カルラ、サナを訪ねる(実際は“資料編”読み飛ばし推奨)
カルラはサナの新居を訪ねて居た。
「サナ、カーム、居るか?」
返答は無い。
「留守か……」
何気に入口の扉に触れると、
キイィ……
扉が開く、
カルラは思わず中に入った。
「サナ、カーム、居るのか?」
やはり返答は無いが部屋は、すっかり片付いて居て、棚に可愛い小物も並ぶ
こんな様子を見て
「やっと落ち着いたようだな」
友人の帰還を感じ安堵する
「ふうぅ」
そう言うと、背後から声がかかる。
「――ませ」
カルラは血の気が引いた。
気配を全く察知できず、背後を取られていたからである。
騎士団総長を退き、ギルドマスターに転じてから二十年。こんなふうに背後を取られたことは一度もなかった。
「くっ」
倒れ込むように飛び退き、姿勢を低くして、振り向き、臨戦態勢に入る
サナの家に来ているので武器は持ち合わせていない事に気づき、緊張が走る。
「おのれ……」
「あれ?」
「んー?」
「はぁ?」
振り向くとヴァリシアが見事なカーテシーを決めていた
「いらっしゃいませ、カルラ様、ただいま奥様は学園に、旦那様は鍛冶屋に出向いております」
「なにヤッてんだ、ヴァリシア?」
カルラは腰が抜け、“ぺたん”とその場に座る
「お帰りは、奥様も、旦那様も夕刻になるとお聞きしています。」
「ちょっと?ヴァリシアさんよ?……あれ?あいつら、式上げたか?」
「来客が有ればお茶をお出しするように言われております。こちらに掛けてお待ちください」
カルラはヴァリシアに言われるままテーブルに座る
――王国基礎魔術学概論――(訂正版)
「なんだコレ」
それは学園の教科書だった
《作者より;この世界の魔法理論書です。設定資料の亜種です。読み飛ばしてください。
でもでも、この世界の魔法理論が教科書風に書かれてます》
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
王国基礎魔術学概論
― 初等課程参考書・魔法発現の基礎 ―
王都神授守聖護学園 魔術学初等課程
第一章 魔法とは何か
魔法は、術者の力のみによって生じる現象ではない。術者自身の魔力、周囲の魔素、土地や空間に残された情報、エレメントとの親和、魔道具による補助といった複数の条件が重なって、はじめて発現する。したがって、同じ呪文と術式を用いても、全ての術者が同一の結果を得るわけではない。鍛錬の程度、生活環境、土地、使用する道具、エレメントとの親和によって、魔法の威力と性質には差が生じる。
本王国では、この基本構造を便宜上「魔法発現の五因子」と呼ぶ。
第二章 魔法発現の五因子
第一因子 自魔力
術者本人が保有する魔力。魔法発動の最も基本的な要素であり、術の規模、精度、維持時間に影響する。過度に消耗した場合は、強い疲労、意識の混濁、失神を引き起こすことがある。魔術師は、自身の魔力量を把握し、適切に制御する訓練を要する。なお、自魔力の多寡は魔術師の優劣を直ちに示すものではない。魔法の発現は、他の因子との関係にも左右されるためである。
第二因子 魔素
自然界や大気中に存在する、魔力的性質を持つ微細な要素。人間が体内に魔力を持つように、自然環境にも魔力が存在すると考えられている。巻物魔術は特に魔素を利用する性質が強く、魔素の極端に乏しい場所では正常に発動しないことがある。また魔素は、エレメントへの干渉を補助する場合もある。
第三因子 水分子記憶
水および大気中の水分に残された情報の痕跡。長期にわたり自然環境に蓄積された現象の記憶、術式の痕跡、魂の残り香に似た情報などが含まれると考えられている。ただし、その全てが魔法に関係するわけではなく、土地の出来事、生物の活動、自然現象など内容は多岐にわたる。沙庭職の者の中には、この情報の読み取りに長けた者が僅かに存在するが、読み取れる内容と精度には個人差が極めて大きい。薬剤の効果発現にも関係するとされるが、その機構には未解明の部分が多い。
第四因子 エレメント
自然界に存在する属性的な存在。現在の王国魔術学において最も一般的な魔法体系であり、多くの魔術教育はエレメント魔法を中心に行われる。確認されているエレメントは九種である(第三章参照)。術者は、自らの魔力と呪文によってエレメントに働きかけ、魔法現象を発現させる。エレメントが現象を成立させる過程は完全には解明されていないが、魔素、水分子記憶、自然環境、術者との親和性などを利用するものと考えられている。全てのエレメントに等しい適性を持つ者は稀で、得意な属性と極端に不得意な属性が併存するのが通常である。
第五因子 魔道具
魔術の発動、制御、安定化を補助する器具。魔杖、触媒石、術式刻印布などが代表例である。その機能には、魔力消費の軽減、術式の安定、特定エレメントとの親和の補完、魔法の方向と範囲の制御などがある。術者本人の適性が不十分な場合も、適切な魔道具によって不足を補える場合がある。ただし、本来成立しない魔法を道具のみで成立させることはできない。
