第121話 重要なのは
「がははははは!死ね死ね死ね死ね死ね!!」
ここは死の森。
そしてハイテンションで集めた魔物を攻撃魔法で狩っているのが、私の召喚したリッチー――スピランスだ。
現在私はエクスと共に、死の森で魔物狩りをしていた。
私の仕えるエドワード男爵様には特殊なスキルがあり、そのスキルを使用するためのエネルギー、ポイントなるものをためる為に。
「追加よ!」
殲滅が終わったタイミングで、エクスと、私のアンデッドたちが周囲から集めて来た魔物を引っ張って来た。
そして――
「死の力の前にひれ伏すがいい!」
――それらの魔物を、スピランスが超火力で殲滅していく。
私も攻撃魔法は使えるが、攻撃には参加しない
リッチー以外の攻撃手段で魔物を倒してしまうと、エドワード様にポイントが入らないためだ。
一応、エクスが倒した場合もポイントは入るみたいだけど、スピランスの攻撃は広範囲型で細かいコントロールが利きづらいので、巻き込まれることを考えて彼女は攻撃へと参加しない事になっている。
「ふはははは!」
魔物を全て倒し、スピランスが高らかに笑う。
少し前まで、私はコイツを一切制御できなかった。
現在問題なく扱えるのは、全てカッパーさんのお陰である。
彼女が『フォカパッチョに忠誠を誓って、クロウのいう事をちゃんと聞くなら消滅させずに済ませてあげましょう』という脅しをかけてくれたから。
そう、スピランスはカッパーさんに一撃で負けて以来、彼女には頭が上がらなくなっていたのだ。
「やっぱリッチは凄いわねぇ。Aランクの魔物も混ざってたのに、こんなにあっさり倒し切っちゃうんだもの」
エクスがスピランスの強さに感嘆を漏らす。
死の森は外周部分の魔物は弱く、奥に行けば行くほど強い魔物が出て来る。
今私達がいる場所は、腕利きの冒険者でも中々踏み込めない奥まった場所だ。
なので出て来るのはBランク以上で、中にはちらほらAランクが混ざって来る。
そんな場所で、しかも周囲の敵を他のアンデッドやエクスに集めて貰っているので、その危険度はちょっとした軍隊で対処しなければならないレベルと言っていい。
だがスピランスはそんな事など関係ないとばかりに敵を殲滅してしまう。
まさに群を抜いた強さだ。
まあ、それでもカッパーさんには一撃でやられちゃう訳だけど。
「ちょっと一息入れましょうか」
「そうですね。場所を移しましょう」
「ふん。この程度で休憩とは、必滅者は本当に虚弱だな」
「だって女の子ですものー」
私達は道すがら魔物を倒しながら場所を移動する。
ランクが一段低い場所に。
この森の魔物は、倒しても倒しても湧いて来る。
文字通り、どこかから降って湧いてるんじゃないかと思う位に。
そのため、強い魔物のテリトリーでは落ち着いて休憩をとる事も出来ない。
だから場所を移したのだ。
「どうぞ」
ジャガリックさんの分身であるゴーレムが、素早く御座を敷いてお茶の用意をしてくれる。
基本的に岩の形になって転がってついて来るだけだが、こういった休憩の際は食事なんかの世話をしてくれるので凄く重宝していた。
「ありがとうございます」
「頂きます」
ジャガリックさんの入れてくれたお茶は非常においしい。
しかも飲むと凄く元気になる。
なんでも、精霊草をつかったお茶なんだそうで。
「ジャガリックよ。カッパー様とエドワード様に、このスピランスが大活躍している旨をちゃんと伝えてくれ」
「ご安心ください。貴方の働きに、エドワード様は大変お喜びですので。もちろん、おふた方の献身にもです」
「うふふ。エドワード様にうーんと喜んでもらうために、もっともっと頑張らないとね」
「そうですね」
男爵家に仕えたわりに、やってる事は冒険者時代とあまり変わらない。
だが、仕事の内容などはどうでもいいのだ。
私を信頼してくれた方の下で働ける以上の幸運など無いのだから。
この後も、私はエクス達と共に魔物狩りに勤しむのだった。
エドワード様の役に立つために。
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