#11 魔王は美味しいものが食べたい
ラングはクロを警戒している。
「人間界では食事でもなんでもお金、いわゆるゴールドというものが必要になります」
人間界では全てが貨幣というものでやりとりが行われる。
「うむ、それは知っておるぞ、金属で出来た丸く平べったい物や紙で出来ているものだろう?」
「はい、ですが我々は1ゴールドも持っておりません」
ラングは驚いた。
「はっ?えっ!?」
「はい、ですが我々は1ゴールドも持っておりません」
クロは冷静に、そして冷たくも感じる言い方だった。
「えっ?本当に!?」
「はい、なのであえて二回言いました」
「あっ、そういう意味で二回言ったの!?」
しかしラングは思った。
そう思わせておいて本当は持ってるんじゃないのか?と。
自分が困ったり落ち込む素振りを見せれば実は持っていると言って来るのではないかと。
「そ、そんな、美味しいものが食べられないのか?」
ラングは少々大袈裟に落ち込んだ。
「ラング様」
ほら!やっぱり!あるんじゃないか!!とラングはニヤリと笑った。
「人間界でゴールドを手にするには働くしかありませんので働きましょう。ちょうど近くの街で仕事の募集の掲示板を見つけていたのでそこまでご案内します」
ラングは耳を疑った。
「ん?ん?ん?ん?ちょっと待った!本当に無いのか?実は持ってますじゃないのか?」
「本当に無いですよ、だから言ったじゃないですか、あえて二回言ったと。ほら行きますよ、私もチマもお腹空いてるんですから」
ラングは歩けなかった、歩く力が全て奪われたかのように立ち尽くした。
その後、力無くしゃがみこんだ。




