第105話 ネクロマンサー②
「前衛のスケルトンに背後から物理攻撃の効きにくいレイスってのが、クロウの基本戦術って事か」
強そうではある。
強そうではあるが。
やはりA最上位かと言われると、ちょっと『んん?』ってなる。
数の暴力とは言うが、ぶっちゃけ、これぐらいならスキルを使ったエクスならあっさり勝てそうに思えてしかたない。
ああ、因みにエクスのスキルは蛮族化という変身スキルだ。
今もゴツイ体をしているが、スキルを使うと二回りほど縦にも横にも体が大きくなり、肌も緑色の……まあモンスターっぽい見た目になる。
効果は見た目の変化通り身体能力の大幅強化で、変身に制限時間はあるし、変身後の消耗も大きいらしいが、相当なパワーップが見込めるスキルとなっている。
本人は見た目が変わる事を嫌って使いたがらないけど、以前一度見せて貰った時の強さは俺から見たら完全に化け物レベルだったからな。
それでもSランクには及ばないってんだから、Sランクの壁は相当ぶ厚い。
そう考えると、この目の前にいる軍団がその域に肉薄している様には到底思えないんだよなぁ。
「あらやだ。エドワード様。本番はここからですよぉ」
エクスが片手を口元に近付け、大阪のおばさんみたいにもう片方の手の手首を顔の横でクイッと縦に振る。
「ここからが本番って事は……もっと強いのが召喚できるって事か?」
「うふふ、もちろんです。さあ、クロウちゃんエドワード様に見ていただきましょ」
どうやらまだ全力ではない様だ。
次は果たして何が出て来るのだろうか。
「分かりました。では……いでよ!」
クロウが三度頭上に手を掲げる。
今度の魔法陣は三つ。
だがそのサイズは、今までの物とは比較にならないぐらい大きい。
そしてその大きな魔法陣から出てきたのは、巨大な人型のアンデッドだった。
「でっか」
頭上からその三体が着地すると、『ドォン!』と言う音と共に地面が軽く揺れる。
サイズは体長3メートルぐらいはありそうだ。
そしてその体は筋肉まみれのマッチョで、全身至る所に継接ぎのような跡が走っている。
ぱっとみ、フランケンシュタインだな。
まあこめかみに釘みたいなのは刺さってないし、顏も人間よりかは獣に近い感じだが。
口元が少々突き出てて、牙とかめっちゃ生えてるし。
「これがクロウちゃんのフェイバリット。殺戮死鬼ちゃんよ」
「スラッガーデビル……圧力が凄いな」
俺は強さを感じたりとかは一切できないが、こいつが強い事は分かる。
この見た目で弱かったら詐欺だしな。
あと、よくこの化け物をちゃん付けで呼べるな。
エクスは。
「こいつはかなり強いな」
タゴルがスラッガーデビルを見て、眉根を顰める。
「今のタゴルちゃんでも、一対一が限界でしょうね」
一匹一匹タゴルレベルかよ……
因みに、今のタゴルはAランク並みの強さを持っている――エクス曰く。
そんな奴を三匹も使役できるのだ。
クロウの強さは本物と見て間違いないだろう。
「あたしもエドワード様に力を貰う前だったら、一対一が限度だったわね。まあ今なら、スキル込みで三匹を何と相手できるかもってて感じかしら」
「それプラス、スケルトンにレイス部隊か。限りなくSランクに近いって評価は伊達じゃない訳だな」
「しかも、本人の魔法の腕も一級品ですし。ネクロマンサーへの偏見が無かったら、いつか絶対Sランクになってたはずですわ」
エクスの時もいい拾い物だったが、クロウはそれに輪をかけた辺りの様だ。
「あの……」
「ん?どかしたか?」
クロウが何か言いたげに声をかけて来た。
「実は他にもう一匹呼び出せるのですが……」
「あら、そうなの?」
どうやらエクスすら把握していない追加の召喚が出来る様だ。
「ただ正確に難があって酷く扱いずらく、人前では呼び出せないアンデッドでして……」
クロウの歯切れが悪いのは、その召喚で呼び出すアンデッドの性格に難があるからのようだが――
「性格に難って……知能があるって事か?」
「はい。かなり傲慢な性格をしていまして、ここで呼び出すとエドワード様に無礼を働いたり……最悪、攻撃を仕掛けるかもしれませんので呼び出す事は出来ませんが」
勝手に誰かを攻撃するとか、厄介極まりないない。
そりゃそんなの俺の目の前で呼び出されるのは迷惑だ。
「そのアンデッドは強いのか?」
「はい。スラッガーデビルよりも上位の、リッチというアンデッドです」
おいおい、リッチってかなり強いアンデッドじゃねぇか。
クロウってそんなのまで呼び出せるのかよ。
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