第三章 九種エレメント
王国で確認されているエレメントは、木・火・土・風・水・草・光・闇・無の九種である。この分類は、自然界が九種に分割されていることを意味しない。現在の王国魔術学が、観測された現象を整理するために用いる区分である。
二種以上のエレメントが同時に作用する魔法も少なくない。たとえば火と土が複合して発現する術のように、単一の属性では説明できない現象がある。これを混合発現と呼ぶ。混合発現は、二つの魔法の同時使用とは区別される。複数の要素が結び付いた結果、元のいずれとも異なる現象として成立する場合があるためである。詳細は現在も研究が続けられている。
第四章 魔法を扱えない者
魔力素質が低い者、あるいは事故や精神的要因によって魔法を扱えなくなった者が存在する。ただし、現在魔法を使えないことは、一切の魔法を使用できないことを意味しない。適性属性の再調査、訓練方法の変更、スクロールや魔道具の利用により、新たな発現経路が見つかる場合がある。本人が自覚していない適性が存在することもある。魔術教育では、「才能が無い」として結論するのではなく、発現しない原因を調査することが求められる。
特別章 祖霊魔法について
祖霊魔法は、前述の五因子には含まれない。この点を混同してはならない。
祖霊魔法は、術式の学習、呪文の暗記、訓練の反復によって誰もが同一の魔法を習得できる体系ではない。その成立には、術者本人の在り方と、祖霊その他の存在との関係が大きく影響する。このため個人差は極めて大きく、同じ家系に生まれた者でも、全く同じ術が発現するとは限らない。また、祖霊が生前に持っていた技能や職業が、後代の術者に特殊な能力として現れる例が確認されている。代表例として、木こりに伝わる《剛力》、ソウルリンカーの《技魂インヴォーグ》、ソウルラウンダーの《御霊菊理》がある。これらは俗に「専業魔法」と呼ばれる。
祖霊魔法には、一般魔術のような統一された教授法が存在しない。教師が呪文や術式を教えても、それのみでは発現しないためである。必要なのは、本人が何を有し、何と繋がり得るかを見出すことである。ソウルラウンダーの《御霊菊理》は、この繋がりを見出し、整えるために用いられる。祖霊を呼び出して魔法を与える術ではなく、本人の魂、祖霊、エレメントその他の存在との縁を探り、それらが結び付く可能性を整える術である。したがって、祖霊魔法そのものを教えることはできないが、それが発現する道筋を整えることはできる。
教員注記
祖霊魔法は再現性が低い。同一の条件、術式、訓練を与えても、同一の結果が得られるとは限らない。現在の王国魔術学では、一般魔術とは別の体系として扱う。学習にあたっては、発動の手順に加えて、当該の術がその術者に発現した理由を検討すること。
章末確認
問一 魔法発現の五因子を挙げよ。
問二 王国で現在確認されている九種のエレメントを挙げよ。
問三 自魔力の多い者が、必ずしも優れた魔術師とはいえない理由を述べよ。
問四 混合発現について説明せよ。
問五 祖霊魔法を一般魔術と同じ方法で教授できない理由を述べよ。
問六 《御霊菊理》の主目的を述べよ。
本章の要点
1.魔法は、自魔力、魔素、水分子記憶、エレメント、魔道具の五因子の関係によって発現する。
2.確認されているエレメントは、木・火・土・風・水・草・光・闇・無の九種である。複数のエレメントによる現象を混合発現と呼ぶ。
3.魔法を扱えない者についても、適性の再調査や補助手段によって、発現経路が見つかる場合がある。
4.祖霊魔法は五因子に含まれず、別体系として扱う。再現性が低く、統一的な教授法を持たない。
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「…………」
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「なんだコレ? 解らん……自分に解るのは絵本くらいだ……あ……」
カルラは何かを思い出しソウルリンカーであるヴァリシアに問う
「なぁ、ヴァリシア、教理絵本ってしってるか?」
ヴァリシアはカルラの前に一杯の紅茶を出しだしながら言う
「さぁ、存じ上げません」
ヴァリシアは完全なメイドの御霊を降ろしているようだ
「ヴァリシア、おまえ……いい加減に……」
「お茶菓子のお好みは合いますでしょうか?」
カルラはブチ切れる
「てめぇ、いい加減にしろよ?」
紅茶が溢れる勢いでテーブルが揺れる
この後、色々有ったようだが、カームが帰ってきて仲裁に入り
精魂尽きたカームが真っ白に燃え尽きたとか……
が、それは、また別のストーリに成ります




