第115話 粛清
執務室で書類を目を通しながら俺は呟く。
今見ているのはモンハンシティのデータだ。
「戦争が結構早く終わったから、思ったほど人口の流入が無かったな」
戦争特需……と言うとあれだけど、各地の税金が上がる事でスパム領に人が流れて来る事を期待していた訳だが、思ったより短期で終わりそうなので、期待していた程にはならなかった。
「まあいいんだけど」
戦争が終わればポーションの上納がなくなるし、その分金が入って来るので、それを上手く使って発展させればいい。
と言うか、そもそも急速発展させなきゃならない理由もないしな。
俺は別に自分を放り出した王家にざまぁしたいわけじゃないから、のんびりやっていけばいいさ。
どう考えても放逐は妥当だったし。
「どうでしょうな。終戦と考えるのは少し早いですぞ?」
「ん?」
俺の独り言に応えるかの様に、タニヤンが姿を現す。
「どういう意味だ?」
「実は分身の一体を、帝国に潜入させましてな」
「え?そんな事してたのか?」
初耳なんだが?
「ふぉっふぉっふぉ。敵を騙すにはまずは味方からと言いましょう」
「なんか違う気もするけど……まあそれは置いておいて、終戦って考えるのが早いってどういう事だ」
「どうやらグライム皇帝が、大規模な粛清を行った様でしてな」
「粛清……」
粛清と言う言葉に俺は眉根を顰める。
戦争を起こした皇帝が責任を追及されるのならともかく、その逆となると……
「粛清されたのは、戦争に反対していた……いわゆる反戦派の者達じゃ」
「皇帝はまだ諦めてないって事か……」
でなきゃ粛清とかはしないだろうし。
「反戦派を粛清したという事は……大規模な侵攻作戦を仕掛けてくる可能性がありますね」
「うむ、そうじゃな」
ジャガリックの言葉にタニヤンが頷く。
一度押し負けたのに、残された時間の少ない皇帝がちまちまと仕掛けて来るとは思えないので、ジャガリックの言葉通りになる可能性は高いだろう。
「となると、しばらくスパムポーションは送り続ける事になりそうだな」
前より大戦力を送り込まれるのなら、最悪、用意したエレンメントゴーレムの投入もあり得るな。
まあしばらくは様子見だが……今度もケイレスが頑張って帝国軍を撃退しきってくれる事を祈ろう。
戦争になんて、進んで関わりたくないし。
「マスターご安心ください。たとえ帝国がこのスパム領にまで攻め込んでこようとも、このポッポゥの剣で全て蹴散らして御覧に入れますので」
ポッポゥがどや顔で自身の胸を叩く。
国の南端にあるスパム領が帝国軍に攻め込まれる様な状況だと、もうこの国は完全に負けてる訳だが……
なのでその時点で考えるべきは抵抗ではなく、今後の身の振り方である。
「ああ、うん……頼りにしてるよ」
一応、心意気には感謝の言葉を返しておいた。
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