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★完結★【Caro laccio】―いとしい絆―  作者: 寿 明結未(ことぶき・あゆみ)
第四章

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11 「もう……貴女は本当に愛らしい方だ」

 ●第四章●



 ――今日は建国記念日。



 私は朝からケーキを焼き、そのケーキを手にして家族皆で鳳亭に向かった。

 前もって予約はしていたが、鳳亭は既に賑わっていて、店に入ると主人や女将さん、それだけではなく冒険者や常連客からも歓迎を受けた。



 あの妖精狩り事件から数日、私は世界を救った英雄としてヴァルキルト王国に名を轟かせることになった。そしてこの国の象徴としてある意味崇められている所もあるようだ。



 屋敷に来る客であからさまに私目手当てだと分かる女性客がいると、アンゼさんによる撃退が炸裂する。プリアさんが私を心配そうに見つめる事はあったが「私が心に決めている相手は既に居ますから安心して下さいね」と微笑むと、どこか寂しそうに微笑んでいた。

 どうやら私の心はプリアさんには伝わっていないようだ……。



 その気持ちを建国記念日の今日、プリアさんに告白しようと決めている私は、家の貴重品入れに厳重に保管しているプレゼントを思い描く。



 アンゼさんには、いつでもメモが取れるようにインクが切れない万年筆を。キッドさんには最新の計算機をプレゼント済みだし、イモさんには防御力も高い胴着を、アニスさんには最高品質の火傷跡に効く塗り薬をプレゼントした。



 ――そしてプリアさんには今日の夜……私は覚悟を決める。



 それは魔王を倒した時の緊張感とは違い、今後の人生を賭けた戦いの様にも感じられた。

 今も隣で夢中になってキノコの串焼きを食べているプリアさんは愛らしくて愛しくて堪らない。

 その表情だけでお腹一杯になりそうな程、幸せそうにキノコを食べるプリアさんは天使の様にも見えた。



「プリアさん、頬に鰹節がついてますよ」

「あう……勿体無い」

「沢山食べて良いのですから、慌てずゆっくり食べましょうね」



 そう言って頬についた鰹節を取って自分の口に運ぶと、プリアさんは顔を真っ赤に染めて私から目線を逸らすとキノコに噛り付いた。





 ――もしプリアさんに告白して嫌だと言われたら。





 その時は彼女を監禁してでも私を愛してくれるように、私だけしか見えないようにしようと言う気持ちもある。危険な思考だと分かってはいるが、プリアさんを手放す気は一切無かった。

 私の人生にとってプリアさんが存在する事が全てになっているのだから。



 プリアさんは何時も笑顔で私の側に居てくれる。

 一緒に錬金術をしている間も手伝いをしてくれるし、アニスさんに教えて貰ったのだと言って工房に甘いお菓子を持ってきてくれる事だってあった。

 甘い香りのする彼女は理性が飛びそうになるほど魅力的なのだ。



 そんな事を思いつつも自作したケーキを取り出し、皆で食べる時間は何故か懐かしくもあった。

 記憶には無いが……小さい頃、こうやって誰かと一緒に建国記念日を過ごしたような僅かな違和感だけが残っている。



『ほらビリー! 俺のイチゴやるよ!』



 そう言ってくれたのは誰だったのか……その声が何故か宝物のように感じられた。

 食事も終わり、皆で家路に着く頃には空からボタン雪が降り注ぐ。この様子だと明日には相当な雪が積もるだろうと語り合いながら歩く道中だった。



「今日は一番風呂に入りたいなぁ」

「まぁ、キッドさんダメですよ? 一番風呂はアルベルト様の特権です」

「女湯と男湯があればもう少しスムーズに風呂に入れるのだがな」



 そう語るキッドさんやアンゼさん、そしてイモさんに、確かに我が家には風呂が一箇所にしか無い事を考えると、女湯と男湯は必要だろうと再確認出来た。

 何時も最後に入るのはアンゼさんだが、お湯が冷えていないだろうかと言う心配もある。



「では来年にでも女湯と男湯を作りますか?」

 そう問い掛けたその時だ。



「ビリーとプリア専用の風呂もあって良いんじゃね~の?」



 キッドさんの言葉に私が目を丸くすると、プリアさんは顔から湯気が出そうなほど赤く染まり、キッドさんはアニスさんに頭を殴られ、その様子を見た祖父とアンゼさんとイモさんは微笑んでいた。

