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 アイリーン様も着替えが終わり、簡単にだが髪をひつと括ってくれた。

 御礼を言えば「次から出来るように練習してね。出来なくても私がやるから」と、面倒をみてくれるようだ。

 だけれど、ひとりでこれぐらい出来なくてはいけないと思い、あとで屋敷で侍女に習いながら練習しようの思う。

 それにしても、綺麗なお団子(シニヨン)だ。

 不器用すぎて、私ひとりではきっと出来ないだろう。

 そんな私に気づいたのか「アイリーンも、初めはやってもらっていたから気にしないこと」と、オリヴィア樣が柔らかく笑う。

 その表情が聖母のようで、ぼーっとしてしまう。ここは、素敵な方しか勤めることが出ないのではないかと考えてしまう。

「さっきから、ぼーっとしてるけれど、大丈夫かしら」

 間の前で手を降られるが、その姿ですら優雅にみえる。

 両肩を後ろから掴まれ「おーい、現実に戻っておいで。オリヴィアさんが美人だからって見惚れないの。テイラーのときもそうだけど、大丈夫?」と、声を掛けられながら、前後に揺さぶられる。その揺さぶりが、徐々に激しくなり気持ち悪い。

「そこまでにしなさい。アンジュちゃんの顔色が悪いわ」

「えっ、本当」

 ここで嘘を言っても仕方がないと思う。

 やっと解放してもらえたから、新鮮な空気を吸うように深く吸い込む。気持ち悪さを覚えた身体は、横になりたいと訴えてくる。

 だけれど、初日からこのような失態は許されないだろう。

「体調が良くないみたね。少し、控え室のソファに座っていて。いま、ペパーミントティーを淹れてもらうわ」

「お、お気遣いなくお願いします」

「遠慮しないこと。ここで働くということは、今日から私たちの仲間になるということなのだからね」

 ソファに強制的に座らせられたが、堂々と座るほど神経が図太くないので、小さく端に座らせてもらった。

 そして、何故か隣にアイリーン様がちゃっかりと座って来る。申し訳なさそうにチラチラと此方を見てくるが、いまは自分の体調が悪すぎて、そのことに対して気遣いできない。

「ごめんなさい」と心の中で謝るだけ謝ることにした。

 不快感との戦っていると、ティーカップが差し出される。それを、落とさないように受け取ろうとしたが、陶器のため熱が伝わり、熱くて指先でだけ持とうしてみるが、中身が入っているため重くて断念する。

 苦笑いを浮かべながら「慌てなくても、逃げないか大丈夫」と言われてしまい恥ずかしい。

 穴があったら入りたいと思ってしまい、隠れたいが隠れるところもないため、俯くしかない。俯いていると、ふーふーと息を吹きかける音が聞こえる。チラリととティーカップの方を見ると、中身である熱々のペパーミントティーにアイリーン様が息を吹きかけている。

「あ、あああアイリーン様!何をなさっているのですか」

「ん?熱くて飲めないと思ったから私からの愛を吹きかけたんだ」

 愛とかよくかわらない単語が聞こえてきたけれど、そこは無視させてもらう。

 そもそも淑女としてその作法はどうなのだろう。持ってきてくれたオリヴィア様は頭を抱えているから、呆れているのだろう。

「きっと冷めたはずだから、飲んでみて。ここの紅茶は美味しいのよ」

 何事もなかったかのように、勧めてくる。そのため、顔を引きつらせるしかなかった。

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