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竜の息子と鬼の弟子、魔術と機械の世界で出会い、そして――。  作者: サーデェンス・ロー
プロローグ(01)
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プロローグ(01)

01 プロローグ

Ver1.5




 青年は、自分を庇い首を断たれた竜の亡骸を掴み続けながら、あり得ない希望を抱き続けていた。


「――まだ、死ねない」


 今、青年が在るのは竜が好む戦闘高度のやや下、数字にすれば高度2500m前後。


 それを目で見えるものに言い換えれば、風と雲とが支配する空の美しさと大地の偉大さを知る事が出来る世界。


 今はまだ一握りの人間しか知る事の出来ないその場所に在った青年は、彼をこの世界へと押し上げてくれた竜を失った事でその空から追い落とされようとしていた。


 そして、当然の事だが――竜の加護という強大な後ろ盾を失い、身一つとなった今の青年に墜落から逃れる術はない。


「奴を……味方を撃つような奴を、グゥエルナーの最期にする訳には……」


 視界が歪む程に強烈な感情が青年の中に溢れ、その零れ落ちた怒りが言葉となって洩れ出ても、現実は彼の身勝手な想いを余所に進んでいく。


 青年がいくら感情と魔力を昂ぶらせても落下が止まる事は無く、錐揉み状態の中で時折見える砂と岩――竜の(こきょう)の山肌とは似ても似つかない地表が速度を増して迫ってくる。


 ――誰でもいい……誰か、此方に再び立てる機会を――。


 しかし、青年はただ願いを想い続けたまま迫る死を見詰め、その到来を否定し続けた。






 少女は墜ちてくる竜の亡骸を見て、浅ましいと判っていながらも期待の眼差しを押さえられなかった。


「……あれ程の魔素を集めているならば、きっと――」


 魔素とは空気中に漂う魔力の源だが、死に行く竜がそんなものを集めてもその行き先は最期の感情が形となった竜晶に集まる他なく――あれ程の魔素を変換した魔力で構築された竜晶となれば、(べネイア)の対になれる可能性は十分にある。


「…………申し訳ありませんが、利用させていただきます」


 同時に、あそこまで強烈な感情を形として残せる存在となれば亡骸の主はよほど名のある竜であり、もしもその最期の想いを竜の劣化品である機竜の材料にされると知り得たなら、きっと出来上がった竜晶は怨みに寄った使い難い物になってしまう事だろう。


 しかし、戦いに敗れ、墜とされた竜が少女の願いなど知る由も無く、彼は少女が望むモノとなって地表に落ちて来る。


「……ごめんなさい」


 竜の不興を買う事が判っていても少女は自らの方針を覆す心算は無く、利用する代わりとして遺した想いを叶える事に尽力する事を誓うので、どうか堪えてほしいと彼女は心の中で謝罪する。


 ――……べネイア。……必ず、貴方をまた動ける形に――。


 少女はその願望を胸に秘めたまま、墜ちてくる竜の下へと走る。






 自分を高みに押し上げてくれた存在の仇を討って、その無念を晴らす為の力を望む者。

 幼い頃の自分の身勝手によって失われてしまった存在を、元に戻す手段を探していた者。


 怨みと贖い。そんな方向性の異なる自分勝手な願いを抱く2人は、そうして宵闇の影が差し始める砂漠の中で巡り会った。



お読み頂き、ありがとうございます。

ブックマークや評価は執筆を加速させる燃料となりますので、よろしければお願い致します。


2018/08/23 Ver1.0

2019/01/27 Ver1.1:配置変更のついでに誤字脱字及び調整を実施

2019/05/04 Ver1.2:08到達に伴う、全文改修化に伴う見直しを実施

2019/11/11 Ver1.3:プロット確認・調整のついでに誤字脱字及び調整を実施

2020/09/12 配置変更を実施。

2020/09/21 Ver1.4:プロット確認・調整のついでに誤字脱字及び調整を実施

2022/11/14 Ver1.5:プロット確認のついでに誤字脱字及び調整を実施

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