667 実験開始
コミック版15巻発売!
是非ともよろしくお願いします!
六百六十七
色々とあったが、一先ず拠点は整った。これで憂いなく、目的の実験に精が出せるというものだ。
もしも一人では対処しきれないような事態になったら皆を呼ぶように。そう決めてから解散すると、後は各々自由に動き始めた。
「ん-っと、あっちネ!」
メイリンは待ってましたとばかりに飛び出していった。なお彼女の場合は実験三割、修行七割のようだ。目立つ気配のある方に一直線である。
「小生が一番だにゃ!」
「吾輩こそが一番だワン」
次に飛び出していったのは、団員一号とワントソである。
カグラとフローネを大人しくさせるために召喚したとはいえ、この神々の実験場が未知のエリアである事は事実。そのため調査の方も本格的に進めようというわけだ。なお、そういった役目がなければ、ずっとあの二人に捕まったままになってしまうからという理由もある。
両者は左右に分かれ、どちらがより広く調査出来るか、あっと驚くものを発見出来るかと競い合いながら駆けていった。
「うん、問題なさそうね」
カグラは、とても念入りに下調べから始めていた。
神々の実験場は三神によって隔離封印されていたという、特殊な場所だ。だからこそ妙な制限があったりしないか、特に式神の入れ替えがいつも通りに有効かを重点的に確認していた。
そしてあれこれ調べた結果、問題なしと判断したようだ。拠点にカメ吉を配置したカグラは、足取り軽く外へと向かっていった。
「実験の末に廃棄された成れの果てか……。面白い」
神々の実験場に存在する魔物や魔獣は、これまでに出会ったそれらとはまったく違っている。
魔物を統べる神の因子を解析し、それを利用して魔物や魔獣をあれこれ弄った結果に出来上がってしまったのが、ここにいる存在だ。
それは言い換えれば、神々の技術や力の残滓がそこに刻まれているともいえる。だからこそソウルハウルは、存在そのものに興味を抱いているようだ。
実験ついでに面白い研究材料も拾えそうだと、棺の中の戦士イリーナを死体回収用の装備に換装しながらご機嫌に笑っていた。
「見た事のない素材、見た事のない魔法式、見た事のないマナ反応。うんうん、楽しそう」
フローネは部屋の隅の方で不敵な笑みを浮かべながら、そこに寄せたガラクタを漁っていた。
スペースを確保するため、この部屋にあったものを片っ端から片付けたわけだが、この場所は何といっても神々が利用していた研究所だ。
ここに来た時には既にガラクタとなっていたとはいえ、神々の設備となれば特別な何かが残っているかもしれない。そう考えたからこそ、フローネは真っ先にそれらを研究対象にしたのだろう。
「まあ、いざとなったら管理人に任せればよいか……」
時々ああして好奇心の向くままに、ろくでもない事態を引き起こす事に定評のあるフローネ。かといってああなった状態の彼女を止めるとなったら、それはそれで至極面倒この上ない。
よってミラは深く考える事を放棄し、なるようになるだろうと楽観的に見守るという選択肢を選んだ。最悪、三神にしっかりとこの場ごと封印してもらえば丸く収まるはずだ。
「さて、実験じゃ実験じゃ!」
他の誰かの事なんて気にしてはいられない。そう責任ごと全てを三神に預けたミラは試したいものが山ほどあると、浮かれ気分で実験に向かった。
「話には聞いておったが、実に広大じゃのぅ」
研究所から外に出ると、そこには大自然が広がっていた。神々の実験場とは研究所のみならず、この大自然も含めての実験場なのだ。
三神いわく、この実験場は大雑把に言うと山のような構造になっているそうだ。拠点化した研究所は高い崖の上──つまりは山の頂点にあったため、そこからは周辺が一望出来た。
空は清々しく──というにはほど遠い。ここで行われていた実験の影響か、空は何ともいえない紫色に染まっている。そして植物も自生しているのだが、これもまたどんな影響を受けているのか、毒々しい色合いだ。
総じて浮かぶ感想は、魔界にでも迷い込んでしまったのか、といったもの。どこをどう見ても普通とは違っていた。
「さて、どこら辺がよいかのぅ」
空間ごと封じているという話だが、見た限り端は見えない。しかも山のような構造というが、その傾斜は極めて緩慢。なだらかな斜面が続いている。
