第129話 進言
「頼んだ」
「お任せください。一週間以内に果たして見せます」
いくつか申請する国を選び、それらの国への救援要請はオルブス商会に頼む事にする。
外部接触のための伝手を、大商会である彼らは持っているからだ。
うってつけの役目、というか彼ら以外にその役目を任せられる相手はいないと言っていいだろう。
「グローガンにも信書を送らないとな」
グローガンは第三王子。
つまり俺の兄だ。
国王が死に、第一第二王子も既にいないので、継承順位的に奴が次期国王という事になる――直系の男子は4人で、俺は追放済みなので。
まあ暫定ではあるが。
他国の援軍を受け入れようとするなら、暫定国王のグローガンに話を通しておく必要がある。
「それはお勧め出来ませんなぁ」
「ん?なんでだ?」
タニヤンが少し渋い顔をして、待ったをかけて来る。
「援軍の事を知らせるという事は、第三王子に此方の手札を晒すに等しいですからな。最悪……死者蘇生を持つエドワード殿を帝国に引き渡して、保身に走る可能性も考えんとなりますまい」
「なるほど……」
死者蘇生なんてものは、どこも欲しがるものだ。
それが帝国であっても。
そして王国側は、絶望的な状況下にある。
グローガンが保身のために俺を売り飛ばす可能性は、確かに高そうだ。
「けど……他国に援軍の要請をするなら、結局グローガンの耳に入ってしまうんじゃないか?」
「短期間隠せれば十分ですぞ。どうせ第三王子の勢力は、長くはもちませんでしょうからな」
ばっさり切り捨てる辛辣な物言いである。
が、グローガンや侯爵家を時間稼ぎ程度と考えてる時点で、俺もまあ似た様な物ではあるが。
「エドワード様。一つ提案がございます。宜しいでしょうか?」
「提案?なにかいい考えでもあるのか?」
「グローガン王子に連絡を取らず今のまま支援を求めた場合、他国の援軍は最悪、周囲やポロロン王国に侵略と捉らえられかねません」
「ああ……そうなるか。まあそうなるよな」
そりゃ国のトップを通さない訳だからな。
しかもこんな状態だ。
周囲から見れば、援軍ではなく便乗侵略にしか見えないだろう。
「そうなると、援軍を渋る国も増えるかと思われます。そこで――」
ジャガリックが言葉をため、居住まいを正す。
「わたくしジャガリックは、このスパム領の独立を進言いたします」
「…………………………え?」
ジャガリックの言っている意味が分からず思わず固まってしまう。
きっと今の俺の顔は、凄く間抜けな表情になっているはず。
「えーっと、冗談……だよな」
冗談か何かと思い聞きなおすが――
「いえ、わたくしなりに考え抜いた上での進言になります。どうかご一考ください。マイロード」
――真面目な顔でそう返されてしまう。
どうやら彼は本気の様である。
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