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 勧められた紅茶をひとくち含めば、ミントの味が広がる。

 リラックスすることが出来たので、この紅茶は香りもいいものだったから、高価なものかもしれないという考えまで浮かんでくる。

「そのペパーミントティー気に入ってくれた?」

「は、はい。とてもいい香りで、高価な物ではないのですか?」

「ふふふ、いい香りが全て高価な物だと思わないほうがいいわよ。淹れ方次第で、紅茶は香りと味が活かされる。覚えておいてね」

 オリヴィア様が優しく微笑む。先程、微笑まれたときにも、どこかで見たことがあると考えていたら、以前ユーゴと訪れた王立美術館で見たことがある「聖母の微笑み」に似ている。あの絵のモデル、ハミルトン家の女性だとユーゴは言っていたが、もしかして、目の前にいるオリヴィア様はハミルトン家の縁者なのではないだろうか。

 聞いていいのかわからないが、ここにいるのは私が伯爵令嬢と知っているアイリーン様とオリヴィア様だけだ。

 だが、油断してしまい他の者に聞かれれば、家名は名乗らずともそのうち伯爵家の者と知られてしまう。

「体調が戻ったらところで、そろそろ朝礼だから移動しましょうか。アイリーン、片づけを頼むわ」

「仕方ないですね。アンジュちゃん、また後でね」

 隣にいたはずのアイリーン様が立ち上がり、飲み終わると同時に片づけてくれる。

 その所作が、我が家の侍女にも劣らぬものだった。私はこれから、一連の所作を学ぶのかと思うと、緊張してしまう。

 一礼して、控え室から退出をする姿を眺めていると、考えてしまう。

 伯爵令嬢として、貴族の振る舞いは習ってきたが、誰かに給仕するということには慣れていない。自分に出来るのかと不安が襲う。その不安に気づかれたのか「最初は誰もが失敗しながら成長するの。だから、きっとあなたも出来るようになるから、何も心配はしないで」と。そう言われても、不安しかない。

「ほら、暗い顔はしないの。皆、あなたのことを歓迎しているのよ。レディ・アンジュ・グレアム」

「えっ」

 いきなり名前を呼ばれ、オリヴィア様の顔をまじまじと見ていると「きちんと挨拶したことがなかったから、挨拶するわね。私はオリヴィア・ハミルトン。ユーゴの姉に当たる者よ」と、言われるがハミルトン家に…ユーゴに姉がいると言うことは聞いていない。

 驚きすぎて、言葉にすることも出来ない。この驚きはジェード殿下とユーゴが血縁関係にあるということを知ったときと、同じ位の衝撃だ。

 ユーゴ自身、あまり家族のことを口にするようなことはしていなかったため、ひとり息子なのだと思っていた。もっと、家族のことなど話してくれてもよかったのに。胸の奥がチクリと痛む。

 それに、今までも私はハミルトン家に踏み入れたことは数回しかなく、殆どユーゴが家に来ることばかりだ。

 初めて知らされた姉の存在に戸惑ってしまう。

「あの…えっと、はじめまして。そのよろしくお願いします。お義姉様?」

「よろしくね。やっぱり、生意気な弟よりも素直な妹の方が数倍可愛い。なかなか、あなたに会わせてくれないから、会えてよかったわ。さあ、行きましょうか」

 手を掴まれ引かれる。その引かれ方が、昔迷子にならないようにと兄が差し出してくれた温もりに似ていた。

 きっと、ユーゴのお姉様だからなのだろうか。優しい瞳の色が、ユーゴにすごく似ている。

 彼女は知っているのだろうか。弟が婚約者以外の令嬢と、この店に通っているということ事実を。

 連れていかれた場所には、既に数十人がいる。上座と呼ばれる場には、もちろんグレン様がいた。手を引かれている私は、オリヴィア様に連れていかれグレン様の隣に立たされる。

 目立っているのか、視線が痛い。


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