いったいどれほど広大な大地を隔離したというのか。見える範囲にあるのは、草原に林、そして岩場などだが、更に遠くにも色々とありそうだ。
「ふむ、あの辺りが丁度よさそうじゃな!」
これだけ広い場所で実験し放題というのだから、ミラのテンションは上がりっぱなしだ。これまで出来なかった全てをやり尽くそうと意気込んでペガサスに跨る。そして目を付けた岩場に向けて一直線だ。
「ふーむ、あれがここの魔物か。見覚えがありそうで、どこか違う感じじゃな」
ペガサスの背から、あちらこちらを観察していたミラは、草原に佇むそれを見つめながら眉根を寄せる。
一見するとカマキリ型の魔物『ガラボグ』に近い。けれど全身がデコボコした甲殻に覆われていたり、鎌が歪な槍のようになっていたりする。亜種といえばいいのか、姿形以外は別物だ。けれど、そういった亜種など見た事のないミラは、だからこそ余計にここの特殊性を理解する。
つまりはあれが神々によって改造された魔物の姿というわけだ。
なかなか業の深い事をしているものだ。そう心の中で感じながらも、ミラの顔には喜色が溢れていた。
「これは素晴らしい実験場じゃな!」
そんな神々の実験に比べれば、これから予定している実験など常識的範疇で些細な事だ。
これならどこまでやっても許される。そう確信したミラは念のために除外しておいた実験も予定に組み込み直し、鼻歌交じりに岩場へと降り立った。
皆もミラと同じように、ここでは予定以上に好き放題出来そうだと考えたのだろう。方々から爆音やら振動やらと色々物騒な音が響いてくる。
「うむ、これはよいぞ!」
そんな中、ミラもまた見上げるほどに巨大な岩を粉々に爆砕していた。
しかし影響はその岩のみならず。岩のあった場所を起点としてミラの正面側から扇状範囲の三十メートルほどまでが悉く抉られている。
目標のみならず周辺への被害も著しいが、それはそれ。ミラにしてみれば実験とはそういうものであり、改善出来るようなら試してみるかくらいの問題だ。
それよりも注目するのはその威力だと興奮気味である。
「しかし、ここまで相性抜群とはのぅ」
まず試したのは、より進化した精霊王の加護を利用した新術。ガーディアンとサンクティアの融合武装召喚、すなわち神聖フレームの誕生だ。
より深く、より強く結びつける事が可能となったため、まずはその効果のほどを確認したわけだが、これが想像以上の相乗効果を発揮した。
一見すると姫騎士感のある姿は相変わらずだが、そこに秘められた力は姫などという可愛らしいものではない。それこそ、神に仕える大将軍さながらだ。
「一本でこれならば、二本でどうなるのじゃろうな」
実験で放ったのは、ミラのお気に入りの技。輝く光剣を右手に宿した、必殺の光剣パンチだ。
しかも以前は制御が難しかったが、研究と実験によって大きく改善。更に今は親和性の増した加護のお陰で、その安定性は更に割り増しだ。
ではいったい、何本まで可能になったのか。気になったら試してみたくなるのが人の性。ミラは早速二本を宿してから、先ほどよりも更に大きな岩の前に立った。
「これで、どうじゃ!」
しっかり拳を引き絞ったミラは、それを全力で解き放った。
するとどうだ。その拳が巨岩に触れた途端に力は解放され、荒れ狂う暴虐の波となって目の前の全てを呑み込んだ。
迸る閃光、吹き荒ぶ嵐、響く爆音、そして空間までも揺らす衝撃。その全てが一体となって、ミラの正面に存在していた何もかもを粉々に砕いていった。
状態としては、一回目と大きく変わらない。けれどその規模は、二倍どころではなかった。
「ふむ、耳がキーンとする以外は抜群じゃな」
前方一帯を地面から何からまで巻き込んで破壊し尽くした必殺の光剣パンチ。その威力といったら、もはや大量破壊兵器のそれにも匹敵するほどだ。人の腕から繰り出されていいようなものではない。
「よし、次は三本でいくとしようか」
召喚体ではなく召喚術士から放たれる一撃としては、これを超える事などまず不可能。誰が何と言おうと、それはもう十分なほどの必殺技だった。
しかしミラの好奇心と実験欲は、これで満足するようなものではなかった。以前ならば怒られる事を考慮し、これで止めていただろう。しかしそういった制限のないここでは、ミラを止められるものなどいないのだ。
「おおぅ……これはなかなか強烈じゃのぅ」
光剣が三本になると、流石の神聖フレームも軋み始めた。右腕部のところどころで光が弾け微細に震える。
