665 実験準備
今月末、27日にコミック版15巻が発売となります。
是非とも、よろしくお願いします!!
六百六十五
カグラが《意識同調》で何かを始めてからほんの数分後だ。ミラの部屋にはソウルハウルとメイリン、そしてフローネの姿があった。
どうやらカグラは、素晴らしい実験場があると皆に声を掛けて回っていたようだ。
これから挑む事になる相手が相手だ。だからこそ特に強力な術の研究開発のため、皆が躍起になっていた。そこに降って湧いたのが制限なしの実験場である。それはもう、疾風の如く駆け付けてきた次第だ。
なお、ルミナリアとアルテシアにラストラーダ、ヴァレンティンら国防チームは、これから決戦のための大事な戦略会議があるため今回は不参加となった。
ただ、全員が実験したいあれやこれを抱えているようだ。当然、一回では終わらないだろう、終わらせるはずがないだろうと切に希望していたという。
ゆえに今日みたいに突発ではなく次はしっかり計画を立てさせてほしい、というのが不参加組四人のミラに向けた切実な願いと要望と文句だった。
「──というわけでのぅ。これからその実験場を利用させてもらおうと思っていたわけじゃよ」
その場で改めて、神々の実験場について説明したミラ。その内容には危険性も多大にあると含めていたが、これだけのメンバーが揃えば大した障害にもならなかった。
「なるほど、面白い。これまでにない死体もありそうだな」
「改造で強くなったカ。楽しみヨ!」
「いい。国がどうこうを気にしなくていいのが凄くいい」
ソウルハウルとメイリン、そしてフローネの反応はすこぶる良好。これ以上にないくらいの実験場だと大いに盛り上がり、絶対に同行するという意思をみせる。
「ほら、これならどうにかなりそうでしょ?」
危険な魔獣が現れようとも、このメンバーなら対応出来るだろうと自信満々なカグラ。しかも、それが出来るようにしっかり鍛えて決戦に備えるくらいの覚悟が必要ではないかと、更に訴えかけてくる。
「ふーむ、そうじゃな。そこまで言うのなら、まあいいじゃろう」
実際のところ、このメンバーならば戦力は十分。更に実験のみならず決戦での連係などといった訓練にもなりそうだと考えたミラは、皆の同行を承諾するのだった。
「これはまた、たっぷりじゃのぅ!」
皆で神々の実験場行きが決まった後、各々が準備のため塔に戻っていった。
ミラもまたあれやこれやと出かけるための荷物をまとめていたところだ。話の流れから察したのだろう、マリアナが沢山のお弁当を用意してくれた。
実験とはいえ、場所が場所だ。そして長丁場にもなると予想してか、更に次から次へと料理を完成させては詰め込んでいってくれる。
「もう今から腹が減ってきおったぞ」
次々と積まれては、一つ一つ大切にアイテムボックスへと収納していくミラ。ただミラの好みを熟知するマリアナの料理は、その全てが絶品で、だからこその魅惑に満ちている。
ミラは手を動かしながらも、その誘惑に引き寄せられてごくりと喉を鳴らす。
するとその直後だ。マリアナは、そんなミラの腹具合まで察していたようだ。すっと、目の前にタルタル唐揚げドッグが差し出された。
「おお! これじゃこれじゃ!」
その誘惑は耐える必要のない誘惑だ。よってミラは、すぐにそれを手に取り大口を開けて頬張った。
するとどうだ。じゅわりと口に広がる肉汁と濃厚なタルタルソースが交ざり合い、背徳の極致へと誘ってくれる。それでいて瑞々しさの溢れる野菜が罪悪感の全てを包み込んでいった。
その絶品な美味しさに幾度となく悶絶しながら、ミラはあっという間にタルタル唐揚げドッグを平らげた。
「美味しそうな匂いでいっぱいなんだけど、って、すご!」
そうしていたところだ。いち早く準備を終えたカグラが部屋に戻ってきた。そして匂いに誘われるようにしてキッチンにひょっこり顔を覗かせ、そこに並ぶ料理の数々を前に目を輝かせる。
「出発の前に、如何ですか?」
マリアナが幾つかの料理をテーブルの方に並べていく。色々と食いしん坊なミラのためもあってか、マリアナの料理のレパートリーは驚くほどに豊富だ。そこには和食も含め多くの国の特色豊かな料理がずらりと揃っていた。
