空気。
小さい頃、俺は誰からも相手にされず、あげくのはてに
「あんたなんて、死んじゃえばいい」
と幼なじみの女の子に言われた。
その瞬間、俺の心はサビついてしまっていた。
誰からも相手にされない自分にいらだった。泣き叫んだ。
でも、そんな俺に手をさしのべてくれる人なんて、一人もいなかった。
俺の居場所はなくなっていた。
親も、兄貴も、全員俺を空気のように思っていた。
あってもなくてもいいもの。
俺一人いなくなっても何も変わらないんだ。
その空気扱いされる俺を皆でけむたがった。
どこかに行けと言ってるような視線が心に突き刺さっていた。
俺が15になっても、皆で俺をまだけむたがり、もちろん、中学にも行かせてもらえなかった。
まぁ、まるで、生きている意味のない俺を誰も相手にしてくれるはずがない。
そして、とうとう俺は、自殺を決意した。
今度産まれて来るときは、きっと人気者で、皆から必要とされながら、生きる。
そう思い、ナイフを手首にあてた。
ぐっと、力を入れてナイフをつきたてると、兄がいきなり走って、俺の方に来た。
「かなめ!お前、リストカットしようとしてるのか!?」
「うん・・・。」
「やめろ、かなめ!お前が死んだら、次は俺がお前みたいになっちゃうんだよ。」
俺はあまりにも、憎しみの感情が出てきて、あぜんとしていた。
「まぁ、リストカットお前やめたみたいだし、もういいや。」
と言って、兄はその場をはなれた。
俺は、本当にリストカットをやめて、外に出た。
ふと、前を見ると、髪の短い女の子がこっちを見ていた。自分と同じくらいの年だろう。
そしてその子は俺に、
「かなめ・・・くん?」
と言った。
その子は小さい時、俺に死んじゃえと言った、幼なじみの女の子だった。
怖くて痛々しい思い出が、じわじわと心の中でよみがえってきていた。
「しゅうな・・・ちゃん・・・。」
「やっぱりかなめくんだー!久しぶり!」
「うん。」
俺は怖くて、小さく返事した。
なぜかと言うと、しゅうなちゃんが、俺を苦しめた、一番最初の人間だった。
もし、俺がしゅうなちゃんに出会ってなければ、俺はこんな苦しまず、普通の人間になっていたはずだ。
それは、俺が六歳の時にさかのぼる・・・。