過去回想編 周 諭史郎
僕は魔法が嫌いだ。
それは自分が魔法を使えないから、使える人に対して劣等感を抱いているからということに違いはない。
魔法が使えていいな、ずるいなと思う。
僕がそう思うようになったのは明確なきっかけがある。
僕はヤマト出身で、太陽国の士官学校に通うまでは、ヤマトで暮らしていた。
小五の秋、一人の魔法使いが僕のクラスに転校して来た。
その子の名前はアキラ君といって、天然パーマで眼鏡をかけ、関西弁を話す少し不思議な子だった。
アキラ君は最初から魔法が使えると大っぴらに言っていた訳ではない。
僕は友達が多い方ではなかったが、アキラ君とは家が近いという理由から仲良くなった。
ある日の学校の帰り道、アキラ君は僕に、こっそり秘密を打ち明けた。
「実はわい、魔法が使えるねん」
「えっ、そうだったの⁉ すごい!」
僕はその頃、魔法使いはテレビの中の存在だと思っていたから、こんな身近にいるなんて驚いた。
「ほら、証拠」
アキラ君はその辺に落ちていた小石を浮かせて、池の中にぽちゃんと落とした。
「すごい! アキラ君、すごい!」
「他にも、ほら浮いたり」
「すごい!」
地面から数センチ程、浮いているアキラ君を僕は褒めちぎった。
「魔法使いゆうても、これくらいしか出来ひんのやけどな。あんまり魔力多い方やないっぽいで、わい」
「それでも、すごいよ!」
「わいが魔法使えるの知っとるんは、オトンとオカンと諭史郎君だけやさかい、他の人には言わんといてな」
「うん、秘密だね!」
秘密の共有が僕達の友情を堅いものにした。
しかし、小学生の友情なんて、永遠に続くものではなかった。
小六の夏休み。
僕は相も変わらずアキラ君と遊んでいた。
アキラ君の魔法は色々なことに応用できるようになっていた。
僕は毎日、魅せられていた。
「アキラ君、夏休みの宿題進んでる?」
「あ~、全然やっとらんわ」
僕は毎日コツコツやるタイプだったので、アキラ君が心配になった。
「大丈夫なの?」
「あ~、だいじょぶだいじょぶ。漢字書き取りなんてメンドいやん。そんなん魔法でちょちょいやで」
「え、魔法でやるの?」
「せやで。別にええやん、使えるもんは使わんと」
僕は、その時、幻滅したのだ。
真面目に宿題に取り組んでいた僕が馬鹿みたいじゃないか。
ずるい、とも思った。
それから、僕はアキラ君と毎日、遊ぶのを止めた。
アキラ君と僕は段々と疎遠になっていった。
中学に上がる時、アキラ君は何処かに転校していって、僕達は、それっきりになった。
アキラ君は、今どこで何をしているのだろうか……。
アキラ君は既に物語に登場している、あの人です。
今はペンネームを使っていますが……。