「やった! いただきます!」
そのテーブルを前にしたカグラに、遠慮などという言葉は存在しなかった。一も二もなく着席すると、これでもかと目移りしながらも最初に味噌汁を手に取った。
「はふ……」
マリアナがミラのためにと学んだ和食の腕は、既におふくろの味にまで到達していた。その懐かしくも愛おしい郷愁に満ちた味わいは、だからこそ和を知る者の心を穏やかにする。
カグラもまた、それを存分に感じたようだ。一口一口を懐かしむように堪能し、穏やかな吐息を漏らす。
「どうじゃ、美味いじゃろう!」
「なんでそんなに自慢げなのよ」
マリアナの料理は絶品だろうとミラが胸を張れば、穏やかな空気から一転してカグラは呆れたように溜息を漏らす。
「わしの好みを完全再現してもらった味じゃからな。これに勝るものなど存在せんわけじゃよ」
その味噌汁が完成するのを手伝ったのだと得意げに語るミラは、更にマリアナ補正でナンバーワンだと言い切った。
味噌汁ならば、むしろ日之本委員会の研究所でも作られている。それどころか味噌などの素材から作るという拘りに拘った極上の一杯がそこにはあった。
それも知っているミラは、けれどそれを一番とは思っていなかった。
いうなれば、日之本委員会のそれは高級料亭の味噌汁といった趣のあるものだからだ。美味しいのは確かだが、やはり心に響くのは家庭の味なのだ。
「まあ確かに、すっごく好きだけど」
味噌汁から肉じゃがにご飯、更に味噌汁と続き、きんぴらごぼう。
カグラもまた、和食の好みは家庭寄りだったようだ。テーブルに用意された和食を口にしては、穏やかで幸せそうな微笑みを浮かべる。
そしてあっという間に味噌汁がなくなり、その目でおかわりを欲すると、直ぐにマリアナが気付き「どうぞ、カグラ様」と二杯目を運んできた。
「私、マリアナさんの子になる」
最終的には完全に胃袋を掴まれて篭絡してしまったようだ。傍に寄ったマリアナに母の幻覚でも見たのか、そのまま抱き着くとそんな事を言い出した。
「ええ、っと?」
流石のマリアナも、これには困惑気味だ。子供のように抱き着いてくるカグラをどうする事も出来ず、どうすればといった顔でミラを見やった。
「馬鹿な事を言うでない。そんな事になったら、お主がわしの子にもなってしまうじゃろうが。いきなりこんなでっかい子供なんぞ願い下げじゃ」
マリアナは、わしの嫁。それが当然といった顔で主張するミラは、他所を当たれとカグラをマリアナから容赦なく引き剥がす。
「……まあ、それは確かにこっちも願い下げね」
ミラをじっと見据えたカグラは、そうなってしまうのなら仕方がないと苦笑した。マリアナだけならともかく、ミラが父になるのはあり得ないと。
「あの……えっと……」
ミラとカグラがギラギラと睨み合っていた時、そんな話の渦中にあったマリアナは、そこで繰り広げられるやり取りに戸惑いつつも嬉しそうに照れていた。何といっても、二人のやり取りが、ミラとマリアナが夫婦といった形で進んでいたからだ。
罵り合う二人に挟まれつつも、どこか幸せそうなマリアナであった。
神々の実験場に行くための準備が完了し皆が戻ってきたところで、ミラ達は召喚術の塔の屋上に来ていた。
その中央には草花で作られた精霊王の依代があり、ミラ達はそれを中心に円を描くように並ぶ。
「では出発となるわけじゃが、もう一度言うておくぞ。比較的安全な場所から入るが、中がどうなっているのか漠然としかわからんみたいじゃからな。入って直ぐに接敵するかもしれんので油断するでないぞ?」
目的地である神々の実験場は、封鎖されてから今まで内部を調査したものは誰もいないそうだ。ゆえに状態は、三神が外部から幾度か観測しただけだという。
わかっているのは内部環境の他、魔物や魔獣の危険度や、その分布に施設の稼働状態くらいである。
今回は、その中で最も危険度の低い場所から入る事となっている。いわく、ミラ達の実力ならば問題はないとの事だが、癖の強い場所であるため油断は禁物との事だ。
