第21話:子への思いと自分の欲と
物心ついたころには奴隷だった。
小さいなりに疑問を持つこともあったが、
それは、暴力と暴言で塗り替えられる。
お前は奴隷だと。
反抗心は、折られ、潰された。
希望も誇りも知らない。
だから何も持ってなかった。
十二で、初めて接待した時は嬉しかった。
ご飯が増えるから、殴られないから、
尊厳なんて、知らないから。
しばらくして子ができた。
大きくなる腹を見て思ったのは、
「どうしよう、殴られる」
そう思った、子の心配などしない。
腹が大きくなり、商人から村長に伝わる。
だが、殴られず、産めと言われたのだ。
今考えれば、「商品」が減ったからだ。
生まれた子は女で、村長は喜ぶ。
女は売れるからだ。
私は、乳が出るように食べ物を貰えた。
乳を飲まなくなると、食べ物も元に戻った。
私には、子は邪魔なだけだった。
だが、子は夜は私にピッタリくっつく。
私も暖かいので放っておいた。
そんな風に暮らしてた時、
人間たちが来なくなった。
私達のように人間に近い獣人は、
人間相手の「接待」しか仕事がない。
段々食べ物が減らされていく。
そんな時にブンペイはきた。
ああ、これで接待できると喜んだが、
ブンペイは接待も奴隷を買う事も無かった。
ブンペイが村を出ると、村長や男達がいう。
お前達は無駄だから処分する。
出て行ってもいいがどうする? と。
今なら、出ていけば良かったと思う。
でも、奴隷で何も知らない私は、
出ていく事は死ぬことだと思っていた。
本当の意味で生きてはいない癖に。
そして、私たちは殴られ罵声を浴びた。
ヒュッと喉がなり子が動かなくなった。
死んだ子なのに私はずっと抱いていた。
そのうち私も目が見えなくなる。
次の瞬間だった。
体中が自由に動き、古傷すらない。
ブンペイが子を抱いて何かを堪えている。
子を見た。
動いてない、相変わらずガリガリのまま。
死んだなあ、と他人事のように思った。
その後は嵐の様だ。
私達は、字が読めるようになり本を読み、
ブンペイから「自由」を教えられた。
自由は難しかった。
本を読むのは楽しい、内容も理解できる。
でも自由というのがよくわからないのだ。
悩んでいたときにブンペイがこう言った。
「死んだ子の事で泣いていいのが自由だ」
私は気がついたら泣いていた。
それほど子を大事にした覚えもない。
ただ自分の都合だけだった。
でも、たまに見せた笑った顔や声を思う。
一緒に寝たときの暖かさを思う。
涙は止まらない。
その時にブンペイは抱きしめてくれた。
私を壊れ物のように、優しく。
欲に塗れてないハグなど初めてだった。
私はこの男が欲しいと思った。
だが、躊躇した。
そしてシキが動いた。
私が感じた感情が「嫉妬」なんだろう。
「嫉妬」も「好き」も本で知った。
だけど実際に感じた好きは痛かった。
あの子を思い出して泣けた自分がいる。
そしてブンペイを求める自分もいる。
浅ましいと、思われるかもしれない。
両方は欲張りだと言われるかもしれない。
でも、これが私だ。
これが私が「自由」に選んだ結果だ。
どんな結果でも胸を張ろう。
明日も上を向こう。




