第108話 ネクロマンサー⑤
「今回は陰キャクロウの顔を立ててジャッジメントしませんでしたが、これからは骨は骨らしく身の程を弁える様に」
カッパーが転がってる赤い球――たぶんリッチーの本体――に足を置き脅しをかけた。
「も、もちろんでございます。このスピランス。メガ精霊カッパー様の優しき恩情に感謝し、その忠誠を捧げる事をここに誓います」
「いやお前がスピランスなのかよ!」
このリッチーがスピランスなのかよ。
つか、なんでこいつが使徒なんだ。
召喚主のクロウは使徒になってないってのに。
しかも信頼度100%になってるし。
意味が分からん。
「ただの人間風情が、不死者の頂点であるこのスピランスの名を気安く呼ぶとは……死にたいのか?ああん――んぎゃあ!?いだいいだいいだいいだ!カッパー様!ちょ!足に水の力を込めて踏まれたらが砕けてしまいます!!」
赤い球体にひびが入り、リッチが悲鳴を上げる。
どうやらカッパーが締めあげている様だ。
「生意気な発言は許しません。いいですか、フォカパッチョは私の……うーん、なんでしょう。うまく説明できませんね。まあとにかく同居人ですから、私と思って敬いへりくだりなさい」
「は、はひぃぃぃ!肝に銘じます!!ですから力を抜いてくださいぃぃ」
不死者の頂点にしてはビックリするほど情けない姿である。
ちらりとクロウの方を見ると、あんぐりと口を開けてその様を凝視していた。
以下にも危険っぽく申告したリッチが、ワンパンでやられてこの様だからな。
そりゃそうなるわな。
「驚きねぇ。メガ精霊になって凄く強くなったって聞いてたけど、まさかここまでなんて」
「どっちが化け物か分かったもんじゃねぇな」
「ここまで差があると、私達ってひょっとしていらないんじゃないかって思えてきちゃうわぁ。例の軍団の事もあるし」
「そんな事はありませんよ。領が発展していけば担う仕事も増え、どうしても手が回らない部分も出てきますので。お二人にマイロードの護衛騎士として勤めていただければ、我々も安心して他に気を回せるという物です」
「ジャガリックの言う通りだ。二人には、いや、クロウも含めて3人には期待してる」
メガ精霊達には負担をかけているしな。
負担の軽減を考えると人手は絶対に必要だ。
それも信頼できる相手ならなお良しである。
ああでも、クロウって使徒じゃないんだよな。
何故かリッチの方が使徒になってるし……謎過ぎる。
まあ最強のアンデッドが使徒扱いなら、十分信頼できるか。
因みに、タゴルの信頼度は現在90%の大台だ。
今の一言でもちょろっと上がったし。
「エドワード様……このエクス、誠心誠意お仕えさせていただきますわ」
「まあ、エドワード様には色々と借りがありますから。俺も出来る限りの事はします」
今のでちょろっとタゴルの信頼度が上がったな。
ちょろいちょろい。
この程度で上がっているのだから、もはやデレ期と言っていいだろう。
まあ男のデレとか全然嬉しくないけど。
そういやデレって言えば、異世へのチート界転生ってハーレムとセットなイメージがあるんだけど……何故俺の周りにはさすさすしてくれる美少女がいないのか?
解せん。
まあ別にいなくても支障はないけど。
「リッチはその……あれでしたが。私もお役に立てるよう全力を尽くしますので、どうかよろしくお願いします」
カッパーが『ドライブシュート!』と叫んでリッチを蹴り飛ばし、それをフェンリルが『ぷぎゃぷぎゃ』追いかけて拾ってくる玉遊びを始める。
クロウはその様子に苦悩の表情を浮かべながら、俺に頭を下げた。
「相性やメガ精霊の力の問題だから気にしなくていいさ。それにまだクロウには伸びしろがある。期待しているぞ」
そう、伸びしろがある。
激痛と引き換えの伸びしろが。
自信がへし折れて少々可哀そうではあるが、むしろ自信満々でいられるより少しへこんでいる状態の方がお勧めしやすいので、ちょうどいいまである。
まあ結果オーライだ。
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