原始の戦い
広大無辺とした原野に対極して位置する軍勢がある。方や群青の軍旗を颯爽となびかせ、方や緋色の軍旗を悠々と掲げている。その戒厳軍の兵士達にもそれぞれの特色があった。群青の旗をなびかせている兵士は自らの鎧、盾、さらには剣まで蒼一色というものであり、緋色の旗を掲げている者たちは鎧や矛や盾はもちろんのこと自身の身体までを赤く染め上げている。
その様相は恐怖と共に畏怖をも感じさせるものであった。
数刻の後に二対の武力は激突する。もし戦というものを知らない者が見たのならばそれは阿鼻叫喚の地獄絵図のようだったと語られるであろう。蒼に緋。相対する色が混濁し、折り重なり、悲痛な叫びが木霊する。
だが最後には整然とした荒れ野が残るだけでありどこか空虚なものだ。
戦略、戦術が意味を成さないほどに入り乱れ個々の能力、兵の質による戦いとなった。それはとても原始的な戦い方でありどこか釈然としないものであったが勝敗は緋の軍の勝利となった。
この原野での戦いが全ての始まりであり、全ての根底となるもの。
後に及ばずは追憶の彼方に。
一人の人間にとっては自身の根底にあるものであり、憎むべきものでもある。
その他大多数の人間には記憶の彼方へと追いやられてしまうただの出来事にすぎない。
だが、彼の行いによって此度の戦は人々の記憶の淵から否応なしに掬いだされることになる。




