第142話 作戦
「わかっちゃいたが、やはり時間は殆ど稼げなかったか」
翌日砦をたった支援軍は、さらに翌日、スパム王国内でデスロード達と接触。
僅か数時間足らずで全滅してしまう。
エネルギーの吸収に時間がかかると考えても、三日後には敵は領主館に辿り着いてしまうだろう。
「エレメントゴーレムは既に配置済みです。マイロード」
支援軍にエレメントゴーレムはつけなかった。
それでなくとも、支援軍自他連携がとれているか怪しい状況だったからな。
そこにエレメントゴーレムまで合流させ、纏まりのない大きな群れにしてしまった場合、戦場がグダグダになりかねないからだ。
それなら二つに分けて戦った方が、効率よく時間を稼げるという物。
因みに、先にエレメントゴーレムをぶつけず支援軍をぶつけたのは、戦略上の問題である。
「上手く誘導できるといいんだがな……」
期待していたグローガン派閥があっさり降参してしまった事もあり、カッパーが目覚めるまでまだ2週間もある
ぶっちゃけ、うちの総力で当たっても2週間も稼ぐのは絶対無理だ。
そこで選択したのが、敵を誘導する戦略だ。
俺達はエレメントゴーレム部隊を使って、撤退しながらデスロード達を死の森深くへと誘導。
そしてそこで魔物達を使って時間を稼ぐ。
この戦略は支援軍ではまず無理だからな。
だから先に彼らを生贄としたのだ。
死の森への誘導は兎も角、魔物達をどうやってデスロードにけしかけるのか?
そのための薬品を用意してある。
超広範囲の魔物が群がって来る、強力な魔物の誘引剤を。
因みに、それを作ったのはタニヤンだ。
材料に俺の血が使われているのが若干疑問ではあるが、効果のほどは相当だと自信がある様だった。
「ふぉっふぉっふぉ。エドワード殿、奴らは我ら精霊を優先的に狙ってくるでしょうから、誘導自体は恐らく問題ないでしょう。わしに任せてくださればやり遂げて見せましょう」
「気を付けてくれ」
デスロードの誘導役はタニヤンが務める。
彼が精霊の中で最も早いからだ。
距離を開け過ぎると、デスロードの意識は他所に向く可能性がある。
そのため、囮役の精霊は付かず離れずで誘導する必要があった。
だからもっとも安全度が高まる、タニヤンがその役を務めるのだ。
「誘導はタニヤンさんに任せるとして……この作戦の肝はやっぱり、魔物がどの程度時間を稼いでくれるかよねぇ」
エクスが不安そうに口にする。
「そうだな。こればっかりは未知数だから」
森の奥まで行けば、Aランクモンスターがわんさか出て来る。
そいつらにデスロードの足止めを期待してる訳だが、それがどれだけ持つのかが未知数だった。
Aランクモンスターは糞強い。
糞強いが。
デスロードの強さはあまりにも桁違いだ。
Aランクモンスターがわんさか群がってなお、2週間と言う時間を稼ぐのは厳しいというのが予想だ。
その場合——
――俺はフェンリルに乗ってよその国に逃げる算段になっている。
いやもう、そうなったらギブアップよ。
まあ領地は荒らされまくるだろうけど、カッパーが目覚めてから改めて反撃させて貰う。
命あっての物種である。
あ、因みにボロンゴ村やモンハンシティの住民はアイバス子爵領に退避させてある。
蘇生できるとは言え、片っ端から蘇生させようとしたら膨大なポイントが必要になってしまうからな。
とてもではないが、大量蘇生なんて真似は出来ない。
なので、生き延びる可能性が高くなるように避難させたのである。
ポイントが無限に湧いて来るなら、支援軍の人達も蘇生させるんだがな……
まあ土台無理な話だ。
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