第123話 がんばってくれ!
「二人ともお疲れ様」
死の森の狩へと行っていたエクスとクロウが返って来た。
その狩りの成果は素晴らしく、ポイントは爆増、それに加え、回収され高ランクモンスターの素材もたんまりである。
これを売れば結構な資金になる事だろう。
「素材は一旦保存しておいて、オルブス商会に引き取ってもらうとしよう」
因みに、素材はスピランスが空間系の魔法を扱えるため、そこに死体を丸々詰め込む形で持って帰ってきている。
その収納空間は死の力が充満しているらしく、腐敗なんかも全くしないとの事。
「ジャガリックの分身から話は聞いていると思うが、悪いが数日休んだらまた狩に行ってもらう事になる」
デスロード。
その強さは一国を容易く滅ぼすレベルだと、ジャガリック達から説明されている。
そしてそのデスロードは自然発生した物などではなく、どうやら帝国が戦力として保有している物だそうだ。
つまり、このまま行けば王国は戦争に敗れる可能性が極めて高いという訳である。
まったく、とんでもない化け物を投入してくれた物だ。
帝国は。
敗戦濃厚な状況で俺の取れる選択肢は二つ。
王国に全力で協力してデスロードを討伐する、か。
領地を捨てて逃げだす、である。
因みに、帝国に投降するという選択肢はない。
追放されたとはいえ、俺は王族の血を引いているからな。
よくて生涯監視付きの幽閉って所だからな。
それも良くてであって、たぶん高確率で処刑――表立ってではなく、病死扱い的な――される事になる。
死ぬと分かってて誰が投降するかっての。
で、現在俺の生存率が最も高いのが、領地を捨てて逃げる、な訳だが……
メガ精霊4人に保護して貰えれば、知らない土地でひっそりと暮らしていくのは簡単だそうだ。
ジャガリック達からもそっちを進められた訳だが、流石に今の状態の領地を放り出して逃げるってのは気が進まない。
無責任にもほどがあるからな。
貴族王族の自覚なんて微塵もない。
とはいえ、そんな無責任な選択肢を迷わず選べる程、性格は終わっていないつもりである。
まあ本当にやばくなったら全部捨てて逃げるけど……そこはしょうがないよな?誰だって自分の命が一番かわいいんだから。
うん、しょうがない。
で、戦うと決めた訳だが……
相手がデスロードだけならともかく、デスナイトも二体ほどお供にいるらしい。
こいつら、どうやらメガ精霊級の力を持ってるようで。
更にデスナイト辺りを――デスロードはそもそも複数同時には顕現出来ないそうなのでその点は安心――追加される可能性も考慮すると、メガ精霊4人や、うちのエレメントゴーレムが戦争に参加しても勝ち目は極めて薄いとの事。
そこで出たのが――ポイント100万以上稼いでメガ精霊を進化させようって案である。
どうやらAランクまで上げれば、デスロードともやり合える力が手に入るらしい。
そしてその最も手っ取り早い方法が狩なので、今回返って来たエクス達は元より、タゴル達にもジャンジャンバリバリ狩を行って貰う事となった訳である。
100万ポイントなら、王家に戻ったら手に入るからそっちを狙ってみれば?
無理。
王家ってのはメンツを重視する物だからな。
問題をおこして一度追放した俺を、そう簡単に王家に復帰させる様な事はない。
俺に仕えているメガ精霊がすんごく強いアピールしても、じゃあその4体を戦場にだせやおら、で話が終わるのは目に見えている。
「おかませください。拾って頂いた恩を返すべく、このクロウ、粉骨砕身の思いで働かせていただきます」
「この国の危機ですもの。騎士として、一人の女として全力を尽くさせていただきますわ」
「我が求めるのは恐怖と死のみ!哀れな魔物どもを供物をささげたいというのならば――あいたぁっ!?あ、すいません調子に乗ってました!カッパー様どうかお許しを!?ぎゃあああ!!」
スピランスが心臓部分をカッパーの分身(頭部)に齧られ悲鳴をあげているが、まあそれは置いておこう。
とにかくみんなやる気の様で助かる。
「頑張ってくれ。お前たちの働きに、この国の未来がかかっているんだからな」
因みに……俺は何もしない。
ランクアップ以外は。
まあそこはしょうがないよね。
それしか能がないんだから。
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