第1章・エピローグ
――スパム王国、国王の執務室。
「エドワード!貴方このままにしておく気!?」
スパム王国に当たり前の様に棲みついてる姉のヘンリエッタが、声を荒げて来る。
「ああ、まあ、ポロロン王国には特に思い入れもないからな」
デスロード達を撃退して1月ほど経つ。
現在、ポロロン王国、いや、元王国か。
取りあえず、元王国は建国ラッシュが続いていた。
デスロード達を討伐した事と、エルロンド教を中心とした聖連合軍が帝国に攻め込んだ事で、帝国軍が元ポロロン王国から撤退したためだ。
え?
それがなぜ建国ラッシュになるのか分からない?
いや、もう王家は残ってないからな。
トップが無いんだから、解放された諸侯は合併などをしながら独立し始めたって訳だ。
王族ならお前がいる?
いやいや、俺はもうスパム王国建国してるから。
まあ俺を旗印に掲げようとして接触してきた奴らもいたけど、そいつらにはお引きと願ってる。
揉めると分かってて、旧ポロロン王国を纏める為に動くとかしたくないからな。
俺は野心持って動くタイプじゃないんで、そういうのは他所でやって貰う。
「そんなに王国の末が気になるんだったら、ヘンリエッタがクロム伯爵の提案を受ければいいのでは?」
声がかかったのは俺だけではない。
実は姉であるヘンリエッタの方にも、クロム伯爵家から声がかかっていた。
「冗談じゃないわ!腹黒陰険なクロム伯爵なんかの元へ行ったら私は傀儡にされてしまう!」
今のヘンリエッタに後ろ盾はない。
なので、傀儡になるってのはほぼ確定ではある。
なにせクロム伯爵が欲しいのは、象徴としてのトップだからな。
ヘンリエッタの能力に期待して治めて貰おうって気は、全くないだろうし。
因みに、象徴ってのは正当性な。
自分勝手に独立した他とは違って、うちはポロロン王国の後継としてやっていきます。
っていう正当性があると、他国との交渉や、今現在中立状態の領地を取り込みやすくなる。
俺からしたらどうでもいい事なんだが、正当性って物を重視する奴らってのは少なからずいるものだからな。
「じゃあ諦めてくれ。俺は今、この国を治めるので手いっぱいだ」
あんまデカくなっても管理が難しくなるだけである。
それでなくとも、今現在ですらジャガリック達に頑張って貰ているのだ。
これ以上彼らに負担をかける訳にはいかない。
あ、因みに、デスロード討伐に関しては――
連戦で弱っていた所を、他国の援軍を利用して討伐した。・
と、周囲からは思われている。
何故か?
オルブス商会に頼んで、そういう噂を周囲に広めて貰ったからだ。
ポロロン王国ってのは、帝国程じゃないとは言え、順位づけしたら上から数えた方が確実に早いレベルの大国だ。
その国を一方的に蹂躙するとんでも兵器を、スパム王国の力だけで退けたってなると、あの国はとんでもない戦力を抱えているって認識が周囲に広まってしまう。
それを避けるため、オルブス商会に頼んだのだ。
軍事力特化の小国とか、警戒対象以外何物でもないからな。
ほら、某北の国とか、核持たせたらやばい感凄いだろ?
そんな感じだ。
まあ軍事力アピールしないので済むのは、うちに死者蘇生って強力な外交カードがあるからこそだが。
「本当に貴方は欲がないわね」
「人間、欲をかくと碌な事にならないもんさ」
何事も程々が一番である。
「まあいいわ。叫んだせいで喉が渇いたので、私はお茶を頂いてきます」
ヘンリエッタが執務室を出ていく。
「さて、五月蠅いのもいなくなった事だし……ポイントはどう活用するべきかねぇ?」
ボーンドラゴンとデスナイト達を倒し事で、俺の元には2,600万ポイントが入って来ている。
カッパーの覚醒分も合わせると2,700万ポイントである。
今までにない程の大量ポイントと言っていい。
国の発展に、上手く使っていきたい所である。
このスパム領を守るために送られて来た、援軍を蘇生させないのか?