宿した後は、あまり悠長にしていられなさそうだ。そう判断したミラは、巨岩よりも近くにあった岩壁に駆け寄っていった。
「この感じ、おじいちゃんね。まーた派手にやっちゃって」
ところどころに木々が立ち並ぶ草原。その只中の焦土と化した場所にカグラはいた。遥か遠くの方から爆音が響いてくる。中でも特に三度目のそれは際立って大きかったため、どんな馬鹿な事をしているのかと苦笑しながらも手は止めないカグラ。
灰になった魔物を見やりながら、一つ二つと式神を回収していく。
まだ実験仕様だが、上々の出来栄えだ。余波の部分には目を瞑り、素晴らしい成果だと気をよくしたカグラは続けて前方にある丘の上に立った。
そこから見えるのは開けた大地と、地の底の見えない大空洞だ。
大きく開いた大地の穴は、その直径だけでも二百メートル以上はありそうだ。もしや地下帝国の入り口かと、ちょっとロマンの感じられる光景であるが、実態は何でもないただの大穴だ。
「やっぱり、あれが丁度いいかな」
既に式神で深くまで調査を終えているカグラは、次の実験はそこがよさそうだと決める。
そして取り出したのは、いつぞやのアーティファクトだ。それに式符を張り付けるわけだが、今回は以前と少し使い方が違う。
【式神招来:七星老花】
『文曲一星、理を示せ。これなるは、仮初の器よ』
式符の結界でアーティファクトを囲んでみれば、その直ぐ上にもう一つのアーティファクトが出現した。
「それじゃあ、試してみましょうか」
カグラが大穴を見据えると、どうした事か。その新たに現れたアーティファクトがふわりと浮かんで飛んでいった。
そして大穴に飛び込んでいったところで、それが起動する。
いつぞやに見た通り、無数の光線がハリネズミの如く周囲に放たれる。一瞬にして大穴の中を、数百にも及ぶ破壊の光で満たしていった。
「いいじゃん。本家に比べると抑え気味だけど、これなら十分実戦投入可能ね」
その様子を遠くから確認していたカグラは、実験成功だと微笑む。
今回カグラが使った《文曲》は、いわばコピーを作り出すというものだ。
そしてそれは、はたしてアーティファクトのような代物でも可能なのかという実験だったわけだが、結果は成功。その威力は本来のそれに届かなかったものの、コピーして使えるというのが判明しただけでも十分だ。
「これでもっと範囲殲滅がやりやすくなるってものよね! いいじゃん、いいじゃん!」
カグラは次から次へとコピーしたアーティファクトを大穴へと放り込んでいく。そして深く暗かったそこが眩く輝く様を、まるで花火でも眺めるように見つめていた。
両側を林に挟まれた荒れ地のど真ん中。林の奥から顔を出しては機会を窺い襲い掛かる魔物達。けれどそれらは全て、武装した一人の女性──もとい一体の死体の手によって悉くが地に伏していった。
「なるほど。神っていうのも、なかなか面白い事をしているものだな」
魔物の死骸を解体しては、その臓腑に至るまで腑分けするソウルハウルは、そこに残された神々の実験の痕跡を見つけては、にまりと笑う。
神々は魔物を統べる神の因子を解析して、どのような情報を得たのか。そしてそれをどのように利用し、どのように改造したのか。
この一体の魔物だけでは、まだまだ断片でしかない。だがそれでも、ソウルハウルにとっては全体像を予想するに十分だった。
「──こっちは、そうか……。──これはなかなか……。──いいぞ、興味深い」
次から次へと魔物を狩り取りながら、その体に残された神々の知識と技術と神秘の一端を収集していく。
「思った以上に宝の山だな。実験もしたいが、調査もしたい。半年は籠っていたい気分だ」
予定は、二週間。だが、何も今回だけしか来る事が出来ないというわけでもない。
今後も皆の予定が合ったタイミングで、ここへの立ち入りが許可されるという約束だ。つまり、周辺環境を気にせず何度も実験と研究を繰り返す事が出来るわけである。
「こっちは、早めに終わらせるか」
研究用の材料を集め終えたら、幾つも予定している実験の方に取り掛かろう。そう、これから二週間の日程を考えながら、一体また一体と魔物を狩っていくソウルハウルだった。
「動きは面白いけど、まだまだネ」
一体、また一体と大型の魔物を仕留めていくメイリンは、けれどどことなく不満そうであった。
