が名はナイトメア」
黒い馬がソフィア達の前に現れた。
『ライトブレード』
ソフィアは光の刃をナイトメアに放った。
「ちょっ!…えっ?」
ナイトメアは避けたが驚いている。
「…ソフィアさん、それはいけないっす」
「え?ダメなの?なんか立ってるだけだったから」
「今の流れは目的とか帰る方法とかを話してから戦う流れっす…」
「そっか!倒したら帰る事が出来るって決まってないものね」
「そうだ!お前は帰れなくなるかもしれなかったんだぞ!」
ナイトメアは少し怒っている。
「じゃあ教えて。どうやったら帰ることが出来るの?」
「言うわけがないだろう」
『ライトブレード』
ソフィアは慣れてきたのか、光の刃が五本に増えていた。
「…お前、マジか?」
「だって教えてくれないんでしょ?じゃあいいわ」
ナイトメアに向けて放つ。
「いい加減にしろ!!」
ナイトメアは再度避けたあと本気で怒った。
「そこの寝てる奴等も起きろって!」
「…今のソフィアさん怖いからイヤ」
「起きてくれ!頼むから!!」
「え?皆、無事なの?」
「起き上がれないから無事ではないですね」
「起きられるだろ!ダメージなんかほとんど無いんだから!」
「…なんすか?この軽い緩い感じ」
「ダメだ…。あいつ気持ち強くなりすぎて手に負えなくなってる」
『ホーリ…』
「やめろ!それだけはやめろ!わかった!帰す、帰すから!」
「なんかあいつどんどん小さくなってる気がするっす…」
ソフィアの心が強くなりすぎてナイトメアの体は小さくなってしまっていた。
「初めからそうしていればいいのよ」
「…ロキ様より残忍だぜ、あいつ」
「光魔法って性格変える作用でもあるのですか?」
クロが純粋な疑問をナイアに聞いてみた。
「…さあ。聞いたことはないですけど」
「はい!皆帰れ!!」
辺りは光に包まれた。
「つ、強い…。しかしこいつを何とかしないとソフィアさんが…」
「ククク、こんなものですか…?いけませんねぇ、あなたはつまらない」
「ちっ!」
ラングはロキと戦っていたがその力の差は歴然で、これで分身かと焦りを感じていた。
「…おや?」
ロキの隣に少年が突如現れた。
過ごし長めの金髪で服装は上流階級の子と同じような召し物であった。
「ナイトメア…。勇者は殺せましたか?」
「ダメでした…」
「ラングさん!!」
拠点からソフィア達が走ってきた。
「ソフィアさん!無事帰ってきたんですね!」
「はい!ご心配おかけしました」
「今度は魔王ラング、お前をあっちの世界に連れていってやろう」
少年の姿をしたナイトメアがラングに近付く。
「おやまぁ、何だい!この美少年は!」
ナイアがナイトメアに駆け寄り頭を撫でたり頬を触ったりしている。
「やめろ!ババア」
ナイトメアはその手を弾く。
「おやおや、反抗期かい?可愛いねぇ」
ナイアはキュンキュンしていた。
「ぼく、どこから来たの?」
ソフィアが話しかける。
「子供扱いするんじゃねぇ!」
「きゃー、可愛い」
「あ、あのソフィアさん、そいつロキの隣にいたから危ないですよ…?」
「ラング様ヤキモチっすか?ダメですよ!ドーンっと構えないと」
「いや、そういうことではなくて」
チマもナイトメアの元に向かった。
少年ナイトメアの周りに女子三人が集まりキャッキャッしている。
「魔王ラング、私は冷めたので帰ります」
「な、なんかすまん」
「いえ、あなたも大変そうですね」
「……」
ラングは無言で頷いた。
「とりあえず気分が悪いので」
ロキは指先から黒い光の玉を出し、ナイトメアの体を貫いた。
ナイトメアはその場に倒れた。
「…っ!」
「ぼく!ぼく!?大丈夫!?」
「…お前、仲間じゃないのか?」
「私に仲間などいませんよ、私にしてみたら全てが殺す対象ですからね」
「下衆が…!皆!そいつと共に離れて!」
ソフィア達はその場から離れ、ナイアは必死にナイトメアの治療をした。
ラングは怒っていた。
「…ククク、いいですよ。いいですよ!今のあなた!!やっぱり帰るのはやめにします。ここであなたを殺すことにします!!」
「…しまった!」
ロキはすぐにラングに向かい、魔王の剣を振りかざした。
その瞬間、ラングはとても体が軽くなった気がした。
ロキの振り下ろした剣を横に飛んでかわし、今度はラングが魔王の剣を手にロキに向かった。
「フフッ、いいですねぇ。ですが…」
ラングの斬撃は簡単のロキに防がれた。かのように見えた。
ラングは剣を振り下ろすタイミングで力が強くなっていた。
結果、ロキの持つ剣の刀身は折れた。
「なっ!何ですか?急に…」
「な、なんだ?急に…」
「こちらが聞いているのですよ!」
すると聞いたことのある声が聞こえてきた。
「魔王ラング!随分といけ好かねぇ奴と戦ってるじゃねぇか!」
「……お前、ザリド!?まさかお前が?」
「おうよ!初めはお前に復讐を考えたが今は味方しておいてやるよ」
「…詳しいことを聞く必要がありそうだな」
「あぁ、いくらでも話してやるよ。その前にこいつだな」
「…あぁ!行くぞ!!」
ラングは剣を構え、ザリドは指先全てを光らせた。




