第二部 第一話『境界の外側』
朝。
空は同じ色をしているのに、どこか薄い。
まるで“現実が一枚めくれた”ような感覚が、三人の間に残っていた。
茜音の違和感
「……ねえ、これってさ」
茜音はスマホの画面を見ていた。
ニュースでも噂でもない。でも、どこにも“昨日の戦いの痕跡”がない。
「この街、昨日のこと……なかったことになってない?」
冗談のように言うけれど、声は笑っていない。
月斗の結論
「消されてる」
月斗は即答した。
迷いはない。
「記録も記憶も“調整”されてる」
(虚無機構は、世界の認識に干渉できるレベルにいる)
氷雨の沈黙
氷雨は何も言わない。
ただ、手を見ている。
あの夜、確かに使った力。
(私は……本当に戦ったの?)
記憶が薄いわけじゃない。
“現実だけが薄い”。
新しい異常
その時だった。
空気が一瞬だけ“途切れる”。
街の景色の一部が、ノイズのように揺れる。
通行人の一人が立ち止まる。
「……今の、誰?」
隣にいたはずの人間を認識できていない。
月斗の警戒
「来てるな」
月斗は空を見る。
正確には“空の裏側”を見るように。
「ここはもう安全じゃない」
虚無機構・観測層の変化
どこか。
白い空間。
記録装置のようなものの前で、無機質な声が響く。
「対象群、境界外干渉域へ移行」
「観測階層、第二層へ更新」
茜音の決意
「じゃあさ」
茜音は立ち上がる。
「もうここにいられないってこと?」
少しだけ笑う。
でも、その笑いは軽くない。
「なら、行こうよ」
氷雨の迷い
氷雨は反応できない。
(外に出るってことは)
(もっと壊れるってことじゃないの?)
月斗の提案
「選択肢はない」
月斗は淡々と言う。
「ここにいても、いずれ“消される側”になる」
最初の境界崩壊
その瞬間。
地面が一瞬だけ歪む。
街の端が“見えなくなる”。
そこにあったはずの建物が、認識から抜け落ちる。
追跡者
影。
虚無機構の小隊ではない。
もっと上位の“観測者”。
彼らはただ立っている。
そして言う。
「境界外移行確認」
決断
月斗が言う。
「もう戻れない」
茜音が言う。
「もともと戻る気ないよ」
氷雨は少しだけ下を向く。
(それでも……一緒なら)
旅立ち
三人は歩き出す。
街の“外側”へ。
その一歩は軽いのに、世界が重くなる。
最後の記録
どこかで、静かに書かれる。
「対象群:移動開始」「観測対象:外部領域へ進入」「第2フェーズ移行」




