#30 異変、新たな出会い
ラングの足取りは重かった。
「うーん、帰ったらなんて言おうか……」
「素直に全部話せばいいと思いますよ?」
「しかしチマは俺が美味しいものを買って帰ることを期待しているだろう?その期待に応えられないのがちょっと……」
もう少しで拠点という場所でラングは足を止めて考えた。
「………うん、やはり素直に謝ろう。事情を話せばわかってくれるだろう」
魔王なのに?とクロは思いながら面白そうなので
「そうですね、ラング様のお気持ちは伝わると思いますよ」
「だよな?そうだよな?よし、じゃあ帰ろう」
ラングは拠点に向けて歩き始めた。
戻ったラングの目に映ったのは大して修復されていない拠点だった。
「あれ?直ってないぞ?そんなに大変な作業だったのか?」
ラングとクロが拠点に近付くとすぐに異変に気付いた。
チマもバラガスもコボルド部隊もいない。
「なんだ?どういうことだ?」
「ラング様!あそこに!!!」
クロが指した場所にコボルドが倒れていた。
ラングは側に駆け寄った。
「おい!どうした!何があった!?」
コボルドは何かを言いかけるも言葉が出ない。
既に事が遅く、やがて体は消滅し魂が飛んでいった。
「一体、何があったんだ?」
ラングは辺りを見回した。
「あなたがここのご主人?」
突然女の子の声がラングの耳に聞こえた。
「誰だ!!」
ラングが叫ぶとすぐに目の前にそれは現れた。
「大きな声出さないでよ、せっかく教えてあげようとしたのに」
小さくふわふわと宙に浮く存在がそこにいた。
「ピクシー?」
クロは首を傾げた。
「そうよ、鳥さん。あたしはピクシーのキサ、よろしくね」
ピクシー キサ
ニールキースが仕掛けた戦争には興味なく自由に魔界と人間界を行き来していたが人間界の方が居心地が良く住み着いている。
「教えてあげようとしたというのは!?」
なぜかクロはちょっと怒っている。
「なぁに?この鳥さん、あたし相手にしたくないかも」
「だから教えてあげようとしたというのは!?」
キサは無視している。
「っ!!『ハードニン…』」
「待て待て待て!落ち着け!!」
「…こ、これは失礼いたしました」
クロがキサを切ろうとしたのでラングがすぐに止めた。
「キサと言ったか、すまないがここで何があったか教えては貰えないだろうか?」
キサは何かを調べるかのようにラングの周りを飛んだ。
「あなた、その辺の魔族じゃないわよね?」
「あぁ、私はラング。大魔王ニールキースの息子で今は人間界の偵察に来ている」
「じゃあ魔王ラング!?また戦争をするつもり?」
「父上はそうかもしれんが私は人間界に興味があってここにいる」
「ふーん」
キサは数秒沈黙してから
「いいわ、教えてあげる。あたしとしてもあいつらにでかい顔されるの面白くないのよね」
「あいつら?」
「リザードマンよ、ここから少し歩いた所にある洞窟に住んでるの」
「待て、この辺はコボルドがいたはずだが特に何も起きなかったのか?」
「そうよ、あいつらは少しばかり知恵があるから上手くかわして自分達が得するように動いてたわ。そのコボルドが倒されたことを知って今回も動いたんでしょ」
「どういうことだ?」
「ルードがいなくなったからコボルド達を倒して領地を広げられると思ったんだと思うけど、でもまさか倒したのが魔王だったなんて!!」
キサはケラケラ笑いながら飛び回った。
「何故ラング様が倒したことを知っている?」
「見てたからに決まってるじゃない」
キサはクロにフフンと得意気な表情を見せた。
「それでね、さっきも言ったようにあいつらがでかい顔してこの辺うろつくの面白くないのよ。でもやっぱりコボルドがいなくなったからってその結果相手にするのが魔王だなんて」
キサはまたケラケラ笑っている。
「傑作じゃない!!」
キサは悪い笑顔を浮かべた。
ラングは気になることをキサに聞いた。
「チマたちは無事なのか?」
「うん、多分ね。ただ単に連れ去られてただけだから」
「連れ去られてただけ?待て、チマ達は決して弱くは無いぞ?」
「うーん、多勢に無勢って感じかな。とにかくリザードマン達は数だけ多いから」
「そうか……。ところでその洞窟まで案内してくれないか?」
キサは遠くを見ている。
ラングはイラッとしたがそうも言ってられない。
「その洞窟まで案内してはくれないか?大事な仲間なんだ」
「仲間?」
「あぁ、そうだ!」
「仲間、ね。」
キサはくるくると飛び回った後に
「うん!なんかあなた面白そう!いいわ、案内してあげる!!」
こうしてラングはチマ達を救出するためキサの案内でリザードマンの洞窟に向かった。
そしてラングはずっと思っていた。
「なんかクロが怒ってるから俺は怒ること出来ないな……」




