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非正規転生 ~転生したけど最弱スキルすらもらってない~  作者: KEI
第12話 魔法陣にはおそらく意味がある

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(四)閉じてない

◆ (十)分かるとは言っていない


神殿の男は、理人をまっすぐ見た。


「あなたは魔力を扱えるのですか」

「扱えない」


理人は正直に答えた。


「魔法陣を描いたことは?」

「ない」

「魔法理論を学んだことは?」

「ない」

「では、なぜ分かると言えるのですか」


理人は少し黙った。

分かる、とは言えない。

それを言えば、前と同じ失敗になる。

信用のない正しさは、ただの石だ。

理人は首を横に振った。


「分かるとは言っていない」


そして、札を指す。


「違いがあると言っている」


神殿の男は口を閉じた。

理人は続ける。


「魔物被害がなかった札と、魔物が寄った札。動物が嫌がった札と、嫌がらなかった札。虫が避けた札。煙が乱れた札。線が違う札。場所。向き。古い札。新しい札。違いがある」

「それが魔法の理由とは限りません」

「そうだ」


理人はうなずいた。


「だから、後で確認する」


リナが、木片の丸い印を指した。

後で確認。

セリアが小さく笑う。

神殿の男だけは、まだ笑わなかった。


「外から来た者に、魔法陣のことを分かったように扱われるのは、正直、不愉快です」


男はそう言った。

理人は、少しだけ頭を下げた。


「分かる」


それは本心だった。

自分の仕事に、何も知らない者が口を出す。

それが不愉快なのは分かる。

前の世界でも、よくあった。


図面を読めない者が、現場に口を出す。

装置を触ったことのない者が、工程に口を出す。

数字だけを見た者が、人を責める。

理人は、それが嫌いだった。

だから、同じことはしたくない。


理人は札を指した。


「魔法は、あなたが知っている。俺は知らない」


次に、並べた札を指す。


「でも、違いは見える」


男は、すぐには答えなかった。

理人は続ける。


「教えてほしい。これは、型の違いか。失敗か。意味がある線か」


神殿の男の表情が、少しだけ変わった。

怒りが消えたわけではない。

だが、ただ否定する顔ではなくなった。


◆ (十一)閉じてない


札を並べているうちに、理人は一箇所で手を止めた。

魔物が寄ったと報告された札。

その外周にある小さな線。

他の札では、線が内側の印へ戻っている。

だが、その札だけは戻っていない。


途中で終わっている。

理人は別の札を見る。

同じ場所に、似た線がある。

しかし、そちらは円の内側へつながっている。

さらに別の札。


そこでは、線の終わりに小さな点がある。

理人は三枚を並べた。

線が戻るもの。線が点で終わるもの。線が途中で切れているもの。

どれが正しいのかは分からない。

全部正しい可能性もある。


用途が違うのかもしれない。

描いた者の癖かもしれない。

だが、理人には嫌な形に見えた。

何かが開いたままになっている。

そんな感じがする。


理人は小さくつぶやいた。


「閉じてない……?」


セリアが聞き返す。


「何がですか」

「まだ分からない」


理人は札を見た。


「でも、ここ。たぶん、おかしい」


神殿の男が顔をしかめる。


「たぶん、ですか」


理人はうなずいた。


「たぶん」


リナが横で言った。


「不明。後で確認」


理人は思わず笑った。


「そうだ」


ただし、気になることが一つあった。

閉じていないように見える札の中にも、魔物被害がなかったものがある。

逆に、線がきれいに見える札でも、被害が出たものがある。

単純ではない。

理人は、札の裏に小さく印をつけた。


誰が描いたか。誰が魔力を通したか。いつ作られたか。古くないか。湿っていないか。素材は同じか。同じ型の札か。

線だけでは足りない。

作った者の腕も見る必要がある。

だが、腕だけにすると、線の違いが消える。

理人はため息をついた。


問題は、一つではない。

だからこそ、分けなければならない。

神殿の男が、低く言った。


「魔力の通し方で補えることもあります」


理人は顔を上げた。


「補える?」

「多少の線の揺れなら、術者が魔力を通す時に整えます。上手い者なら」


理人は、その言葉を木片に書いた。

上手い者なら、補える。

それは重要だった。

欠けがあっても、動く札がある理由かもしれない。

同時に、欠けがあっても問題が見えにくくなる理由でもある。


理人は、閉じていないように見える線をもう一度見た。

まだ直さない。

まだ断定しない。

ただ、次に見る場所は決まった。



※第12話「魔法陣にはおそらく意味がある」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/irregular-reincarnation-top/

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