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第137話 筋書き

「なっ!?エドワードが独立だと!?」


寝耳に水の報告に、グローガンが目をむく。

グローガンはポロロン王国第三王子であり、現在は母方の生家であるゴルダルン侯爵家に身を置いている。


「恐らく……ポロロン王国から独立して別の国になれば、帝国に見逃して貰えると思ったのだろうな。愚かな話だ」


報告を一緒に聞いていたグローガンの祖父、ゴルダルン侯爵がエドワードの行動を愚かだと馬鹿にする。


「ちっ、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、まさかそこまで底抜けの馬鹿だったとはな。王家の人間が作った国を、帝国が放っておくわけないだろうに。きっとあのバカは、例のポーションだけで世の中渡っていけると考えてるに違いない」


そんな事、エドワード男爵達も百も承知である。

彼らの選択は帝国に勝つための行動だった訳だが、その真意を測てる者はこの場にはいない。


まあそれも仕方ない事だろう。

スパム男爵は無能すぎて王家から追い出されているのだ。

そんな男爵の治める辺境に、ポーション以外にもとんでもない戦力と、死者蘇生という切り札があるなど誰が想像できようか?


「まったく、この国一大事に……」


「まあ考えても仕方なかろう。ポーションの徴収自体は済んでいるのだ。どうせ戦力にならんのだから、捨て置けばよい」


対帝国戦用に、グローガンはエドワードにスパムポーションの差出を命じており、それは既に侯爵家に送られていた。

男爵領の戦力をしらない侯爵家からすれば、それさえ手に入れば男爵家の動きを気にする必要などないと考えるのも同然の事である。


「そうですね。今は帝国を何とかする事に集中しましょう。奴らに目にもの見せてやらないと」


「うむ、その通りだ」


グローガンは打倒帝国に燃えていた。

国を征服された王族の末路を良く知っているからだ。

だから必死だった。


だが――そんな孫の姿を見る、祖父であるゴルダルン侯爵の目は冷ややかな物だ。


侯爵家がグローガンを保護し、旗印に戦っているのは王子が自身の血筋だからだ。

だが、それは勝機があってこそ。

そう、勝ちの芽が無ければ、いくら孫であろうと侯爵は第三王子を受け入れなかっただろう。


――そう、当初は侯爵側にも勝算があったのだ。


侯爵家は、他国からの支援を期待していた。

帝国は邪悪な力で侵略戦争を進めている。

そのため、大々的に他国からの支援を受入れる合理的な大義名分があったのだ。


そして侯爵家はそれをあてにした。


だが、現実は甘くない。

帝国の侵略は想像以上に苛烈で、現状、他国からの支援が来るまで侯爵家はとても持ちそうになかった。


このままでは、侯爵家すらも第三王子と共倒れになってしまう。

そのため、既に侯爵は孫のグローガンを切り捨てる算段を既に腹の中で立てていた。


直ぐにそれを実行しないのは、名分もなしに孫を切り捨てれば、たとえ家門を存続させる事が出来ても、侯爵家は大きな非難を受ける事になるためだ。


だが、今回の一件でゴルダルン侯爵はある筋書きを思いつく。


『その場では強がって見せてはいたが、追い込まれた状況で実の弟にまで裏切られたショックで自害した』


という筋書きを。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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