0話 プロローグ、賜りし霊(ひ)の新しき道
――まだ、“身体”がある。
ここにある願いと引き換えに、すべてが終わりを迎えようとしている。
仲間たちは先に解脱し、肉体と魂は美しい光となり、跡にはわずかな匂いのような残滓だけが漂っている。
「カーム……ごめんね、向こう側で見守ることすら……できない、かも……」
自身の身体も、構成要素が世界へと還元されつつあり、走馬灯なのか、
色々な事柄が思い解される。
「うっ…走馬灯が恥ずかしいなんてウケる、恥ずかしくて死にそう」
「でも、屋台のおばちゃん優しかったよね、ヴァリシア…」
そんな冗談めいた事を自分に言い聞かせ、禁呪の重圧に耐えながらサナはふと思った。
「へへっ……もう、耐えられそうにないなぁ……」
――この体を…生きていたのは…だれだったかなぁ…
あれほど重かった禁呪に耐えていたのに今はもう心地良い。
「へぇ…もう、身体は無いのか…」
すでに個では無かった、しかし不思議と高揚感に包まれる
今までの出来事が全て同時に垣間見れ…喜びも悲しみも溶け合う気配がする
「ああ。わたし…は…とても………」
光の感覚が臨界を越え、
サナは、自分が世界に“溶けた”と理解した。
――不思議だ。
見ている訳でも無いのに何処を見ても空……
「…ああ……これが……祖霊の言っていた……風空…宇宙……」
どこかで、美しい声が響く。
「繋ぎ止めるわ……貴方は、もう転性の必要は無いようだし、興味が湧いたの…」
――うつろう。
サナは広大な宇宙を、
一瞬で“うつろった”。
それは移動でも浮遊でもない。
存在の位相そのものが変化し同化していく感覚。
ああ、これが“神のルール”……。
その流れは全て中と外にあって、そこに居て・・全てを包括する。
常に私は 媒介(medium)で、状態(states)、静動(static)だから
だから神は処理(process)するんだ。
私はそれを――
気づけば、とても暖かい何かが後ろから抱きしめていた。
ところどころ、自分の身体が“溶け合う”感覚がある。
「――」
その暖かさは優しくも熱く深い……
「へぇ……身体もないのにね……」
言葉より先に、“理解”だけが静かに降りてくる。
事象の地平面より、もっと深い“意志の階層”から――
彼女の物語は、ここから…