 居た堪れない……でもプリアさんとは一緒にお風呂に入りたい。

 改めて、私は自分の欲望に忠実に生きようと心に決めた。







 家に帰ると皆それぞれに自室へと戻り、私は一人プリアさんの部屋を訪れた。

 ノックする腕が震えるほどの緊張……魔王の玉座を開ける時にも感じられなかった緊張感の元、部屋の奥からプリアさんの返事が聞こえて中に入る。湯上りサッパリのプリアさんが、可愛らしいパジャマで出迎えてくれた。



「どうしたの? ビリちゃん」

「いえ、プリアさんへの建国記念日プレゼントを渡していなかったので」



 両手を振りながら「キノコが沢山食べれたから満足だよ!」と口にするプリアさんを前に跪き、私はポケットから綺麗に包装された箱を取り出すとプリアさんに手渡した。



「貴女の為に作った物です。喜んで下さると良いのですが……」



 絞り出した声は、自分でも情けない程に震えていたと思う。



 プリアさんは頬を染めて箱のリボンを取り、その蓋を開けると目を輝かせてプレゼントを見つめた。



「これ……」

「淡い紫翡翠のネックレスです。ただの紫翡翠では満足できませんでしたので、私なりに細工はしましたが」



 言葉を無くし、震える小さな手で紫翡翠に手を当てるプリアさん……。

 彼女は今まで見た事が無いほど嬉しそうな表情をしていた。



「私が着けて差し上げても宜しいでしょうか?」

「……はい」



 頬を染め、箱を私に手渡すプリアさん。私はネックレスを手にするとプリアさんの首に腕を回し、ネックレスを着けた。

 プリアさんはクルッと回ってその姿を見せると、小さな両手を紫翡翠に当てて大事そうに包み込んでいる。



「綺麗……」

「喜んで下さって何よりです。そしてもう一つ、貴女に伝えたいことがあります」



 そう口にするとプリアさんを抱きしめ、さらにもう少し強く抱きしめると――。



「……私は貴女の事が好きです。あなたの事を愛しています。どうか、私の妻になって頂けないでしょうか」

「ビリちゃ……っ」



 そう口にした私に向け、プリアさんは大きな声で「はい」と返事をしてくれた。

 ――それは、未来への約束。

 その返事を聞けただけで、涙が溢れて止まらない。



「一緒に生きていきましょうね……私は貴女無しでは生きていけないのですから」

「うん……うん!」

「約束ですよ?」



 そう口にするともう一度小さな頬に口付けし、プリアさんは頬を染め、一筋の涙を流しながら微笑み私の頬に口付けた。

 ――しかし。



「でも結婚するまでエッチはしないからね!」



 思わぬ反応に私が目を見開くと、プリアさんの言葉を再度脳内で再生し、噴出して笑ってしまった。

 その反応がまた可愛くって抱きしめると、プリアさんの怒った声が聞こえた。

 けれど、それは照れ隠しだというのは既に解りきっている事だ。



「もう……貴女は本当に愛らしい方だ」



 そう言ってもう一回頬にキスをすると、二人で微笑みあい……その日からは一緒のベッドで寝る事を決めた。彼女を抱き寄せる感触はまるで天使を抱き締めて寝ているような幸福感があり、今までの疲れを全て消し去ってくれるような心地だった……。


+++

既に執筆完了している小説を、2018年5月1日から土日休みを貰い毎日UPしていきます。

感想、評価、ブックマーク等ありましたら作者が喜びます。

宜しくお願いします!

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