結論から言うと、蘇生はさせない。
まあ悪いとは思うけど、先の事を考えると、彼らを蘇生させるのは大きな災いの元になりかねないからだ。
俺が死者蘇生できるのは、援軍を求める為に開示しているので、一部の国はもう知っている事だ。
それが周囲に広まるのも、それほど時間はかからないだろう。
だから隠す意味は、もうない。
――だが、それが大量蘇生となれば話は変わって来る。
死者蘇生が特別でなく、容易く、しかも大量に出来ると思われた際の弊害は大きい。
それ目当てで大量に人が押し寄せて来るのは目に見えているし、なんだったら、神の使いみたいに祭り上げられるのが目に見えている。
そうなると、エルロンド教と本格的な敵対関係になりかねない。
また、軍事目的などで俺を狙ってくる国が出て来る事も予想できた。
アンデッドではない、不死の軍団とか作れる訳だからな。
軍事寄りの国家からすれば、そうとう魅力的に映る事だろう。
あ、因みに死者蘇生に関しては、エルロンド教に『偉いさんが死んだら、無償かつ優先的に蘇生させますよ』的な交渉を持ち掛ける予定である。
彼らも人の子だからな。
死んでも生き返る事が出来るとなれば、きっと飛びついてくるはず。
「まずはこのカッパーをランクアップさせるべきです!」
花瓶の水が飛び出てきて、カッパーの頭部に代わる。
別の五月蠅いのが出て来てしまった。
「この偉大なるカッパーが、雑魚いメガ精霊に甘んじるなどあってはならない事ですから!今こそプチ精霊王復権の時!」
カッパーは、実はメガ精霊に戻っていた。
無理やり覚醒を終わらせた事と、ボーンドラゴン戦で僅かなパワーを絞り出した影響だ。
要は、無茶しすぎた代償って訳である。
……カッパーは何だかんだで活躍してくれたから、望みをかなえてやりたいんだが。
「駄目ですよ、カッパー。貴方の体は無茶した影響でボロボロなのですから。今下手にランクアップしたら、そのまま消滅しかねません」
ジャガリックがそう諭す。
そう、深刻なダメージがあるため、カッパーはランクアップさせられないのだ。
「もう一月も経つのに、まだダメなんですか?」
「ああ、駄目だ。今やったら90%ぐらいで死ぬって出てる」
10%にかけてとかありえないからな。
カッパーのランクアップは、彼女が完全に回復してからである。
因みに、ジャガリック、タニヤン、ポッポゥに関しても同じ状態だ。
彼らの場合は、あの時デスゲイザーの咆哮から俺を庇ったせいだが。
「ぐぬぬぬ……仕方ありませんね。その代わり、出来る様になったら最速でお願いしますよ」
「分かってるって」
まあとにかく……現状まだまだ問題は山積みだけど、とりあえずひと段落って所かな。
そういや、まだ一年経ってないんだよな。
俺が追放されてから。
追放された時は死ぬほど絶望してたけど、あれからまさか1年未満で国が滅びて。
しかも俺が国を興して化け物と対峙するなんて、あの時には夢にも思わなかったよな。
ほんと、波乱万丈だよ。
そう考えると、俺って案外主人公ポジだったのかもな。
ラスボスみたいなのと、最後は命を賭けて戦ってたわけだし。
全然ガラじゃないけど。
まあでもここからは、できればゆるゆるなのがいいな。
戦闘とかもうこりごりである。
この時の俺は考えもしなかった。
この後、この世界に戦乱が吹き荒れ、否応なしにスパム王国がその流れに巻き込まれる事を。
ほんと、世の中ままならない物である。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
ここで第一章・建国編は終了になりますので、一旦完結とさせていただきます。
第二章の予定は……まあその内って事で><
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