第145話 生き方
「マイロード。ランクアップを行われたのですか?」
ジャガリックが尋ねて来る。
俺の独り言から、何をしたの察したのだろう。
「ああ。けど……どういう訳だか痛みが発生しなかったんだ」
「恐らくですが……私達の加護により、能力が上がっていた影響ではないかと。肉体が時間をかけてAランクに適応する事で、マイロードの肉体のランクアップの際の影響が最小で済んのだと思われます」
「なるほど」
純粋な自分の力ではないとは言え、精霊達の影響で俺の能力はA相当になっていたからな。
体がその状態に慣れてたって事なんだろう。
ついてるな。
痛みなくランクアップ出来るのなら、思う存分強化できるという物だ。
「エドワード殿……まさか自信を強化して、デスロードと戦うつもりではないでしょうな?」
「ああ、そのつもりだ」
どの程度上げられるかにもよるが、精霊の加護を受けている状態ならきっとSランク以上にだって上げられるはずだ。
SSランク位にまで上がれば、倒さなくても時間稼ぎ位なら……
「いけませんぞ!そんな事をして万一エドワード殿の身に何かあったらどうするのです!」
普段は穏やかなタニヤンが声を荒げる。
正直、ビックリした。
反対されそうな気はしていたが、ここまで激しくされるとは思っていなかったから。
「その通りです。マスター、どうかお考え直し下さい」
「マイロード。カッパーを守ろうという、そのお気持ちだけで十分です。どうか御身をお大事になさってください」
他二人も、俺を止めようとする。
「俺だって命は惜しいさ。けど……俺はカッパー達の世話になりっぱなしだ。その借りを踏みたおして、安全のために一人逃げだす様な真似はしたくない。それに何より……皆は俺にとってかけがえのない仲間だ。大事な仲間のために戦えない。そんな無様な生き方はしたくないんだよ」
死ぬのは怖い。
痛いのも嫌だ。
でも……恩人である仲間達を、当たり前の様に見捨てる生き方はしたくなかった。
だから、僅かでも可能性があるのなら……
ああでも、可能性が無いってなったらその時はすっぱり諦めるけどね。
何もできないのに一緒に死ぬのは、ただの心中と一緒だ。
流石にそれは違うって思うし、カッパーだってそんな事は絶対望まないだろうから。
「マイロード」
「マスター」
「エドワード殿」
三人の顔に、深い苦悩の色が浮かぶ。
だが、その口からはもう諫めの言葉は出てこない。
俺の意思を汲んでくれたのだろう。
「安心してくれ、もうダメだって思ったら……その時は迷わず逃げるさ。なんだかんだ言って、自分の命が一番大事だからな」
俺は辛そうにするジャガリック達に笑顔で告げる。
無茶はしないから安心してくれ、と。
「分かりました。マイロードが万全を尽くせるよう、このジャガリック……マイロードの覚悟の成就に身命をかけましょう」
「このポッポゥはマスターの騎士。命に代えても、マスターをお守りしてみせます」
「やれやれ……絶対に、自分の命を一番に考えてくだされよ」
「ああ、約束する」
一応、三人は納得してくれた様だ。
まあ彼らだって、カッパーを見捨てたくはなかったはずだろうからな。
「さて、問題は……」
能力がどこまで上がってくれるか、だ。
俺には戦闘技術もスキルもない。
なので、相手の強さを考えるとSSランクくらいまで上がって貰わないと話にならない訳だが……
俺はランクアップを発動させ、自身を強化する。
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