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第140話 竜騎士

「うおっ!?なんだ!?」


支援軍の到着を今か今かと待ちわびていたある日、急に屋敷の中庭から巨大な水柱が立ち上がった。

いやマジで驚いたよ。


「カッパー?いやでも、まだ予定日より早い……」


「どうやらフェンリルの様です」


「フェンリル?ああ、そういやあいつ脱皮してたっけか」


フェンリルは名前こそ北欧神話に出て来る犬っぽい名前だが、うちで飼ってるのは白竜……つまりドラゴンだ。


見た目は若干鳥よりで、全身から羽毛が生えている姿ではあるが、ドラゴンであるため爬虫類っぽく脱皮する生態をしていた。

で、その脱皮のため、カッパーのランクアップ後すぐ位から池に籠っていた訳だが、それがついに終わった様だ――ドラゴンの脱皮は、かなり時間がかかる。


「また一回りデカくなったな」


窓から外——上を見上げると、楽し気に屋敷の上を旋回するフェンリルの姿が見えた。

少し離れていても分かる程に、その姿は大きくなっていた。


コイツに突撃されたら即死できる自信がある。

いやまあ、今の俺は筋力とかAだから、辛うじて死なずに済む程度に抑えられるかもしれないが。


「この感じ……」


「どうやらフェンリルは、思った以上の成長を遂げたようですね」


飛び回っていたフェンリルが、中庭に着地する。

文字通り、『ズシン』と鈍い音を響かせて。


その姿を、ポッポゥとジャガリックが窓越しに目を細めて見つめる。


「そうなのか?」


「我々メガ精霊レベルと考えていただいて宜しいかと」


フェンリルの能力をランクアップで確認するとBランクだった。

ランク的にはどっこいって所だが、脱皮しただけで今のメガ精霊達と並ぶとか、流石ドラゴン。

さすどらである。


「戦力として期待できそうだな」


「ぷぎゃぎゃ!」


「うわっ!?」


窓際に顔を寄せたフェンリルが鳴いたかと思うと窓がバーンと勢いよく開き、見えない力で俺の体が思いっきり外に放り出されてしまう。

そしてその行先には、フェンリルの大きく開いた口が――


「ちょっ!?まっ!?食われ――」


視界が暗転する。

が、それは一瞬の事だ。


「あれ?」


気づいたら、俺はなんか椅子に座っていた。

両サイドには手のひらにフィットしそうなサイズの球体が浮いており、目の前はスクリーンの様な物が。

そしてそのスクリーンには、屋敷――開いた窓に、その前に立つジャガリックとポッポゥの姿が見えた。


なんかアニメとかで見るロボットのコックピットみたいな……


「んあ?俺、フェンリルの奴に飲み込まれたよな?なんでこんなロボットもののコックピットみたいなところに座ってるんだ?」


フェンリルに食われたらそこはコックピットでした。

夢でも見てるんだろうか?


「ぷぎゃ!」


なにとなしに球体に触れると、フェンリルの鳴き声が脳内で響いた。

そう、耳から入ってきた音ではなく脳内に、だ。

明らかに普通の音と違う伝達。

そしてそれと同時に、俺はフェンリルの鳴き声が理解できた。


『うごかしてうごかしてー』


という、フェンリルの甘えた様な問いかけ。


そして握った球体から、ここがフェンリルの中であり、見た通り操縦席であるという情報が伝わってきた。

動かし方も。


「ここはフェンリルの中って事か?夢にしても、生物のドラゴンに飲まれたら操縦席でしたとか流石に意味不明過ぎなんだが?」


「ぷぎゃ!」


『これは夢じゃないよー。それよりはやくうごかしてー』


フェンリルが夢ではないと言ってくる。

その主張じたい夢の一環という可能性もあるが、まあ疑っててもきりがない。

俺はフェンリルの頼み通り、両手で左右の球体を掴んでフェンリルを動かしてみる。


「ぷぎゃぎゃー」


フェンリルがいななき、体が勢いよく上昇していく事を感じる。

それに合わせ、モニターの映像も急激に変わる。


「おお」


モニターには空が広がり、その中をフェンリルが突き進む。


俺が右に舵を切ると右に。

左に切ると左に。

上昇下降も思いのままだ。


「本当に運転してるみたいだ」


「ぷぎゃ!」


『楽しい?』


「おう、最高だ」


フェンリルの問いに俺はそう答える。

何を隠そう、俺は子供の頃、スーパーロボットのパイロットになりたいという夢があったのだ。

ロボットでこそないが、こうやってそれっぽい操縦席に乗って運転するのは実に楽しい。


「ラノベとかで主人公が竜騎士になったりする展開の物があるけど、今の俺は正にそれだな。俺は今日から竜騎士にな——って、違うか」


俺の知る竜騎士は、竜の上に乗って戦うってのがお決まりだ。

コックピットに乗って動かすのは、流石に違う気がして仕方ない。


後、ほんとにこれは夢と現実どっちだ?


ファンタジー世界だから何でもありという思いと。

いやでもコックピットは流石に夢じゃね、という懐疑。


「まあどっちでもいいか!よし!フェンリルゴー!」


「ぷぎゃー!」


細かい事は気にせず今を楽しむことにしよう。

そう思い、俺はフェンリルを操り大空を翔る。


空を飛んだこと自体はあるが、やっぱ自分の意思でコントロールできた方が飛んでるって実感できていい。


「あ、でも……これがもし現実だったら、俺はどうやってフェンリルから降りるんだ?」


ふと、そんな考えが過った。

乗ったのは口からだから、降りるのも口からだろうとは思うが……まさか出るときはけつの穴から排出されたりしないだろうな?


それは何と言うか凄くいやんだが?


これは夢ではなく。

どうやって降りるのかも後々分かる事になる訳だが。

どこから降りたかは……嫌な予感は当たる、とだけ言っておこう。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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