第148話 チェンジで
屋敷から少し離れた場所に防衛線を張り、俺達はデスロード達を迎え撃つ。
「あれがデスロードか……」
フェンリル騎乗中の俺は、目もすごくよくなる。
まだかなり距離はあるが、俺の目には真っすぐ此方へと向かってくるデスロード達が見えた。
「決して無理はなさらないでくだされ。今のエドワード殿なら、確かにデスロードとも戦えるじゃろう。だからと言って、それで勝てるという保証はないんじゃから」
フェンリルの横に浮くタニヤンが苦言を口にする。
もちろん、俺もそれは理解している。
基礎能力で近い状態になたっとは言え、戦闘技術では確実に相手の方が上だ。
それをエリクサーやポーションで何とかする訳だけど、上手く行く保証は全くない。
だけど、それでも何とかしなければならない。
カッパーを守るために。
なので無理はする。
とは言え、俺の死はこの場にいる者達全員の死に等しい。
だから……本当に、本当の本当にどうしようもなくなったその時は……
「分かってる。死なない様には気を付けるよ」
俺に出来るのは、そうならないよう全力を尽くすだけだ。
◇◆◇
『最悪、ワシらが盾になってでも守らねばな』
『もちろんです』
『ええ』
タニヤン達は周囲に、正確にはエドワードに聞かれないよう、精霊通しの念話でやり取りをする。
彼が聞けば、良い顔をしないのが分かっているからだ。
精霊達の見込みはほぼ五分五分だ。
仮に失敗しても、適切なタイミングで撤退出来たなら、エドワードが死ぬような事はないと考えはいた。
だがそれは適切に撤退出来た場合の話である。
カッパーを見捨てるという選択である以上、エドワードはきっとギリギリまで粘ろうとするはず。
そう考えた時、彼の死亡率は劇的に跳ね上がってしまう。
その事を理解している彼らは、最悪、自分達の存在と引き換えにしてでもエドワードを守るつもりだった。
そのしてその覚悟には、微塵も迷いがない。
『不思議な物じゃな。わしは人間を好かん。じゃがエドワード殿の為なら、死んでも悔いはないと思っておる』
『初めて会ったその時から、エドワード様に仕える為に生まれて来たのだと私は確信できました。そして今も、その考えに迷いはありません』
『私もだ。あの方の剣として生きていく。それだけが私の生き様だと確信している』
彼らは、エドワードが精霊神エルロンドの生まれ変わりである事を知らない。
だが、確かに感じているのだ。
自らの使命と、そして運命を。
だからこそ、彼らは全てエドワードの元に集ったのである。
『なんとしてでも、エドワード殿を守るんじゃ』
タニヤンの言葉に、ジャガリックとポッポゥが頷く。
その時――
「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
デスロードが吠えた。
まだかなり距離はあったが、その禍々しい咆哮はエドワード達の鼓膜を大きく振るわせる。
――それはまるで怒りの雄叫びの様であった。
「くっ、これは……」
「なんじゃ!?」
「様子が……」
前回対峙した際、デスロードが咆哮を発する様な事はなかった。
その想定外の行動に、その場にいた者達は動揺する。
「あの化け物の狙いが変わったぞ」
そんな中、クロウが召喚していたリッチが口を開く。
同じ不死者でありリッチには、他の死者の感情などを読み取る能力があった。
そしてその能力で察知する。
デスロードのターゲットが現在進化中のカッパーから、別に移った事を。
「奴らの狙いは……エドワード様だ」
「「「!?」」」
そのリッチの言葉に精霊達は戦慄する。
ターゲットがカッパーであるからこそ、駄目でも比較的高確率で逃げおおせる算段があったのだ。
だが、そのターゲットがエドワードに変わったのならば話は変わって来る。
間違いなくその死亡率は跳ね上がるだろう。
それどころか、自分達が命を盾にしても守り切れないかもしれない。
その事実に、精霊達は心の底から戦慄した。
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