「もちろん大丈夫よ」
何も問題はないと答えるのはカグラだ。実際、いつでも式神を展開可能な状態で待機中である。不意打ちだろうと対応出来る臨戦態勢だった。
「いつでも問題ないネ!」
「というわけで俺もいいぞ」
どこか気楽そうに見えながらも常在戦場といった構えをみせるメイリンからは、その言葉通りの気迫が窺えた。対してソウルハウルはというと、こちらはむしろ正反対だ。メイリンの傍にぴたりと張り付き、いざという時は彼女に任せてしまおうという思惑がありありと浮かんでいた。
とはいえ初動において死霊術士は一歩遅れる部分があるため、それも仕方がないといえる。そしてメイリンの傍というのは、この場合における最適解だ。
「わかってまーす」
最もわかっていなさそうに答えるのはフローネだ。けれどその脱力具合が彼女にとっては丁度よかったりするのだから、その人となりを知らない者にとっては判断に困る部分だったりする。
「よし、では始めるとするか」
ちなみに本当にわかっていなかった場合は返事がないという、実にわかりやすい判断基準があった。よって今回はわかっていそうだと判断したミラは、準備完了だと精霊王に伝えた。
それを受けて精霊王の依代が高く跳び上がった。そして次には淡く輝き始める。
その光は、目標地点を定めるマーカーのようなものだ。僅かな間を置いてから、天より一筋の光が差し込んだ。三神による導きの光であり、神々の実験場へと続く門を開く光でもあった。
「さて、鬼が出るか蛇が出るかじゃな」
自身も武装召喚に身を包み神経を尖らせて到着に備える。周囲の景色がゆっくりと歪んでいったところで光に包まれ、誰の姿も目に映らなくなった。
今は転移しているのか、それとも光になって飛ばされているのか。はたまたどこかへ落ちているのか。三神の導きによる移動だが黄金都市の時とはまた違った不思議な感覚だ。
ただ、それも束の間。光が収まり始めると共に周囲の歪みも落ち着けば、既にそこが塔の屋上ではないとわかる。
「であいがしらに、っていうパターンは避けられたみたいね」
白い──というよりは薄汚れた灰色の壁と天井に囲まれた部屋を見回しながら、カグラが安心したようにぽそりと呟く。
「結構遠くに幾つも気配があるヨ。近くは、あっちとそっちくらいネ」
瞬時に周辺の生体反応を調べたメイリンは、あちらこちらを指さしながら、その結果を口にする。
即座に接敵とはならなかったが、少し近くに数体ほどいる程度らしい。三神の狙い通り、比較的安全な場所に到着出来たという事だ。
「死霊の類については、どこにもいないな」
更にソウルハウルも危険はなさそうだと続けた。メイリンの《生体感知》では捉えきれない死霊系の魔物だが、死霊術士のソウルハウルがいれば感知可能なのだ。
「ふむ、それでは予定通りに陣の構築から始めるとしようか」
何をしても誰にも文句を言われない場所にやってきた。だからこそ直ぐにでも実験実験また実験といきたいところだが、ミラはそこをぐっと抑えた。
到着して即戦闘にならなかったのは、運がよかっただけ。神々の実験場は、どこも安全とは言い切れない場所なのだ。
ゆえに落ち着いて情報をまとめ研究も出来るような安全地帯の確保もこれからの実験には必要だ。そしてそのための拠点としては、三神が比較的安全だと言っていたこの場所こそが相応しい。
しかもおあつらえ向きに、幾らか手を加えればどうにかなりそうである。よってミラはさあ始めようと声を上げ、まず活動拠点の確保だと動き出した。
さて、
ほんの二日前、14日が何の日だったのかご存じでしょうか。
まあ、色々な店で特別感のあるチョコが売られていたので察する機会も多かったでしょう。
そう、バレンタインデーです!!
フフフフフフフフフ。自分がこんな事を言い出し始めた意味に、そろそろ気づく方もいるでしょう。
はい、その通り!!!!
チョコ、いただきました!!!
オシャレな箱入りで三段になっているやつです。凄い!
1個ずつじっくり食べています。
素敵なチョコをありがとうございました!!!!
ひゃっほーーーーう!!!!




