間幕 月下の白刃-プロローグ-
スピンオフ、堤下栄編開始
「……っ! 篤郎?」
「……あね……う……え……ゴフッ……」
「篤郎?! 篤郎!! そ、そんな……どうして……」
「俺だよ……」
「っ!! に、兄さ……?! ……その血……」
「だから俺が殺ったと言っている……篤郎を殺したのは……里の皆を殺したのはこの俺だ」
「な……ぜ……何故!!」
「自分の強さを知る為に」
「……え? そん……な……………事……そんな事の為に?! そんな事の為に皆を……弟である篤郎をも殺したのですか!?」
「俺達が持つ《これ》はその為にあるのだと思わないか? 相手を切り殺す以外、《これ》が何の役に立つ?」
「それは心がけ一つでしょう……」
「……そうか。やはりお前とは相容れぬか。まぁいい。後はお前だけだ。篤郎の元へと逝くがいい」
「……」
「ふ、その目……さっきの台詞は撤回だ。やはりお前は《こちら側》の存在だ。《そちら側》ではさぞかし窮屈だったであろう」
「黙れ……」
「恥じる必要はない。それ以上自分を抑える必要もない」
「黙れ!」
「《これ》を持つ以上、我々はこうなる事が当たり前なのだ。言わばこれが我々の宿命」
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
二匹の獣が月光に重なり、新たな悲劇が幕を開けた……。
人知れず……そう、誰もいない森の奥でそっと……。




