第124話 溜まった
「ついにこのカッパーが進化する時がやって来たようですね!」
エクスとクロウの組。
そしてタゴル(ナタン)、アリン(ユミル)、カンカン(ソウガ)にエレメントゴーレムの補助——主に後衛のアリンのガード用――を付けた二組の死の森の狩により、一月ほどで目標の100万ポイントへとたどり着く事が出来た。
当然最初に進化させるのは、死の力に有利を取れる水属性のカッパーだ。
あ、因みに、アリンの死の森の狩りへの参加は案外簡単だった。
カンカンと二人にするぐらいなら、タゴルが側で守りながら戦った方がましだと判断したためだ――そう考えるよう吹き込んだのはジャガリック。
「私がプチ精霊王になった暁にはみんなちゃんと敬語を使う様に!」
「やれやれ、まったくお主は……」
カッパーのおバカな発言にタニヤンが溜息を吐いた。
まあ気持ちは分かる。
「カッパー。敬語とは敬うべきに相応しい相手に使う者ですよ。もし他の精霊から敬われたいのなら、力ではなく行動で示さなければ」
「ぬ……いいでしょう。このカッパーがざっぱざっぱデスモンスター共をなぎ倒してあげますんで、その雄姿を目に焼き付け尊敬しなさい!」
全然伝わってなさそう。
まあ馬の耳に念仏なので、こいつには何を行っても無駄だろうからスルーしとくけど。
「それよりも……私が覚醒している間に、間違ってもやられたりはしないで下さいよ」
それまでの軽い感じとは違い、カッパーが真剣な表情になる。
デスナイトの更なる追加も相まって、戦争は王国側が一方的にやられている形だった。
首都を落とされるのも時間の問題と言われる程の超劣勢。
もうなんなら、デスロードやデスナイトにチャージタイムがあるお陰で進軍がそこまで猛烈になっていないため、まだ落とされていないだけの状態と言っていい。
オルブス夫妻の見通しでは、何らかの手立てがなければ、王宮が落とされるのに後一月もかからないだろうとの事。
夫妻は軍人ではないので畑違いではあるが、ほぼ全勝状態の帝国側がどの程度で首都を落とすかを予想するぐらいは難しくはないので、彼らの予想通りになる可能性は高いだろう。
それに対して、カッパーの覚醒には三か月かかる見込みになっている。
間に合わないんじゃ?
そう、見通し通りなら間に合わない可能性が高い。
王家を下して、うちの領地に攻撃を仕掛けて来るまでに、三か月とかからないだろうから。
けどまあ、明るい要素が全くない訳ではなかった。
エルロンド教がどうやら動いている様なのだ。
デスナイトなどの死の力を忌避する教会は、事実を知ってグラント帝国に即刻その力の使用をやめる様に勧告している。
その勧告で帝国がデス系統の魔物を使うのを辞めれば万々歳。
仮に無視したとしても、そうなれば教会、ひいてはエルロンド教を国教に敷いている国と帝国は戦う事になるはず。
多方面の戦争になれば、そのぶんポロロン王国に対する侵攻は弱まるだろう。
まあそれでも、三か月ってのは微妙なんだけどな。
教会やそのシンパ国がどの程度の速度で動いてくれるか不明だし。
なのでカッパーが『私が覚醒している間に、間違ってもやられたりはしないで下さいよ』と言ったのは、先行き不透明な状態を心配しての発言である。
「ミンチに土に還ったフォカパッチョなんて見たくありませんから」
「心配するな。俺は自分が一番かわいいから、やばそうだったら即逃げるから」
「そうだといいんですけどね。フォカパッチョは甘いですから。本当に危なくなったら尻尾巻いて逃げるんですよ?他の人達は死んでも、最悪、ポイントと肉片さえあれば復活させられるんですから」
俺が生きてさえいれば、誰かが死んでも生き返らせる事が出来る。
なので、周囲を犠牲にしても俺さえ生きていれば再起は可能だ。
まあ、死骸も残さずってなると蘇生は無理だが……
「分かってるよ」
「フェンリル、フォカパッチョの事宜しくお願いしますよ」
「ギャオー!」
フェンリルがカッパーの言葉に答える様に雄叫びを上げる。
図体はかなり大きく、体格だけならもはや成体レベルになっていた。
まあ力の方はまだまだ成長するらしいが。
因みに、今の強さはリッチぐらいだそうだ。
「じゃあランクアップさせるぞ」
俺はカッパーをA-まで一気にランクアップさせる。
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