第139話 大ピンチ
スパム男爵領改め、スパム王国——名前は考えるのが面倒なのでそのままにした――に急報が入ってきた。
それはグローガンが自害した事と、それに伴い、ゴルダルン侯爵家やその派閥系統の貴族連中が帝国に降伏したという物である。
グローガンの自殺理由は、絶望的な状況で俺が裏切って国を捨てたため絶望して自害したとの事。
上二人ほどではなかったとはいえ、あいつも俺の事を毛嫌いしていた。
無能と。
そんな相手が自分から離れたからといって、自殺するとは到底思えない。
なのでまあ、ゴルダン侯爵家に抹殺されたのだろうと思う。
帝国に投降する、合理的な理由を作るために。
まあ、孫を売って帝国に下ったなんてレッテルを避けたかっただろうな。
だから俺に責任を押し付けた。
ふざけた話である。
――モンハンシティ・スパム家分館。
「久しぶりね、エドワード」
そしてその翌日、俺の元にある人物が来訪した。
それはボロボロのなりをしたポロロン王国第二王女、ヘンリエッタである。
「お久しぶりです、へンリエッタ。大変苦労されたとか?」
彼女は首都崩壊後、生家であるヘーゼル伯爵家に避難していた。
が、グローガンが死に、ゴルダン侯爵家が帝国に降伏した事で伯爵家に抹殺されそうになって――侯爵家と同じ様な事をしようとした――俺の所に逃げ込んできたという訳である。
「ええ。まさかおじいさまが私の事を……」
社交辞令として労りの声をかけたら、ヘンリエッタがその場で泣き出してしまう。
俺の姉に対する評価は、まあ
これが上三人なら、社交辞令でも労りの声何てかけなかっただろう――もう王様なので、気を使う必要なし。
あいつら大っ嫌いだったからな。
まあその事からも分かる通り、俺は二女ヘンリエッタに悪い感情はもっていなかった。
王家時代、辛く当たられた事が無いからだ。
とは言え、辛く当たられなかっただけで、明確に避けられていはしたので、特に親愛の感情も持ち合わせていないが。
「お疲れでしょう。どうぞゆっくりお休みください。」
相当参っている様なので、俺は客室でゆっくり休む様に俺は進める。
一応血は繋がってる相手だし、悪感情もそれ程ないからな。
追い出したりはしないさ。
「にしても、俺の所に逃げ込んできてもなぁ……」
他に頼る所が無くて俺の所に来たんだろうが……正直、スパム王国も大ピンチだった。
もう少し粘ってくれると思っていたグローガンの勢力が、早々に白旗を上げてしまったからだ。
早ければもう2週間とかからず、帝国がこの辺りまで攻め込んでくるはずである。
そしてカッパーの目覚めはまだひと月以上先……
「救援が間に合ってくれそうなのがせめてもの救いか……」
支援を要請した食いの内、5国から速やかに援軍を送ると返答を貰っている。
おそらく、救援はぎりぎり間に合うだろう。
とはいえ、である。
「5国も申し出を受けてくれたとは言え、急遽出す兵力だし……2週間以上稼げるほどの戦力は送られてこないよな」
俺はすぐ横のジャガリックに尋ねた。
「難しいかと」
そして彼から返って来たのは、予想通りの返事である。
「普通の人間の兵士たちに、あれは止められんでしょうな。まあ……わしらが上手く立ち回って、なんとかギリギリといった所かのう」
「頼むよ」
こうなると、精霊やタゴル達だけが頼りだ。
「とは言え、無理はしないでくれ。人間は最悪生き返す事が出来るけど、精霊はそういう訳にも行かないんだからな」
精霊は生命というより、自然に近い存在だ。
そのため死んでしまうと、蘇生は俺の能力でも出来ない――ジャガリック曰く。
「ご安心を。このポッポゥが、必ずやマスターの敵を打ち砕いて見せましょう!」
うん、ポッポゥは俺の言ってることがちゃんと伝わっていない。
って事がその返事から良く伝わって来る。
基本的に精霊は男性タイプが知能派で、女性タイプは若干オツムに難がある感じだ。
「やれやれ……」
「ご安心くだされ、エドワード殿。ポッポゥが無茶せんよう、わしがちゃんと見ておきますので」
「頼むよ、タニヤン」
これまで俺のために頑張って来てくれた精霊達が死んでしまうとか、それだけは絶対に避けないと。
今後の生活設計云々以前に、彼らには生きていて欲しいから。
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