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第二章② 共に遂行する依頼

 オルランドの家に住まわせてもらっているアンジェリカは、その代わりとして依頼を手伝う事になった。今は、失踪者の探索依頼を受けている。

 失踪者の最後の目撃地点は、第三区画の外れだった。街灯は半分以上が壊れ、残った光も弱い。闇のほうが濃い場所。まあ、ここらではありがち、と言ったほうがいいような場所だった。

「……ここですか。」

 アンジェリカが小さく呟く。

「ああ。 普通の人間は近づかない。近づくとしても───」

 オルランドは周囲を見渡した。静かすぎる。

「ここらに残った機材を盗もうとする輩ぐらいだろう。」

 静かな場所ほど、この街では危険だった。足元に、乾いた跡。血ではない。薬品の焼け焦げ。うっかりした研究員がこぼしたのか、それとも、何かに追われるままここで───。考える必要は、ないな。

「研究施設の搬入口だな。」

「……まだ、使われているということでしょうか。」

「使われていなければ、もっと崩れている。」

 そのとき。───音。金属を擦るような、不規則な呼吸。深い闇の奥で、何かが動いた。現れたのは、人の形を保ちきれていない影。腕は左右で長さが違い、首には不自然な縫合。目は焦点を結んでいない。当然の如く、もう手遅れだ。やはり、違法研究所だったようだな。

「暴走者……」

 アンジェリカの声がわずかに震える。だが、一歩も退かなかった。影はゆっくりと近づき、次の瞬間、跳んだ。速い。オルランドは即座に身を引き、懐から短銃を抜く。最新の技術を込めた高性能な銃。───撃てば終わる。こんな怪物の頭など消し飛ばせるだろう。

 だが。その前に、白い光が走った。風が裂ける音。一閃。影は空中で止まり、遅れて崩れ落ちた。静寂。オルランドは、ゆっくりと視線を向ける。アンジェリカが立っていた。その手に───剣。装飾は少ない。だが刃は、夜の中で淡く輝いている。まるで光そのものを細く形にしたようだった。

「……アンジェリカ。」

 オルランドの声に、アンジェリカは静かに答える。

「護身用ですよ。」

 嘘ではない。だが、それだけでもない。剣はまだ微かに震え、周囲の空気を揺らしていた。ただの武器ではない。それは一目で分かる。

「───その剣の、名前は?」

 短い問い。アンジェリカは刃を見つめ、少しだけ息を整えてから言った。

「───ドゥリンダーナ」

 その名が落ちた瞬間、空気が重くなった気がした。何か、人間の古いところを呼び覚ますような、それこそ聖書の文章の一部のような───。だがオルランドは、それ以上は聞かなかった。代わりに、倒れた影へ視線を向ける。

「……一撃か。」

「もう、苦しまなくて済みます。」

 優しい言葉だった。けれどその足元には、確かな死がある。オルランドは理解する。この人は、ただ守られる存在ではない。むしろ───自分よりも深く、この世界の残酷さを知っている。闇の奥で、もう一つ物音がした。一体ではない。複数。オルランドは小さく息を吐く。

「……下がってください。今度こそ、危険だと思いますから。」

「いいえ───」

 即答。アンジェリカは剣を構えた。淡い光が、今度ははっきりと強くなる。

「一緒に行きます。」

 その声に迷いはない。オルランドは数秒だけ黙り、そして───わずかに笑った。

「……分かりました」

 二人は並んで、闇へ向き直る。光と銃口が、同時に前を向いた。その瞬間。第二の影が、咆哮とともに躍り出た。───戦いは、まだ始まったばかりだった。

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