神々によって創り出された改造魔獣という事で期待していたわけだが、今のところ、そこまでの驚異ではなかったからだ。
「あっちに行ってみたいけど……きっと皆に怒られるヨ」
物欲しげな表情で奥地を見つめるメイリンは、誘われるように動きそうになる足を、どうにかギリギリのところで抑え込む。
三神の話によれば中央の拠点より遠くにいるものほど、かつての実験の初期段階に造られたものになるという。それは同時に、色々と制御やら制限の緩かった段階の産物になるという意味でもあった。
つまりは、それだけ狂暴で凶悪な改造魔物が揃っているわけである。
「代わりに、向こうに行ってみるネ」
いつものメイリンならば、ちょっと様子見だとか下調べだとか適当な理由をつけて足取り軽く進んでいくところだ。
けれどここで踏み止まれたのは、事前に交わした約束のお陰だった。その約束というのは、勝手に奥に行ったら神々の実験場利用権をはく奪するというもの。
これまでとはまったく違った環境と魔物がいる修行場という事もあり、メイリンは全域を踏破するという目標を掲げていた。ゆえにそれを達成するまでは大人しくしているつもりのようだ。
手応えのある相手がいないのなら試し打ちの相手にすればいいじゃないと、今は実験寄りの戦いに移るメイリンだった。
「むふふふふ。ここを好きにしてもいいなんて、流石神様太っ腹」
空をふよふよ漂いながら周辺環境を確認するフローネは、研究ノートを片手にまずはどれを試してみようかとほくそ笑んでいた。
ノートには本人以外に解読出来ないのではないかというくらいの文字や術式がびっしりと書き込まれている。フローネは、それを指でなぞりながら一つを適当に選び、これまた適当な場所に目を向けて実験術式を起動させた。
「よーい、しょっと」
地面に円形の亀裂が走ると、ぐらりと僅かに浮き上がる。そして直後、中央にも亀裂が浮かんだかと思えば、ばくんと、それはもう食らいつくかのように大地が折りたたまれたではないか。
その後、閉じた大地は粉々に砕けて元々の大地に降り注ぐ。残ったのは円形に大きく抉れた大地に、山と積まれたその残骸、そして圧殺された魔物の死骸だけだ。
「じゃあ、次は……っと」
実験結果を、じっくり確認したフローネは満足そうな笑みを浮かべながら、ノートをぱらりぱらりと捲り、また適当にそれを選んだ。
右手を地面に向けると、数十もの魔法陣が連なって展開されていく。その全てが大きさや術式の違う複雑な代物だ。
するとフローネは次にアイテムボックスから鉄の槍を取り出した。それは一般的な武具屋に置いてあるような、何の変哲もない鉄の槍だった。
「これでよし」
フローネは、その鉄の槍を差し込むようにして魔法陣の中央に置いた。そこから続けて右手にもう一つの魔法陣を展開してから、「そーれ」と気合を入れているようで入れていない声と共に手前の魔法陣をぶん殴る。
するとどうだ。その一撃に呼応するかのように全ての魔法陣が輝き出した、その刹那。置いてあった鉄の槍が全ての音を置き去りにして射出されていく。
直後、穂先が向けられていた地面は大粉塵に包まれる。それから少し遅れて爆音と強烈な衝撃波が吹き抜けていき、フローネは「あーれー」と宙をくるくる舞った。
「うん、悪くない」
鉄の槍が撃ち込まれた地面には、それこそクレーターのような穴が出来上がっていた。
それは、実に単純な術だ。物体を極限まで加速して超音速で撃ち出すという代物だ。ゆえに術でありながら、究極の物理攻撃でもあるわけだ。
魔物を統べる神に有効なのは、術か物理か。そのどちらにも対応するため、フローネもまた研究を進めていたのである。
「でも照準がちょっとずれた。それにもっと加速出来そう」
十分過ぎる成果といえるが、けれどフローネはまだ満足してはいないようだ。改良の余地があると知った彼女は、それでいて嬉しそうに笑っていた。
先日、コース料理チートデイを開催しました!!
いつものネットスーパーでバッチリ揃えました!
まずは、きんぴらごぼう!
次に、厚焼き玉子
そして、ミニオムレツ
続いて、コーンクリームコロッケ、れんこんひき肉はさみ揚げ、お肉で巻いたチーズ、うずら卵を包んだ肉だんご
ご飯ものは、手巻き寿司ねぎとろ、サーモン!!
最後にデザートは、牛乳と卵の手巻きロール生チョコ
……のはずだったのに品切れでこれだけ届かず!!!!
コース料理チートデイ、最後の最後で失敗!!




